鎖で繋がれた眼
シャッターを押す触覚は、まるであなたの眼球に直接触れ、網膜へ熱を伝えるような感覚である。
他人の身体を写真に収めるということは、風景写真や身の回りのものを収めるのと違って、私の興味を惹きつけ、永久に脳内のデータベースへのアクセスを強制させる。
色はどのように認識されるか。
写真装置を通して何かを見ることは、プログラムを通して映し出されている色の世界を前提としている。
それならいっその事、白と黒に二元化しつつその間を亡霊のように彷徨う世界で形を、色を、影を認識してみよう。
ダンサーの疾走との鬼ごっこ。
機微を逃さない。
シャッタースピードとの戦い。
鬼はシャッターを押すようにタッチをして捕まえる。
逃げる時は18mmの焦点距離の視角外へと逃げなければならない。
笑顔を捉えた時、私の人差し指と眼球の両回路を走って伝染してくる笑顔のウイルス。あなたの鏡のように私も笑顔になる。
撮り続けた先に現れてくる肖像画。
同じ目線に立つ。
私は私の選択を以てしてダンサーの眼となり、自身を更なるメディアとして位置付ける。
容易に瞬きはしてはいけない。
数フレーム後のあなたが、私の計算する像とは異なることがあり得るのだから。
写真を撮る・撮られるという行為を外に開いてみよう。
早送りも加工も編集もできず、ただその場所にいて観察することしかできない状況で、即物的に像を残していく。
その場所における画像空間への蓄積の何かが、あなたの身体空間のどこかに残り、埋葬されることを願って。
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