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米国市場:7/22週の振返りと24年7/29週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,459.10と前週比-0.83%で終了しました。NASDAQは17,357.88と前週比-2.08%で終了しました。
 先週の株価は、株式市場にとって再び厳しい週となりました。特にS&P500とNASDAQは大型ハイテク株の圧力により、下落しました。金曜日の上昇により、S&P500指数は50日移動平均線のテストに成功したように見えますが、下落基調がこれで終了したと考えるにはまだ早いでしょう。今週は、先週よりも様々な発表があるため、忙しい週となりそうです。
 先週を振り返ると、Alphabet(Google)の決算発表がありました。これは、AI市場の今後を占う上で非常に重要な決算でした。特にGoogleクラウドの成長に注目が集まりましたが、結果は前年同期比+28.8%の103.5億ドルでした。1Qの実績は前年同期比+28.5%の95.7億ドルでしたので、合格ラインに達していたと言えるでしょう。ただ、YouTube広告の成長率が鈍化したため、それが嫌気されGoogleは下落しました。全体の結果としては悪くなかったのですが、わずかなミスで下げてしまうほど、期待値が高くなっているのだと感じました。
 このため、今週決算発表が行われるMicrosoft (MSFT)、Apple (AAPL)、Amazon (AMZN)、Meta (META)の決算は、市場と指数に大きな影響を与えるでしょう。これらの企業はS&P500の約20%を占めるため、これらの企業でわずかに予想を下回る結果が出ると、株式にはさらなる圧力がかかる可能性があります。また決算の中で、少し気になったのは、設備投資額が131.9億ドルと前期比+10%(120.1億ドル)と設備投資額の伸びが減少している点です。前年同期比は+190%と大きな伸びを示しているのですが、本当に好調であれば前期比でも大きな伸びを示すはずですが、こちらは若干の伸びにとどまっています。またコメントの中でも、今後の設備投資額が120億ドルとほぼ同等ということも言われており、AIへの投資については少し懸念があるように思われます。
 また、政治面では、カマラ・ハリス氏が民主党の大統領選の候補者としての立場を先週固めました。この結果、RealClearPoliticsのサイトではトランプ氏とハリス氏の支持率が47.9対46.2と拮抗してきています。バイデン大統領が候補者だった時よりも挽回してきましたので、トランプ優勢だったところから、選挙戦の行方もまた不透明感を増してきました。
 この結果、一つのニュースで株式市場は右往左往する可能性はありますが、7月31日に開催されるFOMCの結果によっては、緩和される可能性もあります。今週の経済データから判断すると、FRBが来週サプライズで利下げを行うとは考えられません。市場が期待するのは、パウエル議長が記者会見において、より利下げの可能性についての突っ込んだ言及をすることでしょう。FRBが年末までに複数の利下げの可能性を示唆するようなことがあれば、市場は落ち着くかもしれません。しかし、FRBのこれまでの動き・経緯等を考慮すると米国経済の景気がおかしくなっていることが明確化されない限り、市場の期待している年に複数回の利下げ、9月の利下げについては可能性が低いと考えられます。仮に利下げ回数が少ない、もしくは無いことが7月のFOMCで明らかになると、市場はFedWatch Toolからもわかる通り、複数回の利下げシナリオを織り込んでいるため、ぎくしゃくする可能性は大いにあります。
 S&P500も若干買われすぎの水準でまだ推移していますが、S&P500の2024年後半のEPS予想に若干の軟化が見られるようになりました。来週は171社のS&P500企業が決算を発表する予定で、これにより報告を終えた企業の総数は376社となり、これは指数の約75%に相当します。これらの結果が、EPS予想にも大きな影響を与える可能性があり、これらの変動にも注目しておく必要があります。


株式市場

 第2四半期の決算シーズンの中間地点に近づいたS&P500は、好調と不調が入り混じった結果となっています。
 ポジティブな点として、予想を上回る利益を報告したS&P500企業の割合は平均を上回っています。また、第2四半期の利益は四半期末と比較して増加しており、2021年第4四半期以来、最も高い前年同期比増益率を記録しています。
 一方、ネガティブな点としては、収益サプライズの規模は平均を下回っています。さらに、市場は、ポジティブなEPSサプライズを報告したS&P500企業への評価は平均よりも低く、ネガティブなEPSサプライズを報告した企業への評価は平均よりも厳しくなっています。
 全体として、これまでにS&P500企業の41%が2024年第2四半期の決算を発表しました。このうち78%が予想を上回るEPSを報告しており、これは過去5年平均の77%、過去10年平均の74%を上回っています。しかし、企業全体の利益は予想を4.4%上回っているものの、これは過去5年平均の8.6%、過去10年平均の6.8%を下回っています。
 過去1週間では、複数のセクター(工業およびコミュニケーションサービスが牽引)の企業が報告したポジティブなEPSサプライズが、ヘルスケアセクターの一部の企業のEPS推定値の下方修正によってほぼ相殺され、この期間における全体的な増益率はわずかに増加しました。その結果、第2四半期の利益は先週末と四半期末時点と比較して増加しています。第2四半期のブレンド(報告済みの企業の実際の結果と未報告の企業の推定結果を組み合わせたもの)増益率は、本日時点で9.8%で、先週の9.6%、第2四半期末(6月30日)の8.9%と比較して増加しています。6月30日以降、増益率は上昇しているものの、市場は、ポジティブなEPSサプライズを報告したS&P 500企業への評価は平均よりも低く、ネガティブなEPSサプライズを報告した企業への評価は平均よりも厳しくなっています。
 もし9.8%が今四半期の実際の成長率だとすると、2021年第4四半期(31.4%)以来、同指数が報告した中で最も高い前年同期比増益率となります。また、同指数にとって4四半期連続の前年同期比増益となります。11セクターのうち8セクターが増益となっています。このうち、コミュニケーションサービス、情報技術、金融、ヘルスケアの4セクターは2桁成長を記録しています。一方、素材セクターを中心に3セクターは減益となっています。
 売上高に関しては、S&P500企業の60%が予想を上回る実績を報告しており、これは過去5年間の平均69%、過去10年間の平均64%を下回っています。企業全体では、予想を1.1%上回る売上高を報告していますが、これは過去5年間の平均2.0%、過去10年間の平均1.4%を下回っています。
 先週は、複数のセクター(ヘルスケアと一般消費財が牽引)の企業が報告したポジティブな売上高サプライズが、金融セクターの企業のネガティブな売上高サプライズによって部分的に相殺され、全体的な売上高成長率はわずかに増加しました。この結果、第2四半期の売上高は先週末と比較して増加していますが、四半期末と比較すると横ばいとなっています。第2四半期のブレンド売上高成長率は、本日時点で5.0%で、先週の4.8%、第2四半期末(6月30日)の4.7%と比較して増加しています。もし5.0%が今四半期の実際の成長率だとすると、同指数にとって15四半期連続の増収となります。
 情報技術セクターが牽引する形で、10セクターが増収となっています。一方、素材セクターは唯一減収となっています。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第3四半期と第4四半期の増益率(前年同期比)をそれぞれ6.8%と17.0%と予想しています。2024年通年の増益率は10.9%と予想されています。
 予想PER(株価収益率)は20.6倍で、過去5年間の平均(19.3倍)と過去10年間の平均(17.9倍)を上回っています。しかし、このPERは、第2四半期末(6月30日)に記録された予想PER21.0倍よりは低くなっています。
 来週は、S&P500企業171社(ダウ30構成銘柄10社を含む)が第2四半期決算を発表する予定です。(Source:Fact Set)

来週の主な決算発表(予定)

7/29(月):
<寄付き前>McDonald’s (MCD), ON Semiconductor (ON)
<引け後>F5 Networks (FFIV), Rambus (RMBS), Sprouts Farmers Market (SFM), Welltower (WELL).
7/30(火):
<寄付き前>Corning (GLW), LGI Homes (LGIH) PayPal (PYPL), Procter & Gamble (PG), Restaurant Brands (QSR), Sysco (SYY)
<引け後>AMD (AMD) Caesars Entertainment (CZR), Denny’s (DENN), First Solar (FSLR), Lending Club (LC), Microsoft (MSFT), Qorvo (QRVO), Skyworks (SWKS), Starbucks (SBUX),
7/31(水):
<寄付き前>ADP (ADP), Boeing (BA), CNH Industrial (CNHI), DuPont (DD), Kraft Heinz (KHC), Marriott (MAR), Mastercard (MA), Radware (RDWR), Timken (TKR)
<引け後>Amazon (AMZN), Camping World (CWH), Cheesecake Factory (CAKE), eBay (EBAY), Lam Research (LRCX), Meta (META), Qualcomm (QCOM).
8/1(木):
<寄付き前>ADT (ADT), ConocoPhillips (COP), Cummins (CMI), Eaton (ETN), Hershey Foods (HSY), Kellanova (K), Labcorp (LH), Shake Shak (SHAK), Utz Brands (UTZ)
<引け後>Apple (AAPL), Beazer Homes (BZH), Casella Waste (CWST), Cloudflare (NET), DoorDash (DASH), Roku (ROKU), Snap (SNAP), Universal Display (OLED),
8/2(金):
<寄付き前>Chevron (CVX), Church & Dwight (CHD), Exxon Mobil (XOM), Linde pls (LIN), Piper Sandler (PIPR)

米国の主な経済指標

7/29(月):
7/30(火):S&Pケースシラー住宅価格(20都市)
7/31(水):ADP雇用者数
8/1(木):FOMC、ISM製造業景気指数、新規失業保険申請件数
8/2(金):失業率、耐久財受注、製造業新規受注

今週の着目点

 先週発表された第2四半期GDP速報値2.8%と、7月のPMI速報値は全体的な経済の持ち直しを示しており、短期的に悪化する可能性は低いと考えられます。今週は経済データだけでなく、多くの決算発表とFOMCが予定されており、着目すべき点がたくさんあります。31日水曜日にはFOMCの結果がわかりますが、ここでサプライズが起こる可能性は低いでしょう。このFOMCにおいては、パウエル議長の言葉遣いはややハト派的になるかもしれませんが、市場が期待する時期に利下げが始まることを明言する発言はないと考えられます。6月のPCE価格指数は5月と比較して変わらず、7月または8月もこのパターンが続く場合、利下げ開始は今年1回行われるか、全く行われないかという結論になる可能性があります。上述したように、パウエル議長の発言が市場の期待している年3回の利下げの可能性を示唆しない場合、市場は動揺する可能性があります。
 また、8月1日(木)2日(金)には、7月の製造業PMIの発表が相次ぎ、今月も冷え込みを続けているかどうかが明らかになると思います。今週の7月PMI速報値にもそのような傾向が見られ、7月の経済全体の持ち直しはサービス経済に支えられていることが示唆されています。7月製造業PMIのヘッドライン数値が50を下回ってもそれほど驚きではありませんが、重要なのは、7月の数値と景気拡大・縮小の分岐点である50との距離です。特にISMの報告書も重要な要素となるでしょう。7月サービス業PMI報告書は来週以降に発表され、今週の製造業PMI報告書と合わせて、今四半期に入った時点での経済状況を初めて具体的に把握することができます。
 今週は、7月の雇用市場の状況を確認する必要もあります。FRBが賃金インフレはもはや問題ではないようなことを示唆していますが、賃金の伸びが抑制されているか、数値として裏付けられているかを確認する必要があります。5月と6月の雇用統計の主な結果は、強くも弱くもない雇用市場を示していましたが、6月の非農業部門雇用者数が減少していることが気になります。6月の失業率は4.1%で、若干上昇傾向が見られます。ただ、過去の平均よりはまだ低い水準ですが、7月の雇用統計で雇用創出のさらなる弱体化が見られれば、市場が期待している9月の利下げをさらに後押しすることになるでしょう。
 しかし、もしこの報告書が予想と異なる内容であれば、FRBの9月政策会合を前に多くのデータポイントが残っているにもかかわらず、市場は今年の3回の利下げという予想に疑問を抱くかもしれません。
 今週は多くの企業決算発表が予定されています。冒頭で述べたように、S&P500の約20%を占めるMicrosoft、Apple、Amazon、Metaなどの企業の決算が発表されるため、今後のAI相場、8月~10月までを予想する意味でも重要な週になります。


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