春見 周 🌂

エッセイ書いたり、小説もたまに書いたり。 思ったこと、感じたことをツラツラと書く日々。

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喫茶店に向かう女の子の頭の中

マンションの間から、西に傾いた陽が差し込んでいた。 細くて柔らかな西日が私だけを照らす。少し眩しくて目を細めると、フレアが目の前に広がった。 信号が青になり、横断歩道を渡る。学校帰りの小学生が右手を上げながら歩いている。少し遠くから、ジャケットを腕にかけたサラリーマンが小走りでやってくる。どうやら、信号が青のうちに渡れたらしい。 信号を渡り終えた私は右に曲がりながら、コンビニで買ったおにぎりを開けようとする。 最近のコンビニのおにぎりはさらに開けにくくなったなと思いつつ

    • 引越業者「雪を連れてきちゃいました」

      幼少期に描いたよくわからない絵や小学生のときに毎日書かされていた日記とか、その時にしか表現できなかったものたちを捨てた。自分のこれまでの歩み、過程を表す大事なものたちだった。 綺麗に折り畳まれたダンボールを雑に開いては、ものを放り込んでガムテープで止めた。部屋中がガムテープの独特な匂いで満ちてなんだか気持ち悪かったのを覚えている。 急に決まった引っ越しに驚き、怒り、そして全てを飲み込んで、文句ひとつも言わずに部屋の全てのものを取捨選択した。外出する際の洋服選びですら

      • [エッセイ13日目]原田マハのドロップキック

        すごい画家を見つけたんですよ。独特なタッチで視線を奪い、彼の特有の色使いで引き込ませ、どこか懐かしさを感じさせる幻想世界がすごくいいなあって思って。みんな、知ってるかな。 ゴッホ って言うんですけど。 まあそんな全世界でも激ヤバ知名度を誇るつよつよ画家のゴッホ先輩の絵をモチーフにしたノートやメモ帳などの文房具がうちのお店に満を持して入荷したんですよ。そりゃあ、さすがのゴッホパイセン。入荷日初日で補充しないと売り場がすっからかんになるくらいのとんでもない売れ行き。 そんな

        • [エッセイ12日目]ディズニープリンセスな僕

          自転車を乗ってると自然に鼻歌しちゃってて、はたからみれば、「あれ?ディズニーの世界から抜け出しちゃったプリンセスかな?」 なんて思われがちな僕です。こんばんは。 とにかく自転車を漕ぐのが好きで、まあどれくらい好きかというと、母のお腹にいるときに既に足がペダルを漕ぐ動きしてたらしいですよ。母も「お腹を蹴ってる。うふふ」なんてことは言わずに、「今日もペダル漕いでるわ」と思っていたに違いありませんね。 サイクリングするときに必ずと言っていいほど、鼻歌をしちゃうんですよね。なんか

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        喫茶店に向かう女の子の頭の中

          [エッセイ11日目]無知と無垢の違い

          甥っ子がまだ2歳くらいのときのことなんですけど、家族で夕食を囲んでテレビを見ていたら、歴史の特集番組が始まって、日本史の教科書に出てくるような自社仏閣が紹介され...うわぁぁ、なんだ自社仏閣って。予測変換がポンコツすぎる。 「お世話になっております。弊社の薬師如来と阿弥陀如来の納品日のお知らせいたします...」 そうそう、日本史の教科書に載ってそうな寺社仏閣が次々に紹介されていく番組だったんですけど、うちの家族たちはテレビを見ては朗らかに感想を言う人たちなので、「行ってみた

          [エッセイ11日目]無知と無垢の違い

          [エッセイ10日目]TikTokに夢中になる磯野フネ

          ここ数年、目まぐるしい速さでアップデートが行われているなあって思ってて、それは働き方や価値観など、まあ例を挙げれば枚挙にいとまがないんですけれど。 そのなかでも、容姿いじりは過去に比べてめっきり減りましたよね。容姿いじりの代表格の"ブス"って言葉もほんとに見なくなって、死語への道を一歩一歩進んで行ってもらいたいものですね。その死語ロードの先で"チョメチョメ"とか"ナウい"が手を振って待っているとこですよ。 「おーい、こっちでやんす〜。ケツカッチンだから急ぐでがーす」 そうそ

          [エッセイ10日目]TikTokに夢中になる磯野フネ

          [小説]跳ねる前髪と心臓と

          待ち合わせの時間まで、まだ15分あった。髪も巻いてきたし、姉からこっそり借りた高級そうな化粧道具を使っていつもよりも着飾ってみた。 それでも、待ち合わせの時間より早く来てしまったのはいつものアレを見たいからだった。 駅を出て待ち合わせ場所の反対方向にぽつぽつと歩いていくと、跳ねた前髪を一生懸命になおそうとしている君がいた。ファストフード店の窓ガラスと睨めっこしては、前髪を抑えるのを繰り返す君を遠目から見て愛おしくなった。 実はね、そのぴょこんと跳ねる前髪も好きなんだよ。

          [小説]跳ねる前髪と心臓と

          [エッセイ9日目]た、高く評価してやったんだからね!!

          「あの歌手いいよねー!わかるわかるー!新曲聴いたー?」 なんてきゃぴきゃぴなトークができているのは、夜な夜な布団にくるまって"YouTube Music"という超最先端アプリにお世話になっているからなんですよね。 すごいですよね。月額いくらか払えば曲が聴き放題なんて便利な世の中になりましたよね。こういうのなんて言うんでしたっけ、サンスクリットでしたっけ。えっと、ほらサブ...サブなんとかかんたら。 こういうサービスが無かった昭和初期の頃は、ブラウン管テレビから流れてくる音

          [エッセイ9日目]た、高く評価してやったんだからね!!

          [エッセイ8日目]カラオケでUh〜Yeahを歌っても気にしない人と結婚しなさい

          「カラオケでUh〜とかYeah〜まで歌う人ってどう思います〜?カラオケなのにちょっと熱量やばくないですか〜?ギャハハ〜」 なんてことを言われてしまうかもしれないので、友人とカラオケにいくときはみんなどうするんだろうと警戒しながらデンモクで曲が見つからないフリをしています。BUMP OF CHICKENさんの天体観測なんかはサビの終わりに、Oh Yeah Ah〜といわゆる"フェイク"の鬼盛りセットな曲で有名ですよね。いまでもカラオケで幅広い年齢の層に歌われる人気の歌なので、十

          [エッセイ8日目]カラオケでUh〜Yeahを歌っても気にしない人と結婚しなさい

          [エッセイ7日目]ネットサーフィンの息苦しさ

          平成中期あたりからネットで調べ物をすると、まとめサイトが上位にぶわっと並ぶようになりましたよね。そんなサイトたちの情報の信憑性はいかがなものなのかと思っているので、極力は見ないようにはしているんですけど、ちょっとまあ興味本位で覗いてみるとどこもかしこも同じようなフレーズの使い回しでびっくりですよね。 「〜におすすめ3選!」 「徹底解説!」 「〇〇さんのこれからの活躍に期待しています!」などなど。 もう全人類が目にタコができるくらいみたであろう擦りに擦られたフレーズですよね

          [エッセイ7日目]ネットサーフィンの息苦しさ

          [エッセイ6日目]スキンヘッドはじゃんけんでグーの立ち位置

          アイドルの顔を覚えられなくなったり、テレビから聞こえてきたミスチルの歌に「Mr.シャチホコがモノマネしてる」と勘違いしたり、ザ・たっちを見てどっちが兄かわからなくなってきたので、老後に備えてあれやこれやと準備していかなきゃなと思うんですよね。 まずは手始めに演歌を覚えていきたいですね。ご老人のマストミュージックといえば、そりゃ演歌ですよ。だって昼過ぎにカラオケ行ってデンモクの履歴を見ると、演歌が何十曲も歌われていて度肝を抜かれますよ。 朝イチにカラオケやってきて、昼までノン

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          [エッセイ5日目]「はい、3名様です」

          「3名様ですか?」と聞かれて、3名"様"ですって堂々と答えて自分を敬い、レジで店員に「ご自宅用ですか?」と聞かれて、"ご"自宅ですって意気揚々と答えて己を尊んだり、ぼーっとして何も考えていないときって恐ろしいほど何も考えてないんですよね。 日頃、ペットの猫に話しかけるときは、でちゅまちゅ調なので、「ご飯たべまちゅか?」「よちよちしてあげまちゅね」なんて言って戯れているんですけど、仕事中に集中力が切れて無意識労働モードになったとき、お客様に対して「レジ袋はご利用でちゅか」とか

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          [エッセイ4日目]東京タワーはオレンジであれ

          年末年始ってなにかとめでたいものを見たくなりませんか?ほらあの、スカイツリーとかレインボーブリッジとかなんかほら、色々とあるじゃないですか。あ、あと富士山とか。 鷹とか茄子とか。 それでいうと僕は東京タワーがめでたいものだと思ってるんですよ。東京の東京たらしめるシンボルだし、なんかでかいし、オレンジだし、4本足だし。 あ、たらしめるって聞くとなんか鱈が食べたくなるね。 そう、それで大晦日にはお台場に行きまして、そこからスカイツリーと東京タワーとレインボーブリッジを同時に見ら

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          [エッセイ3日目]「ピカチュウ!はかいこうせん!」「は?」

          ポケモンシリーズで30年近く主人公を務めたサトシがようやくガラル大会で優勝を果たし、今春にはアニメシリーズを勇退するみたいですね。ラストシーンで今まで仲間になったポケモンたちがフラッシュバックのような形で総出演して、ピカチュウの元気玉でやっつけたんでしたっけ。 子供の頃はポケモンの鳴き声で出演する声優さんてどういう気持ちなのだろう、とかバリ失礼なことを思っていましたが、こういう超大作のラストの場面で発する「バナバーナ」みたいな鳴き声は視聴者の琴線に触れたり、声優さん自身も人生

          [エッセイ3日目]「ピカチュウ!はかいこうせん!」「は?」

          【エッセイ2日目】ユーキャンのオセロ講座に入りたい

          朝起きたらテーブルに置かれてるご馳走の数々に圧倒されまして、お正月!サイコー!イェーイ!!!みたいな気分になるんですけど、なんかこう、美味しいものであっても、目の前にたくさんありすぎると、食べちゃうぞ〜というより、消費しなきゃと思う瞬間ありませんか? 無いですか?え、無いんですか?そうですか。じゃあ、もういいですよ!!クリスマスの日に急性胃腸炎になった話をしてやりますよ!!!!! というのは冗談で、あのー、ほら、朝っぱらからお刺身のような脂が乗った食べ物ってキツイんですよ。

          【エッセイ2日目】ユーキャンのオセロ講座に入りたい

          【小説】窓ガラスと雪と君と。

          校庭に目をやると、うっすらと雪が積もっていた。 夕方を過ぎる頃にはきっと、雪はやんでしまうだろう。 冷たい風が吹き付ける外の景色とは対照的に、暖房がきいているこの教室ではのんきに英語の授業が行われていた。 先生の口から発せられた呪文は次第に心地よく感じ始め、眠気が僕を襲った。 右隣の席から寝息が聞こえてきて、思わず君の方を向いてしまう。 幸せそうに眠る君の頬に現れたまんまるのえくぼに僕は目を奪われてしまった。 国宝級の寝顔、なんてチープな言葉が頭に浮かんですぐに消えた。

          【小説】窓ガラスと雪と君と。