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アメリカでお金を稼いでも幸福度は上がらないかも?

アメリカのエンジニアの平均年収は日本の約3倍!」なんて記事が大手ニュースサイトに出ることはもはや珍しくありません。しかし、アメリカで生活している身としては、収入面だけに焦点があたりすぎなように思います。金銭面やキャリアに関するメリットについては概ね同意しますが、実際には犠牲にしていることも少なくありません。


ビザと不安定な雇用

大多数の日本人にとって、アメリカで働くためには労働用のビザが必要です。このビザは、労働する権利とアメリカに滞在する権利を示すものです。基本的にはスポンサーとなる会社でのみ有効であり、会社への所属がなくなると一定期間後に無効になります。新たなスポンサーを見つけることができなければ、アメリカを去る必要があります。幸い私はグリーンカードを持っているため、この問題とは無縁ですが、大多数の外国人労働者がこのストレスと日々戦っています。

ご存知の通り、アメリカでは従業員のレイオフ(実質的な解雇)はよくあることで、自身に非がないにもかかわらず経営者の都合でレイオフされることもあります。Googleは2023年に12,000人(約6%の従業員)を解雇しており、この影響を受けて私のチームは12人から8人になりました。解雇されたメンバーに非はなく、私はただ幸運だっただけです。あまりニュースにはなりませんが、その後も小さいスケールでのレイオフは毎月続いています。これは程度の違いはあれ、他のIT会社でも同様です。このような景気で職探しは簡単ではありません。メキシコ出身の友人は、レイオフされた後に職探しに苦労し、アメリカを去る一歩手前までいきました。今回はIT業界が大きな影響を受けていますが、他業種でも同様なことは起こりえます。

しかし、このリスクを考慮しても、アメリカで働くことで得られることは多いです。興味のある方はこちらの記事を読んでみてください。

治安

アメリカでは、今年だけで120件以上の大規模銃撃事件が起きています。2021年には、26,000人が他人の手によって亡くなっており、そのうち21,000人が銃によるものです。日本だと考えられませんね。スマホの児童誘拐アラートが鳴ることなんて日常茶飯事です。訪れたことがある場所でこういった事件が起きたという報道を聞くと背筋が凍ります。

アメリカには危険な場所とそうでない場所の境界がはっきりしており、危険な場所を避けて生活していればリスクはかなり減ります。しかし一方で、こういった事件は学校、遊園地、酒場等でも起きています。これはアメリカに住む上で避けようがないリスクですが、こんなリスクを気にしていては生活できません。危険な場所を避けて普通に生活した上でこういった事件に巻き込まれたのであれば、運が悪かったということにするほかありません。日本の自然災害みたいなものと割り切って生活しています。

「最低限」にかかる費用

ホテル、アミューズメント、外食、教育、子育て等多くの分野において、多くの日本人が考える「最低限」を満たすためには平均以上の金額を支払う必要があります。独り身、または子供がいない間は「質素に暮らしてお金を貯める」ことは可能であるし、私もそうしています。たとえば、外食をあまりしない、治安が大丈夫そうな安めのホテルを使う、服や車に必要以上のお金をかけない、等です。しかし、子供を持つとこれが難しくなります

NUMBEO における東京とテキサス州オースティンの生活費の比較 によると、幼児預かりサービスは東京で8万円、オースティンでは23万円 ($1,500) です。娯楽施設、例えば遊園地や水族館、動物園等は日本と比べると値段が倍程度するものが多いです。東京ディズニーランドは大人一人8千円から1万円程度ですが、フロリダのディズニーワールドは1万8千円 ($120) から3万円 ($200) 程度します。他にも、習い事、医療保険、学費など「子供のために」と思うと出費せざるを得ないものが数多くあります。また、一般的には家族の住所によって子供が通える学校が決まります。ある程度の基準の学校に送りたければ、それ相応の地域に住んでいなければいけないということです。

悲観的な比較になってしまいましたが、それでも「3倍の収入」というのは強いです。同じような仕事をした場合、日本で生活したほうがより多くのお金が貯まるということはないと思います。ただ、状況によっては想定しているほどお金は貯まらないかも、という話です。

食事への不満

外食が高いです。ファストフードでも一人1,500円程度はかかります。参考に、私の近所のマクドナルドのビックマックが単品税抜きで 860円($5.6) で、消費税が6.25%です。アメリカのファストフードはバラエティがほとんどなく、ハンバーガー、サンドイッチ、タコス、チキンウィング(手羽先みたいなもの)くらいのものです。ファストフードを除く「手頃な」ランチの価格帯が3,000円から4,000円になり、さらに20%のチップが加わります。一人3,000円の料理を頼むと、26.5%増で約3,800円です。「手頃な」ディナーはこの1.5倍程度です。このあたりから他国の料理や健康志向の料理等がオプションに入ってきますが、たいしておいしくない店がほとんどです。日本のように、安くて美味しくてバラエティがあり、健康に良い選択もできるといった状況からは程遠いです。

外食がこういった状況なので、自宅で食事をすることが合理的な選択となります。しかし、材料や調味料がない、細切れのお肉がない、さしみがない、お惣菜がない、冷凍食品がおいしくない等、自宅で食事をするハードルも日本と比べて高いです。また、私みたいな料理好きでない人が自炊でバラエティを確保するのは難しく、味に飽きてします。こういった理由で、ファストフード店に必要以上に行ってしまうという人は多いと思います。私も、妻がいないときはファストフードの利用率が上がってしまいます。これはもうどうしようもありません。日本のコンビニやレストランが恋しい日々を過ごしています。

まとめ

日本人に共通していそうな、アメリカに住むための「犠牲」を紹介しました。

ネガティブな内容になってしまいましたが、私は決してアメリカに住むことを否定したいわけではありません。なんだかんだ言っても私はアメリカに住んでいますし、今渡米前に戻れるとしても同じ選択をすると思います。ここで得られる収入や経験は日本では手に入れることはできません。しかし、幸福度という観点で振り返ってみると、日本で生活していた時とさほど違わないように感じます。まあ、思い出補正がかかっているのかも知れません。

本記事が、アメリカ移住を考えている人にとって参考になれば幸いです。


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