ナラクーラン

ナラクーラン

最近の記事

復讐は氷が溶けたオレンジジュースくらい薄くて脳はすごくてエライ

この町には城がある。その城のすぐそばに、私が通う大学もある。お隣が城って荘厳な日常。慣れてなんにも思わないけど。だけど、毎朝お堀を眺めながら通学するのは悪くない。抹茶みたいな色のお堀は落ちたらひとたまりもなさそうで、「城を守ってるよなぁ」と毎日欠かさず自動的に思っている。 そんな通学路、城の向かいにぽっかり空いた更地がある。駐車場で朝礼をするタイプの居酒屋と大繁盛店ワークマンに挟まれたその場所にはかつて、結構大きな割烹料理屋があった。名前は確か……。   「紙風船、でしょ」

    • 朝礼で「う◯こ」って言える日が来てこれって革命

      「えー、連絡事項ですが、明日からの連休、ポイントアップがあります。まぁいつも通りなんで今更ですが……雑誌と書籍が2倍、文房具は5倍──」 あぁ、外はあんなに晴れているのに。店長の後ろ、自動ドアの向こうに見える四角い外界に目をやる。 もうすぐ桜が咲くな。 お花見したいなあ。 したことないけど。 人混み嫌いだしな。 でもなんか、春だねぇ。 最近眠くてしょうがないのも、朝礼の連絡事項がその大小に関わらず右から左に流れていくのも、全部全部、春のせいだねぇ。 「それから、レジで渡し

      • 『火垂るの墓』サクマドロップスへの憧憬

        「お疲れ。また明日ね」   田淵さんは言って、私の手に何かを握らせた。見ると飴。ハッカ味だ。 「ハッカ……」 子どもの頃、『火垂るの墓』を観て以来、サクマドロップスに憑りつかれていた一時期があったことを思い出す。 「ドロップを買ってきて」と祖母に頼んだら、風邪の時のやつ……なんだっけ、ヴィ、ヴィ……ヴィックス! そう、ヴィックスを買ってこられて、あのとき私はあまりのことに泣き崩れた。 片膝をつき、がっくりと肩を落とし声を殺し、〝中年男性の悔し泣き〟みたいな姿で泣いた。そん

      復讐は氷が溶けたオレンジジュースくらい薄くて脳はすごくてエライ