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米国市場:7/8週の振返りと24年7/15週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,615.35と前週比+0.87%で終了しました。NASDAQは18,398.45と前週比+0.25%で終了しました。
 先週の株価は、パウエルFRB議長が議会証言で利下げに前向きな姿勢を示したことや、11日(木)の6月消費者物価指数(CPI)で前月比‐0.1%となりインフレの進展が確認されたことで、株価が上昇しました。また、同日には、いくつかの大型ハイテク株が下げ、その他の銘柄が上昇したことで、市場のローテーションが始まったのかと話題になっています。
 S&P500のADLineをみると、大きく上昇しており幅広い銘柄に買い注文が入ったことがわかります。これまで、マグニフィシェント7と呼ばれる大手ハイテク銘柄に買いが集中していたことから、買いが分散されてきているということは良いことであり、これから市場を上昇させる可能性を秘めていると思います。
 先週は、市場が買われすぎておりS&P500のバリュエーションがかなり大きくなっていると思っています。この場合、投資家の期待値が高まっていることであり今後発表される各社の決算にほんの少しでもミスがあれば大きく売られるプレッシャーが増加しているとも言えます。決算が良くても、コンセンサス予想を大きく上回っており、かつ、市場が注目している部門等が予想以上に伸びていることが必要になってきます。単純にPERのEを延ばしただけでは許されないということです。投資家の期待値もバブルほどには上がってきておらず、平時の上限に近い水準にあるため、夏休み相場で相場が下がりQ3以降の収益が予想通り大きく伸びることが確認できれば、株価も自然とあがってくると思っています。
 その意味においては、11日のS&P500とNASDAQの大きな下げはこの状況を少し緩和しましたが、12日にはまた過去最高値付近まで戻っており、買われすぎの状態にあります。つまり、業績相場であることが継続していることを示唆しています。S&P500指数の平均よりも良い利益成長率の見通しを示す企業が注目される相場ということかなと思います。
 また、先週も引続き大統領選について多くのことがメディアを賑わせています。大統領選が近づくにつれて、いろいろな要因で市場が揺れ動くことが予想されます。週末(13日)にトランプ氏が銃撃されるという事件が起きました。この事件から、トランプ氏が生き延びたことにより支持率が大きく伸びることが予想されます。この結果、トランプ氏が大統領になるという方向で市場も予想を変えていくと思いますがこの経過でいろいろな動きがあると思いますが、冷静に様子を観察していきたいと思います。
 先週のCPIが発表され、3.0%と市場予想3.1%を下回りました。またコアも3.3%とこちらも市場予測を下回っています。しかし、前月比が‐0.1%となったこと、また先週のISM指数も50を下回っており、新規失業保険申請件数も少しずつ増えてきていることを考えると好調であった米国経済にも変化の兆しが出始めているのかなとも考えてしまいます。ただ、金曜日のPPIの結果を見る限りだとまだまだ様子を観察する必要があるでしょう。このため、15日(月)に予定されているパウエル議長のインタビューの発言に市場は注目すると思われます。全体的にインフレについては好転が見られたため、パウエル議長はFRBがもっと良いデータを必要としていることを改めて強調するとは思います。市場は利下げのタイミングや回数について先走る傾向がありますので、現在の市況を考慮し、ポートフォリオに潜在的な落とし穴が生じないよう、引き続きデータから判断していきたい。

株式市場

 S&P 500の第2四半期の決算発表シーズンは、まだ始まったばかりですが、現時点では好悪まちまちな結果となっています。ポジティブな面としては、S&P 500企業のうち、予想を上回る利益を報告した企業の割合は平均を上回っています。ネガティブな面としては、利益のサプライズの程度が平均を下回っています。この結果、S&P 500指数の第2四半期の利益は、先週末および四半期末と比較して、本日時点で増加しています。さらに、2022年第1四半期以来、最も高い前年比増益率を記録しています。
 全体として、S&P 500構成企業のうち、これまでに2024年第2四半期の決算を発表したのは5%です。これらの企業のうち、81%が予想を上回るEPSを報告しており、これは5年平均の77%、10年平均の74%を上回っています。決算結果では、予想を4.1%上回る利益を報告していますが、これは5年平均の8.6%、10年平均の6.8%を下回っています。この結果、S&P 500指数の第2四半期の利益は、先週末および四半期末と比較して、本日時点で増えています。第2四半期のブレンド(既に報告された企業の実際の結果と、まだ報告されていない企業の推定結果を組み合わせたもの)増益率は本日時点で9.3%であり、先週の8.6%、第2四半期末(6月30日)の8.9%から増加しています。
 EPS予想の上方修正とJPモルガン・チェースの好決算は、エネルギーセクターのEPS予想の下方修正によって一部相殺されましたが、先週末および四半期末以降の全体的な増益率の上昇に最も大きく貢献しています。
 もし9.3%が今四半期の実際の成長率であれば、2022年第1四半期(9.4%)以来、最も高い前年同期比増益率となります。また、4四半期連続の前年同期比増益となります。11セクターのうち9セクターが増益(または増益見込み)となっています。これらのうち4セクターは2桁成長を記録しています(コミュニケーション・サービス、情報技術、ヘルスケア、金融)。一方、2セクターは減益(または減益見込み)となっており、素材セクターが最も減少しています。
 売上高に関しては、S&P 500企業の56%が予想を上回る実績を報告しており、これは5年平均の69%、10年平均の64%を下回っています。企業全体では、予想を2.9%上回る売上高を報告しており、これは5年平均の2.0%、10年平均の1.4%を上回っています。
 第2四半期のブレンド売上高成長率は本日時点で4.8%であり、先週の4.7%、第2四半期末(6月30日)の4.7%からわずかに増加しています。JPモルガン・チェースの好決算は、エネルギーセクターの売上高予想の下方修正によって一部相殺されましたが、先週末および四半期末以降の売上高成長率のわずかな上昇に最も大きく貢献しています。もし4.8%が今四半期の実際の売上高成長率であれば、15四半期連続の増収となります。
 9セクターが増収(または増収見込み)となっており、情報技術セクターが最も増加しています。一方、2セクターは減収(または減収見込み)となっており、素材セクターが最も減少しています。
 今後12ヶ月の株価収益率(PER)は21.4倍であり、5年平均(19.3倍)、10年平均(17.9倍)を上回っています。このPERは、第2四半期末(6月30日)に記録された21.0倍のPERよりも高くなっています。
 来週は、S&P 500企業45社(ダウ30構成銘柄5社を含む)が第2四半期の決算発表を予定しています。(Source Fact Set)

来週の主な決算発表(予定)

7/15(月):
<寄付き前>BlackRock (BLK), Goldman Sachs (GS)
<引け後>
7/16(火):
<寄付き前>Bank of America (BAC), Morgan Stanley (MS), PNC (PNC), United Health (UNH)
<引け後>Interactive Brokers (IBKR), JB Hunt (JBHT).
7/17(水):
<寄付き前>ASML (ASML), Elevance Health (ELV), Johnson & Johnson (JNJ), Synchrony Financial (SYF)
<引け後>Alcoa (AA), Crown Castle (CCI), Discover Financial (DFS), Steel Dynamics (STLD), United Airlines (UAL).
7/18(木):
<寄付き前>Abbott Labs (ABT), DR Horton (DHI), Domino’s Pizza (DPZ), Taiwan Semiconductor (TSM)
<引け後>Netflix (NFLX), PPG Industries (PPG).
7/19(金):
<寄付き前>American Express (AXP).

米国の主な経済指標

7/15(月):
7/16(火):小売売上高
7/17(水):住宅建築許可件数・着工件数、設備稼働率、鉱工業生産指数
7/18(木):フィラデルフィア連銀景況指数、新規失業保険申請件数
7/19(金):

今週の着目点

 今週は四半期決算発表が本格化し、6月の主要経済データもいくつか発表される予定です。その中には、小売売上高の最新レポートが含まれており、コストコの6月の好調な既存店売上高の背景を裏付けるうえでしっかり確認したいと思います。また、アマゾン(AMZN)を含む他の消費者向け企業の2024年第2四半期の業績について、基礎的な情報となります。 先週の消費者物価指数(CPI)データは、FRBの利下げ可能性を上げることに関しては非常によい結果であり幅広い銘柄に買い注文が入る要因ともなりました。しかし、12日(金)に発表された6月の生産者物価指数(PPI)と、前年比のコアPPIデータに見られる傾向は、むしろ逆のことを示しており、この結果FRBが利下げに着手する前に、より良いデータを見る必要があることを再確認をする必要があることを強調することになるのではないかと思います。
 FRBの9月の政策会合が終わるまでに、7月、8月、9月の様々な経済指標のデータが得られます。短期的に見ると、市場は月曜日のパウエルFRB議長のコメントに注目する可能性が高く、PPIデータを考慮すると、先週ほど利下げに積極的ではないかもしれません。
 今週発表される6月の住宅着工件数については、季節調整されていないデータと一戸建て住宅の着工件数に注目します。4月と5月のデータは、12月と3月の四半期に比べて、建設活動のペースが速まっていることを示唆しています。6月のデータでもこの力強さが続けば、ハウスメーカにとってはプラスとなるだけでなく、ウェイスト・マネジメント(WM)にとってもプラス材料となると思います。注目すべきもう一つのデータは、6月の鉱工業生産指数です。S&Pグローバルの6月PMIレポートでは成長が示されたのに対し、ISMのレポートでは縮小が見られたため、それぞれのレポートが違う方向性を示しており、製造業の状況を示すこのデータはこの方向性を占う上でしっかり確認しておく必要があります。
 これらのレポートを検討する際には、アトランタ連銀のGDPNowモデルへの影響に注目します。このモデルは今週、2.0%に下方修正されました。今週、得られるデータによって、6月期のこのモデルがさらに下方修正された場合、市場が好意的に受け止める可能性は高いです。その理由として、それほど良くない・悪い経済ニュースは、FRBの利下げサイクル開始を促す良いニュースと見なされるからです。そして、先週見られたように、そのようなシナリオは、幅広い銘柄が上昇することになるかもしれません。
 今週は、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレーなどの金融大手が決算発表を行います。ゴールドマン・サックス(GS)の15日の決算発表である程度の方向性が得られると思います。また、ヘルスケアのトップバッターであるユナイテッドヘルス(UNH)の火曜日のコメントにも注目が集まります。
 また、先日TSMの6月の売上が発表されていましたが、半導体業界の動向として今後も大きな成長が見込めるのか、ASMLの決算にも注目していきます。19日金曜日にはアメリカンエクスプレス(AXP)の四半期決算が発表されます。小売売上高のデータと比較することで消費者の動向も確認します。
 これらの決算報告以外では、7月16日から17日に開催されるAmazonの2024年プライムデーイベントへの参加状況や関連レポートを評価していきます。


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