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J1第18節 清水エスパルス対川崎フロンターレ データレビュー

約1ヶ月半ぶりのリーグ戦となったフロンターレ。スタメンには王様こと大島僚太が復帰し、宮城天がリーグ戦初スタメン。長谷川がアクシデントらしいので心配なところ。プレビューでも取り上げたように特に前半は清水がフロンターレにボール持たせていた。”持たせていた”という表現が適切かわからないが試合後のロティーナ監督は試合内容は良かったとコメントしているので清水としては持たせていた意識かもしれない。それでもフロンターレとしては持たされていた感覚はおそらくないが。フロンターレの1試合平均ボールロスト数は146.5だが今節は104という低い数字で清水はドリブルが18回クロスが21回と縦に速く攻めてクロスというプレビューどうりの数字に。

以下文中にでてくる独自の言葉です。詳しくはリンクをクリックしてください。

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EPP 独自に計算した効果的にパスを繋げたかを示す指標で相手守備ブロックの中にパスを送れると高くなる。
PPS パス/シュートの値でシュート1本に対して平均的に何本のパスを繋いだかを示す。
パスヒートマップ 上図の各エリアにパスが入った回数を示しており、パスの本数が多いほど濃い色になる。

1.スタメン

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2.前半~清水の右サイドを攻略するキング大島のポジショニング~

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前半のボール支配率はフロンターレの63%とフロンターレが攻撃する時間が続く。EPPもフロンターレの45分平均が47.75だが前半は58.1と普段以上に効果的にボールを回せていたことがわかる。その原因は左サイドで左ファジーゾーンがへのパスが16本、左バイタルハーフへのパスが10本とどちらも45分平均を上回っている。なぜ左サイドが上手くいっていたのかはのちほど。その一方でPPSは平均40.5に対して61.3とボールを効果的に持てていたがシュートを打つシーンが少なかったとわかる。また、前半のシュート数は6本だがPA外シュートが4本とエリア内でシュートを打つことが少なかった。これがプレビューでも取り上げた清水の守備。ボールを持たれるのはかまわないがエリア内ではシュートを打たせない。
一方の清水の攻撃はサイドに多いのがわかる。左右のファジーゾーンに最も多くのパスが入っている。PPSを見ると34とかなり低い数字に。これもプレビューで取り上げたが少ないパスでシュートを打つという縦に速い攻撃を仕掛けていた。

・清水右サイドの守備

清水の守備は442でミドルサードからプレスをかけてくる。しっかりとフロンターレの攻撃の起点であるシミッチに2トップのサンタナと鈴木が閉めてパスを通させないようにする。逆に言えばシミッチが2トップの後ろであるフロントエリアに立ち続けることで清水の2トップを中央にピン留めすることができる。これを利用して谷口とジェジエウが開いてビルドアップをする。それに対してサンタナか鈴木がシミッチへのパスコースを切りながらプレスをかける場合もある。しかし清水の右サイドでは片山がかなり高い位置をとってプレスをかけていた。

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これは9分40秒のシーン。フロンターレの右サイドにボールがある場合普通の442守備では片山はスライドしているはず。しかし前半の片山はスライドせず高い位置をとって谷口にプレスをかけられるようにしていた。これはおそらく2トップがシミッチを警戒してCBにプレスをかけるのが遅れるから。しかしこの守備をすると片山の後ろに広大なスペース(赤い四角形)ができる。このスペースを上手く利用していたのがキング大島だ。この直後もジェジエウ→谷口→大島へとパスが渡った。これがパスヒートマップで左バイタルハーフにパスが多く入っていた原因。大島が巧いのは自分がこのスペースでボールを受けるだけでなく、憲剛が良く言う自分のポジショニングで味方へのパスコースを創る動きもできる。

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これは7分15秒のシーン。シミッチがボールをもらうためにCB間に落ちてダウンスリーを形成。するとフロントエリアに人がいなくなり2トップをピン留めできないため脇坂がこのスペースでボールを受けた。その後大島は2トップの脇(緑の円)でボールを受ける。こうすると相手ボランチの宮本を縦につり出すことができる。ただでさえ片山が前にいる上に宮本もつり出すことで左バイタルハーフにはさらにスペースができる。そこにシミッチから宮城へ縦パスが入った。これも大島が宮本をつり出すことで宮城へのパスコースができた。ただ忘れていけないのはシミッチがCBに落ちたら脇坂が変わりにフロントエリアでパスを受け、大島が低い位置に降りると宮城が内側のバイタルハーフにポジションを移した一連の動き。しっかりとチームで5レーン理論が定着し、フロントエリアの重要性も理解しプレーできている。

・清水のフロンターレ対策

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これは19分40秒の清水ゴールキックのシーン。清水の選手が迷い無くプレーしていたためこれはおそらく準備していた川崎対策。フロンターレのハイプレスはWGがSBからCBへのパスコースを切りながらプレスをかける。すると清水のSBはフリーになる。これを清水は利用してきた。ボールの動きとしては権田→井林→権田→原。井林へのパスで宮城をつり出し原をフリーにして権田から浮き球で原へパス。これに対して大島のプレッシャーが速かったため原はボールロストしたがかなり対策されていると感じたシーンだった。ゴールキック以外でもビルドアップでSBを狙うことが多かった。それでフロンターレIHの大島や脇坂をつり出し、空いた中盤で鈴木やサンタナが受けてサイド特に右サイドの原(実際に右ファジーゾーンへのパスは8本で最多)に展開からクロスが多かった。

3.後半~清水守備の変更とビルドアップ~

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前半63%だったボール支配率も54%に下がり清水がボールを握る時間が長くなった。そのためEPPは上昇し41.8にPPSは61になった。ボールを持つ時間が長くなりパスも増えたが崩してシュートまでいけずPPSが増加した。清水の最も多いパスは裏へのパスで9本。フロンターレのインテンシティが落ちスペースが生まれ裏へのパスが増えた。
対するフロンターレはボール保持時間が短くなりEPPが45.5に減少した。注目なのは右バイタルハーフ。前半は左バイタルハーフに最も多くのパスが入ったが後半は右サイドになり右バイタルハーフに11本右ファジーゾーンに9本のパスが入った。その原因はのちほど。

・清水守備の変更

前半清水右SHの片山が高い位置で守備をしていたが後半になるとそれがなくなり、代わりに清水の左ボランチが前に出てくることが多くなった。

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これは60分5秒のシーン。2トップの清水に対してシミッチがダウンスリーを作り3バックでビルドアップ。すると2トップの脇で谷口とジェジエウがボールを持てるようになる。それに対応して清水は左ボランチの竹内が前に出て行く。すると後ろの右バイタルハーフ(赤い四角形)が広がる。ここで家長や脇坂がボールを受けることが多かった。このシーンではシミッチが浮き球で家長にパスを出した。63分15秒にも人は違うが同じようなシーンがあった。この清水守備の変更によってフロンターレは右バイタルハーフへのパスが増え11本になった。こうして65分過ぎくらいまではフロンターレのペースだったがそれ以降清水のボール保持が続く。

・清水のビルドアップ

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これは70分20秒のシーン。清水が自陣からポゼッションするがやはりフロンターレWGの裏のSBを使ってくる。フロンターレも疲れてきて前からのプレスがかけられなくなり、SBに出されたときの中盤3枚のスライドが緩くなる。その結果緑の円のようにいくつかスペースを与えてしまう。それでも途中出場の遠野や橘田はプレスにいくためよりスペースを与えてしまう。これを清水はおそらく狙っておりCBがWGをつり出しSBにボールを出す、そこでIHをつり出し空いたスペースを狙うことが多かった。そして空いた中盤3枚の隙間に縦パスを入れていく。このシーンではサンタナにパスが入った。そのサンタナは逆サイドのSB片山に展開し片山がクロスをあげた。似たようなサンタナから片山というシーンが81分50秒にもあった。

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この73分20秒も同じようなシーン。遠野をつり出しSB原へボールが渡る。橘田をつりだし空いたスペースで鈴木とワンツー。原はそのまま広大なスペースがある左サイドにドリブル。そして片山へと渡った。これもフロンターレハイプレスの弱点であるWG裏のSBを使われたシーン。前半にも書いたが清水はこれを徹底していた。さらに片山がオーバーラップしてくる際に滝がしっかりと左バイタルハーフにいることで山根が片山に出て行くのを躊躇させる5レーン理論もできていた。

4.まとめ

前半はプレビューで書いたようなフロンターレがボールを持つ時間が長く、清水は少ないチャンスを縦に速い攻撃で突破していた。後半の途中までもフロンターレペースで、大島の左バイタルハーフに現れる動きは完璧だった。しかし清水は攻撃でフロンターレ対策をしっかりとってきてWG裏を使ってIHをつり出し空いた中盤を使ってスペースのある逆サイドに展開しクロス。プレビューでも取り上げたようにフロンターレはクロスから最も多く失点いている。清水の対策は完璧だったと思うがそれでもゴール前で体を投げ出すフロンターレの守備に勝負強さを感じた。また、クロスやセットプレーが多くなるため車屋と山村を入れた鬼木監督の采配も良かった。マリノスが追走してくる中で勝利していきたい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

5.データ引用元


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