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マザレス番外編 烙印の報復 政府当局による規制 没エピ 望月衣知子編① スピンオフ

「臓器売買児童誘拐関連の記事は全て消されてます!」そういうと衣知子が座っていた椅子を跳ね飛ばして立ちあがった。ネオシティ第十二自治区の雑居ビル内にあるセンテンススプリングドットコム社のオフィス。デスクの鮫島俊介さめじましゅんすけと女性記者の望月衣知子もちづきいちこが残って明日のネットニュースに使う資料の整理を行っていた。
「またかよ……」
 鮫島は飲みかけのコーヒーの紙コップを握りつぶしてゴミ箱に放り込んだ。コーヒーが作業中のノートPCのキーボードにかかって繋いでいた外部スピーカーからけたたましいビープ音が鳴り出した。この国におけるインターネットのアクセスは政府当局によって監視されている。国家運営にとって不適切とネット空間を巡回するAIパトロールに判断された記事は瞬時に削除された。



「どうします?」
「どうしようもないだろうな、いつものこった」
「……」
「お前のせいでPC壊しちまった」
 スピーカーの接続ケーブルを引き抜きながら鮫島が嘆く。
「私は何もしてないじゃないですか!」
「お前がいちいち騒ぐからだ」
「でも子供たちの命が狙われてるのに、このままほっといていいんですか!」
「いいわけないだろ」
「じゃあ、どうするんですか?」
「さあな」
「号外を出しましょう! そして警告を促せば、被害を未然に防ぐことが出来るかもしれません、今からネオシティ全部の印刷所を当たってきます」
「無理だ」
「どうして?」衣知子が不満げにいう。
「今時、紙の印刷物を大量に擦れる輪転機をもった印刷屋なんて存在しないだろ、それに、もしあっても政府のサイバーセキュリティから抹消された記事を印刷しようなんて気骨のある印刷屋がいると思うか?」
「……」
「やつらが狙ってるのは安全世代、10歳以下の子供だ、とにかく明日本社に掛け合って手分けしてネオシティ二十三区全部の小学校に連絡をとってみる、そして学校側から保護者に警告を呼びかけてもらおう」
「わかりました」
その時電話が鳴った。あわてて電話にでる衣知子。
「デスク! リアルタイム東和台駅でマザーレスチルドレンが騒動を起こしているみたいです。今から取材してきます!」
椅子にかけていたジャケットつかむと、衣知子はオフィスを飛び出していった。
「おいまて……まったく鉄砲玉だな」
「絶対むりすんな、気をつけろよ!」鮫島が衣知子の後ろ姿に声をかける。
 ───全く、止めたって、言う事きくようなヤツじゃないからな。
鮫島は椅子に深く腰を落とすと深いため息をついた。


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