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米国市場:5/20週の振返りと24年5/27週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,304.72と前週比+0.03%で終了しました。NASDAQは16,920.79と前週比+1.41%で終了しました。
 先週は、Nvidia(NVDA)の決算一色の週だったと考えても良いと思います。FRB高官やFOMCの議事録要旨が発表されていますが、いまのシナリオ(AI相場であり、金利水準は保たれたまま推移する)に大きな変更はありませんでした。
 これらのストーリーはそれぞれの株価指数の動きからも明らかだと思います。S&P500とNASDAQの動き方を比較すると、株式市場には特定の力が働いていたことがわかります。ダウ平均株価と小型株中心のラッセル2000が下落したことを考慮しても明らかでした。市場を押し上げたのは、Nvidia(NVDA)の好決算と増配、そして10対1の株式分割発表です。これらの結果は、AI関連株全体を押し上げたため、ナスダックがその結果の一番の恩恵を受けています。
 一方、市場は、最新のFOMC議事録とFRB高官の発言に見られる慎重なコメントを消化する必要もありました。FOMCの議事録では、長期に高水準で維持することおよび現在の金融政策が十分に景気抑制的かをめぐり、「多く」が疑問を抱いていたことが明らかになっています。これらは、最近のデータや木曜日の5月PMI速報値の内容を踏まえると、これらの発言には特に驚きはないですし、当初のシナリオと変わるものではないです。ただ、市場が期待していた9月のFRB利下げ期待を後退させ、市場の勢いをいくらか削いだ恰好となっています。CMEFedWatchToolからもその傾向はみられ、17日末時点での9月のFOMCでの現状金利維持の確立が35%だったのに対し、24日末時点では50%に上がっています。また、ほんのわずかではありますが、更なる利上げの確立も出てきたことは非常に興味深い結果となっています。クリーブランド連銀のInflation now castingからはインフレはわずかではありますが、下げ基調に変化しつつありますのでまだ利上げの可能性は低いと考えられます。
 24日金曜日には、若干の反発が見られ全体として、S&P500は週を通じてほとんど変化がなく、今四半期は今のところ小幅な上昇にとどまっています。
 NVIDIAの決算ですが、EPS:予想$5.69に対し、結果$6.12、売上高:予想245.9億ドルに対し結果260.4億ドルと素晴らしい決算でした。カンファレンスコールのなかでは、上得意先であるクラウド企業(アマゾン、Microsoft等)についての説明がありました。得意先の先行投資額に対して、1年間ぐらいで元手が全部回収でき、4年ぐらいすれば初期投資額の5倍ぐらいの売上高になる旨の説明がありました。この結果から、GPUへの先行投資を加速している企業も儲けていることからこの先も明るいという印象があります。NVIDIAへの期待値は高かったものの、投資家を安心させる材料が出たことで、株価は新値を更新して取引を終えました。

株式

 第1四半期決算発表も終盤に差し掛かり、S&P500企業は引き続き予想を上回る好業績を維持しています。S&P500企業のうち、好業績を報告した企業の割合と、その上振れ幅はともに過去10年間の平均を上回っています。その結果、第1四半期の利益は四半期末時点よりも上方修正されており、前年同期比では、2022年第2四半期以来、最も高い増益率を記録しています。
 全体として、S&P500構成企業の96%が2024年第1四半期の決算を発表しました。このうち、78%の企業が予想を上回るEPSを計上しており、これは過去5年間の平均77%、過去10年間の平均74%を上回る数値です。全体では、企業の利益は予想を7.5%上回っており、これは過去5年間の平均8.5%を下回るものの、過去10年間の平均6.7%を上回っています。
 第1四半期の利益は四半期末時点よりも上方修正されています。第1四半期のブレンド(実績発表済みの企業の実際値と未発表企業の予想値を組み合わせた)増益率は、四半期末(3月31日)の3.4%から6.0%に上昇しました。もし6.0%が四半期の実際の成長率であれば、2022年第1四半期(9.4%)以来、最も高い前年同期比増益率となります。
 11セクターのうち8セクターが増益を発表しており、通信サービス、公益事業、情報技術、一般消費財セクターが特に好調です。一方、エネルギー、ヘルスケア、素材の3セクターは減益となっています。
 売上高に関しては、S&P500企業の61%が予想を上回る実績を報告しており、これは過去5年間の平均69%、過去10年間の平均64%を下回ります。全体では、企業の売上高は予想を0.8%上回っており、これも過去5年間の平均2.0%、過去10年間の平均1.4%を下回っています。
 結果、第1四半期の売上高は四半期末時点よりも上方修正されています。第1四半期のブレンド売上高成長率は、四半期末(3月31日)の3.5%から4.2%に上昇しました。もし4.2%が四半期の実際の売上高成長率であれば、S&P500指数は14四半期連続で増収を達成することになります。
 8セクターが増収を報告しており、通信サービスと情報技術セクターが特に好調です。一方、公益事業セクターを筆頭に、3セクターが減収となりました。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第2四半期、第3四半期、第4四半期の増益率をそれぞれ9.3%、8.3%、17.6%と予想しています。2024年通年の増益率は11.4%と予想されています。
 将来12ヶ月の株価収益率(PER)は20.5倍で、過去5年間の平均(19.2倍)と過去10年間の平均(17.8倍)を上回っています。しかし、これは第1四半期末(3月31日)に記録された将来PER21.0倍を下回っています。
 来週は、S&P500企業のうち9社(ダウ30構成銘柄1社を含む)が第1四半期決算を発表する予定です。(Source FactSet)

来週の主な決算発表(予定)

5/27(月):休場(戦没者追悼記念日)
<寄付き前>-
<引け後>-
5/28(火):
<寄付き前>
<引け後>Box (BOX), Cava Group (CAVA).
5/29(水):
<寄付き前>Abercrombie & Fitch (ANF), American Eagle (AEO), Chewy (CHWY), Dick’s Sporting Goods (DKS).
<引け後>Agilent (A), HP (HPQ), Salesforce (CRM)
5/30(木):
<寄付き前>Best Buy (BBY), Dollar General (DG), Foot Locker (FL), Kohl’s (KSS).
<引け後>Ambarella (AMBA), Cooper (COO), Costco (COST), Dell (DELL), Gap (GAP), Marvell (MRVL), Nordstrom (JWN), Ulta Beauty (ULTA), Zscaler (ZS).
5/31(金):
<寄付き前>-

米国の主な経済指標

5/27(月):休場(戦没者追悼記念日)
5/28(火):
5/29(水):
5/30(木):GDP、新規失業保険申請件数
5/31(金):個人所得・支出、PCE

今週の着目点

 今週は、実質賃金上昇率、消費者支出、インフレに関する新たな視点を与えてくれるPCEの発表があります。しかし、このレポートの前に、2024年第1四半期の改訂GDP速報値が発表されます。先月発表された数字は1.6%で、市場予想を下回りましたが、上方修正されるのではないかと予想されています。
 上方修正は建設的な材料となりますが、現状の企業の決算発表を見ると、1月~3月期の四半期はさらに大きな数字になると考えられます。今週を終えて、アトランタ連銀GDPNowモデルは、今四半期の数字を3.5%と予測しています。これは、最近の3.6%の予想からは下方修正されましたが、5月初めの3.3%からは上方修正されています。5月のPMI速報値では、5月の景気の上昇が見られましたが、最終報告書と6月初めに発表されるISMの5月PMI報告書で確認する必要があります。
 5月のPMI速報値では、投入コストと産出コストの圧力も示されており、インフレは4月と比較してあまり進展していないことが示唆されています。市場は4月のPCE価格指数、特にコア指数に注目するでしょうが、FRBが利下げに踏み切るには、3~5カ月間継続的に進展が見られる必要があるという見解を変えるには、大幅な低下が必要になると考えています。
 現在の市場予想では、4月コアPCEは前年同月比2.7%に低下し、3月の2.8%から低下するとされています。単月では下落傾向が見られることから、利下げの可能性が少し大きくなるかもしれません。しかし、4月のコアCPIが3.6%であることや、5月のPMI速報値のインフレに関するコメントを見ると、FRBははっきりとした兆候が見られるまでは動かないと思います。
 今週は、引き続き小売企業の決算発表が続きます。特にUlta Beauty(ULTA)の発表は注目していきたいです。北米の美容市場に関する同社のコメント、特に高級フレグランス市場に関するコメントに注目します。 HP(HPQ)とデル(DELL)の決算とガイダンスからは、PC市場の回復と、今年と来年のAI-on-PC市場の予想規模に関するコメントに注目します。これらの情報は、クアルコム(QCOM)、エヌビディア(NVDA)、マイクロソフト(MSFT)の方向性を考える一助になると思います。


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