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米国市場:7/29週の振返りと24年8/5週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,346.56と前週比-2.06%で終了しました。NASDAQは16,776.16と前週比-3.35%で終了しました。
 先週の株価の動きは大きく動いた週になりました。7月末は大きく上昇し締めくくることができましたが、8月に入ると全てが売り一色になりました。新しい月の最初の2日間はひどく、少なくとも全体的に4%以上の下落となりました。7月中旬より相場が夏休みに入ったような様相を見せていましたが、先週の動きそして、相場の不安要素に対してある程度方向性を見つけるまではこのウダウダした相場が続くとみており、短期調整ではなく10月ごろまでの長い夏休みに入った考えています。しかし、楽観的な見方をすれば、この大きな動きは今後の大きなチャンスと捉えることもできると思います。Fear&Greed指数も8月に入ってからの下げでFearに振れております。ただ、一気に下げたこともありまた戻る可能性もありますが、徐々に過熱感も取れてくると思います。下げ始めてから2週間程度しか経過していないため日柄的には十分ではないので、モメンタムが回復するまではまだまだ日数がかかると思います。今週も上下動が激しい週になるのではないかなと考えています。
 経済統計に目を移すと、8月2日に発表された雇用統計は失業率が予想4.1%に対して4.3%となっており市場予想を下回りました。これで4か月連続での悪化となり、3ヵ月連続で4%台となっています。9月も続くようですと、景気悪化の懸念からFRBも9月に利下げする可能性も出てきました。ただ、歴史的にみると雇用は加熱状態から平時に戻っただけとも考えられますので、このあたりは引続き今後に発表されるデータを確認していくことが大事だと思います。この結果は、7月31日に閉会したFOMC後のパウエル議長の発言を裏付けるような結果となっています。
 FOMC後のパウエル議長の発言は、FRBが与えられている物価の安定と、雇用の最大化という2つの使命に対し、バランスを重視しているとの説明がされています。これまで物価の安定を優先していることからはスタンスが変わりました。また、9月の利下げもありえるかということの質問に対して、利下げについても討議が行われているということが説明されており、いつでも利下げが開始できるような雰囲気の下ごしらえがされていました。この結果、CME Fed Watch Toolでは9月の利下げは100%の確率となり、更に利下げ幅が0.25ではなく0.5%になるという見方が大勢を占めるようになりました。また、Wall Street Journalからも選挙前の利下げは珍しくないという記事が出ており、9月利下げの地ならしが進んだように見えます。
 ただ、米国10年債利回りをみると先週で4.2%台から4%を切るまで下落しました。利下げを見込んだ結果と思いますが、FRBが利下げを行うと合わせて長期金利も下がってしまいます。利回りの低下は、高利回りのリスクの高い商品へと金融機関を向かわせることになり、バブルの芽を産むことにもなりますので、FRBも経済が大きく悪化している様子がみられない限り連続した利下げは行われないかなとも考えています。
 一方、決算シーズンは真っ只中です。先週は、GAFAMが決算発表をしていますが、METAを除き、凡庸もしくは期待を下回る決算となりました。これまでAI期待により大きく上昇してきましたが、これらの決算からAIの市場が青天井のように広がらないムードも広がってきています。また、Amazonの発表からも、「消費者への懸念」が伝えられています。引続き企業の決算発表が続きますが、この懸念が増えているのかも確認していきます。
 アトランタ連銀のGDPNowは、2024年第3四半期のアップデートを8月1日に発表し、同四半期の成長率を2.5%と予測しています。しかし、労働市場の低調な報告を受けて、次回の改訂では下方修正される可能性があり、米国経済はまだ堅調のように見えていますがこの推移も注目していきたいです。

株式市場

 第2四半期の決算シーズンも中盤に差し掛かり、S&P 500企業の業績は期待値に対して引き続き好悪入り混じった状況です。ポジティブな面としては、予想を上回る利益を報告したS&P 500企業の割合は平均を上回っています。一方、ネガティブな面としては、収益サプライズの規模は平均を下回っています。しかしながら、全体としては、第2四半期の利益は先週末および四半期末と比較して増加しており、2021年第4四半期以来、最も高い前年同期比増益率となっています。ただし、市場はポジティブなEPSサプライズを報告したS&P 500企業への評価は平均よりも低く、ネガティブなEPSサプライズを報告した企業への評価は平均よりも厳しくなっています。
 これまでにS&P 500企業の75%が2024年第2四半期の決算を発表しました。このうち、78%が予想を上回るEPSを報告しており、これは過去5年平均の77%、過去10年平均の74%を上回っています。企業全体では、予想を4.5%上回る利益を報告していますが、これは過去5年間の平均8.6%、過去10年間の平均6.8%を下回っています。
 6月30日以降、金融、一般消費財、コミュニケーションサービス、情報技術セクターの企業によるEPS推定値の上方修正とポジティブなEPSサプライズは、エネルギーセクターとヘルスケアセクターの企業のEPS推定値の下方修正とネガティブなEPSサプライズによって部分的に相殺され、全体的な増益率の増加に最も貢献しています。この結果、第2四半期の利益は先週末および四半期末時点と比較して増加しています。第2四半期のブレンド(報告済みの企業の実際の結果と未報告の企業の推定結果を組み合わせたもの)増益率は本日時点で11.5%で、先週の9.8%、第2四半期末(6月30日)の8.9%と比較して増加しています。
 もし11.5%が今四半期の実際の成長率だとすると、2021年第4四半期(31.4%)以来、同指数が報告した中で最も高い前年同期比増益率となります。また、同指数にとって4四半期連続の前年同期比増益となります。
 11セクターのうち8セクターが第2四半期の前年同期比で成長を報告しています。このうち、コミュニケーションサービス、情報技術、金融、公益事業、ヘルスケア、一般消費財の6セクターは2桁成長を記録しています。一方、素材セクターを中心に3セクターは減益となっています。
 売上高に関しては、S&P500企業の59%が予想を上回る実績を報告しており、これは過去5年間の平均69%、過去10年間の平均64%を下回っています。企業全体では、予想を1.1%上回る売上高を報告していますが、これは過去5年間の平均2.0%、過去10年間の平均1.4%を下回っています。
 過去1週間では、複数のセクター(ヘルスケアとエネルギーが牽引)の企業が報告したポジティブな売上高サプライズが、この期間における全体的な売上高成長率の増加に最も貢献しました。6月30日以降、金融セクターとヘルスケアセクターの企業による売上高サプライズが、全体的な売上高成長率の増加に最も貢献しています。この結果、第2四半期の売上高は先週末と比較して増加しており、四半期末と比較しても増加しています。第2四半期のブレンド売上高成長率は、本日時点で5.3%で、先週の5.0%、第2四半期末(6月30日)の4.7%と比較して増加しています。
 もし5.3%が今四半期の実際の成長率だとすると、同指数にとって15四半期連続の増収となります。情報技術、コミュニケーションサービス、エネルギーセクターが牽引する形で、10セクターが増収となっています。一方、素材セクターは唯一減収となっています。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第3四半期と第4四半期の増益率(前年同期比)をそれぞれ6.1%と16.1%と予想しています。2024年通年の増益率は10.8%と予想されています。
 予想PER(株価収益率)は20.7倍で、過去5年間の平均(19.3倍)と過去10年間の平均(17.9倍)を上回っています。しかし、このPERは、第2四半期末(6月30日)に記録された予想PER21.0倍よりは低くなっています。
 来週は、S&P500企業79社(ダウ30構成銘柄3社を含む)が第2四半期決算を発表する予定です。(Source FactSet)

来週の主な決算発表(予定)

8/5(月):
<寄付き前>-
<引け後>CSX (CSX), Simon Property Group (SPG), Palantir (PLTR),  Williams Companies (WMB), Realty Income (O), ONEOK (OKE), Diamondback Energy (FANG), Tyson Foods  (TSN), Carlyle Group Inc (CG), Freshpet (FRPT),  Spirit AeroSystems (SPR), Avis (CAR), Teradata (TDC),  Seadrill Ltd (Hamilton) (SDRL),
8/6(火):
<寄付き前>Caterpillar (CAT), Uber (UBER), Duke Energy (DUK), Zoetis (ZTS), Marathon Petroleum (MPC), Constellation Energy (CEG), Sempra (SRE), Yum! Brands (YUM),
<引け後>
8/7(水):
<寄付き前>Shopify Inc (SHOP),  Walt Disney Co (DIS),  CVS  (CVS),  LYFT (LYFT),
<引け後>Robinhood (HOOD), Applovin (APP), HubSpot (HUBS),
8/8(木):
<寄付き前>Eli Lilly (LLY), Plug Power (PLUG), Datadog (DDOG), Novavax (NVAX)
<引け後>elf Beauty (ELF), Unity (U), Paramount (PARA), Trade Desk (TTD),
8/9(金):
<寄付き前>-

米国の主な経済指標

8/5(月):ISM非製造業景気指数
8/6(火):
8/7(水):
8/8(木):新規失業保険申請件数
8/9(金):

今週の着目点

 先週より8月が始まりましたが、厳しいスタートとなりました。統計的にも、8月、9月は株式市場にとって年間で最も厳しい月であり、季節的な傾向も弱気となりがちです。つまり、今後数か月間は株式市場にとって厳しい道のりとなると思われます。これまで相場を引っ張って来たファクターが不透明になりつつあることもあり、年末までに市場を驚かせるような大きな動きがあるかもしれません。
 先週のS&PグローバルとISMのデータはまちまちでしたが、製造業部門では雇用と賃金を含め、景気が減速し始めていることが示されました。FRBは「利下げ誘導」に傾く可能性がありますが、FRBがどんどん利下げするようなケースになれば、それは景気後退が始まっていることにもなります。
 失業保険申請件数が増加しており、これは労働者が新しい仕事に移りにくくなっていることを示しています。労働市場は依然として大きな問題はないように見えていますが、いずれ問題が顕著化してくるかもしれません。パウエル議長が先週語ったリスクバランスが存在するということなのかもしれません。
 先週の重要な週に続き、今週も多くの企業決算が予定されています。今週後半に決算を発表するThe Trade Desk (TTD) にも注目しています。この銘柄は、Alphabetが発表した広告支出指標の低迷を受けて最近大きく下落しましたが、TTDは前四半期に非常に力強い決算とガイダンスを発表しており、この結果に注目しています。


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