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米国市場:6/10週の振返りと24年6/17週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,431.60と前週比+1.58%で終了しました。NASDAQは17,688.88と前週比+3.24%で終了しました。

 先週の株価は、金曜日に市場が失速しましたが、S&P500とNASDAQの両方の指数が何度か過去最高値を更新し、市場にとって好調な週となりました。インフレ状況の改善を示すCPIの結果により大きく伸び、FRBの最新経済見通しの慎重な姿勢と今年の利下げ回数を1回に減らすという発表をあまり市場は気にしていないようでした。また、これにより米国債利回りは低下し、10年債利回りは3月下旬以来の水準まで下がっています。これらの組み合わせにより市場が押し上げられました。

 この1週間は指数は伸びましたが、いくつか懸念事項も大きく加わってきました。先週の水曜日にSEP(経済予想サマリー)が示され、FFレートの利下げ回数の予想が、前回(3月)の調査での利下げ回数のコンセンサスは3回だったのに対し、今回は1回に下がっていました。19人中7人が1回の利下げを予想し、4人が利下げがないとしています。これはCME Fed Watch Toolで61.1%の確率で9月に利下げがあると予想されていますが、これらの結果から水を差される恐れがあります。また、SEPのドットプロットがこれだけ大きく変わること自体が珍しいことですが、このことに関して市場にはインパクトはありませんでした。今の市場はBig5が牽引している市場であるため、GAFAは借金をしておらず、キャッシュが多いため高利による資本コストを一切気にせず設備投資が可能であり、FFレートは無関係ということで全く意に介していないように見えました。確かに、実際には関係ないため、マーケットが下がらなかったのは妥当ですが、FRBの考えていることに対して敬意を表さないマーケットの態度は少し傲慢ではないかと思います。

 また、NASDAQなどは新値を行進していますが、ADライン (Advance/Decline Line) は過去1年の最低となっています。ADラインは、上昇銘柄数と下落銘柄数をプロットしたものであるため、ADラインが低いということは上昇銘柄の数に対して下落銘柄数が多いということです。これは、たくさんの銘柄が下げているが、指数は過去最高値に来ていることに他ならず、市場がNVDAやTech Big5を中心としたごく一部の銘柄だけに物色の対象が集中しているということを示唆していると思います。今のAIブーム自体が、先週も述べたようにBig5に牽引されていますので理由としては理解できる状況ではありますが、市場の健全性から考えると、行き過ぎではないかと思います。このため、市場全体としてはそろそろ休憩が必要な段階ではあるが、それを許されない状況となっておりどこかで限界がくるかなと見ています。

 4月の下旬以降、米国市場は力強く伸びてきていますが、2か月にわたるラリーを続けていますのでタイミング的にもおかしくないと思います。市場の休憩が来ると今回はそれなりの大きな下落になると思います。仮に、大きな下落となったとしても今年の大きな流れに水を差すようなことはないと今は考えています。過去95年間、S&P500は毎年5%以上の下落を平均して3回経験しており、市場の一つの動きだと流すしかないです。市場全体としても2024年の予想EPSに対するS&P500のPER倍率が過去2年間の高値に達しているため、健全なことだと思います。

 逆に市場が上昇し続けた場合は、基本的に付いていくしかないのですが、上昇相場が短命で終わる可能性を探る必要性が出てくるかもしれません。

株式市場

 2024年の第2四半期が数週間後に終了します。そのためアナリストはS&P500の第2四半期の利益予想について予想が集中しており、こちらは四半期初めの予想と比べてほぼ横ばいで推移しています。また、市場は引き続き、第2四半期にS&P500が過去2年間で(前年比)増益率となると予想しています。また、2024年と2025年のS&P500の利益成長率は2桁になると予測しています。
  第2四半期のガイダンスに関しては、2024年第2四半期のEPSガイダンスがマイナスであるS&P500企業の割合は、平均的な水準にあります。現時点で、S&P500の111社が2024年第2四半期のEPSガイダンスを発表しており、そのうち67社がマイナスのEPSガイダンス、44社がプラスのEPSガイダンスを発表しています。2024年第2四半期のEPSガイダンスがマイナスであるS&P500企業の割合は60%(111社中67社)であり、これは過去5年間の平均59%を上回りますが、過去10年間の平均63%を下回っています。
 しかし、S&P500の企業の推定EPSの修正に関しては、アナリストは全体として2024年第2四半期のEPSの推定値をわずかに引き上げています。1株当たり利益で見ると、第2四半期の推定値は3月31日から0.2%増加しています。通常、アナリストは四半期中にS&P500企業のEPS推定値を3~4%引き下げます。
 その結果、2024年第2四半期の推定(前年比)増益率は、第2四半期初めの推定値と同じとなっています。6月14日時点で、S&P500は(前年比)9.0%の増益が見込まれており、3月31日の推定(前年比)増益率9.0%と比較して変更がありません。もし9.0%が実際の四半期成長率であれば、2022年第1四半期(9.4%)以来、S&P500が報告する最高の年間増益率となります。また、S&P500にとって4四半期連続の年間増益となります。
 第2四半期の増益は、S&P500全体に広がると予想されており、11セクターのうち8セクターが前年比で成長した旨を発表すると見込まれています。この8セクターのうち4セクターでは2桁の成長が見込まれています:コミュニケーションサービス、ヘルスケア、情報技術、エネルギーが対象です。一方、3つのセクターは、素材セクターを筆頭に、前年比で減益となる予想がされています。
 収益に関しては、四半期中に上方修正と下方修正によって相殺されています。6月14日時点のS&P500は(前年比)4.6%の増収が見込まれており、3月31日の増収予想4.6%と比較しても変更はありませんでした。もし4.6%が実際の四半期増収率であれば、S&P500にとって15四半期連続の増収となります。
 情報技術セクターとエネルギーセクターを筆頭に、10セクターが増収となる予想されております。一方、素材セクターは、前年比で減収となると予想されています。
 今後については、アナリストは2024年第3四半期、第4四半期の(前年比)増益率をそれぞれ8.2%、17.6%と予想しています。2024年の通年では、アナリストは(前年比)11.3%の増益を予想しています。2025年の通年では、アナリストは(前年比)14.3%の増益を予測しています。
 予想PER(株価収益率)は21.0で、過去5年間の平均(19.2)と過去10年間の平均(17.8)を上回っています。このPERは、第1四半期末(3月31日)に記録された予想PER21.0と同じです。
 今週は、S&P500企業1社が第1四半期の決算発表を、6社が第2四半期の決算発表を予定しています。

来週の主な決算発表(予定)

6/17(月):
<寄付き前>
<引け後> Lennar (LEN)
6/18(火):
<寄付き前>
<引け後>KB Home (KBH)
6/19(水):休場(祝日:Juneteenth National Independence Day)
6/20(木):
<寄付き前>
<引け後> Accenture (ACN), Darden Restaurants (DRI), Kroger (KR)
6/21(金):
<寄付き前>CarMax (KMX)

米国の主な経済指標

6/17(月):
6/18(火):小売売上高、設備稼働率、鉱工業生産指数
6/19(水):祝日:Juneteenth National Independence Day
6/20(木):住宅建築許可件数、住宅着工件数、フィラデルフィア連銀景況指数、新規失業保険申請件数
6/21(金):中古住宅販売件数

今週の着目点

 今週は、6月19日の祝日となり、少し変則的な週になります。学年末とも重なるため、夏休みを早めに取る人もいると思いますので、取引量は通常より少なくなる可能性があります。しかし、来週は5月の小売売上高、鉱工業生産、住宅着工件数、6月のPMI速報値など、多くのデータが発表されるため、引続き注意深く見守っていく必要があります。
 これらの5月のデータは、アトランタ連邦準備銀行のGDPNowモデルによるGDP予想が修正される可能性もあります。先週終了時点で3.1%となっていますが、この数字は6月7日に最後に更新されたもので、6月18日火曜日に更新され、最新の5月小売売上高と鉱工業生産データが組み込まれると、大幅な修正が見られる可能性もあります。
 21日にはS&Pグローバルから6月のPMI速報値が発表されます。今四半期の最終月の状況が具体的に確認できますので、製造業とサービス業の経済、雇用創出、インフレ状況についての一つの示唆になると思います。S&Pグローバルの5月のPMI最終報告は、サービス部門の改善についてはISMと一致していましたが、製造業についてはそれぞれが異なる見解を示していました。6月のPMI速報値の結果は、どちらが正しかったのかを判断するのに役立つはずです。
 また、欧州圏の6月PMI速報値も確認します。ECBが先日利下げを発表しており、欧州の景気に不安を抱いているのではないかと考えておりその欧州圏の需要動向を読み取ることを進めていきます。また、この結果、ドルの今後を判断する一つの指標ともなると思います。6月のPMI速報値でユーロ圏のインフレがさらに軟化していることなどがが分かれば、市場は、欧州中央銀行(ECB)による次回の利下げが早まる可能性があると考えるようになるかもしれません。
 今週の決算発表はわずかな企業しか行わないのですが、年末の複数回の利下げの可能性を引続き市場が考えていることから、住宅建設会社のLennar (LEN)とK.B. Home (KBH)の四半期決算と2024年後半の見通しは、市場の期待値を再確認することになるのかなと考えています。
 Darden Restaurants (DRI)とKroger (KR)の四半期決算と関連指標を比較することで、人々がどの程度家庭での食事に戻っているのかを把握できると思います。レストラン需要は好調という報道がされていますがこれを裏付けることになるのか確認していきたいです。


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