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使り手冥利のおかげ~with 巾着ライフ

趣味で、巾着を作って販売しています。

巾着作り、実は私自身が能動的に始めたものではありませんでした。
とあるニーズの合致で生まれた活動が十五年以上続くものになるなんて、不思議なものです。

若い頃から、アニメやゲームのキャラクターのコスプレをするのが好きでした。市販の洋服で再現できないものは、布地を買って作る自作派です。

ただ、衣装を作るたびに少しずつ、ハギレが溜まっていきます。
そして使うあてがないのに買ってしまった可愛い布地なんかも、次第に手元に増えていくわけです。

手芸店に行く方なら分かるんじゃなかろうか、店内のそこかしこにあるキラキラで可愛い柄や素材の材料のこと。あれも可愛い! これもキレイ!! ってテンションが上がって、「持ってるだけで幸せになれるんだから買ってもいいよね!!」って、主目的以外の材料を買ってきてしまうルーティンの罪深さ。

「布地は捨てちゃえば片付くけど、それはもったいなさすぎるじゃんね。どうにかできないかな」
「じゃあさ、その布地使って小物入れ作ってくれない? 仕事場で使いたいんだけど、ちょうどいいのがないんだよ」

と、友人に頼まれたのが巾着販売人・沢村誕生のきっかけだったのです。
友人いわく、仕事場での書類確認に使うハンコと、休憩時間にたしなむ煙草とライターを一緒に入れられる小物入れが欲しかったそう。


最初はポーチを考えましたが、私は当時ファスナー縫い付けをほとんど経験しておらず、上手く作れる自信がありませんでした。
巾着なら比較的簡単に作れそうだと思い至り、友人も「巾着でいいよ」と言ってくれたので制作開始。

そんなに重いものを入れるわけじゃないけど、裏地をつけよう。……縫製がちょっときれいでない部分もこれで隠せるし。
手元にフェルトやフリースも余ってる、じゃあこれを巾着の底に縫い付けよう。耐久性が上がるだろうだから、何回も出し入れしても使えるはず。
そうこうして出来上がった巾着を友人に送ると「ちょうどいい! すごい使いやすい!」と、絶賛の声をもらえたのでした。

「君からもらった巾着、おかんが見つけて『何これ! いいな、私も欲しい!』って言いだしたんよー」
「わはははは! 分かりました、次回から二つ納品いたします」
と、友人宅で沢村作の巾着がもてはやされるように。落ち着いた柄で作ったものは友人のお父さんにも気に入られたそうで、いまや三人で使ってくれてるとか。
なんともはや、ありがたいものです。

そして、互いに即売会イベントに出る機会に件の友人と会った時。
彼女が持っていた巾着が、ものの見事にボロボロになるまで使い古されていたのを見て、涙が出そうになりました。

底部分には小さく穴が開いて、中に入れたフリースが見えていて。
きっと毎日、仕事場や家で巾着を使ってくれたことをこんなに雄弁に語られて、嬉しくないわけがないじゃないですか、ねえ。

百均や雑貨屋など、巾着を入手できる機会は増えたはず。その中から私の手掛けたものが愛用されている。こんなに嬉しいことあるんだなあ、と痛感した日でした。

ボロボロやんけ!! 早よ言ってくだされ、次の作るから!!!」
と、イベントから帰宅してすぐに新しい巾着をプレゼント。
実際のところ、友人に巾着作って差し上げるペース以上に、気に入って買ってくる布地が多いんで減るどころか増えてるんですけどね。
まあそんなもんだよね。

そんなこんなで、何かちょっと入れるものとしてお使い下さいと、親しくなった友人達に巾着を作ってプレゼントするサイクルが定着しました。
おかげさまで「御朱印帳を二冊入れるのにちょうどいいサイズで!」とか「ニンテンドー3DSとタッチペンがちょうど入る!」(クッション性を考えて全体にフリースを入れて作った)等の声をいただき、感謝感謝。

私のミシン作業を見ていた旦那からも「会社に弁当持って行くバッグ作ってもらえないかな。できれば、スーパーの弁当が入るサイズのがいい」と頼まれるまでに。
巾着をベースにタテヨコ二十センチ以上の大き目サイズにし、手提げをつけて仕立てた弁当バッグも、日々旦那に愛用されています。

必要は発明の母、とはよくいったものです。もし巾着が欲しいと提案されることがなかったら、ここまで私の心は豊かにならなかったでしょう。
巾着を手にしてくれた人達が、時折沢村の事を思い返してくれれば、それもまた嬉しいこと。これからも、楽しんで作っていけそうです。

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