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米国市場:5/6週の振返りと24年5/13週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,222.68と前週比+1.85%で終了しました。NASDAQは15,011.35と前週比+1.14%で終了しました。
 先週の株価は、新しい経済指標はほとんど発表されませんでしたが、FRB関係者の発言が相次ぎ、四半期決算発表が続く中、株式市場は緩やかに上昇し、買われ過ぎの領域に入っています。金曜日に発表されたミシガン大学消費者信頼感指数(速報)が予想を大きく下回り、1年期待インフレ率速報値は3.5%と高い結果になったにもかかわらず、CME Fed Watchツールは9月のFOMCにて0.25%の利下げがあると市場が期待していることを示しています。
 FRBの利下げのタイミングですが、あったとしても11月、12月のタイミングだと考えています。これまでのところ、インフレ指標が示すのはインフレはまだ収まっておらず、若干の上昇基調も見せていることです。FRBの発言から類推するに3ヵ月連続ぐらいで指標の下げ傾向がはっきりしたところで利下げを検討するものと思われます。このため、9月に利下げがあるとするのであれば、5月に発表される指標からその傾向が現れてきていることが必要と考えております。この意味において、来週発表される4月のインフレデータやその他の経済指標は注目しておく必要があると思います。これらのデータがインフレ抑制の進展を示せば、市場はそれを非常に歓迎すると思います。しかし、4月のPMIや他の指標が示す傾向が続けば、最初の利下げのタイミングが早くて2024年末になる可能性を市場が織り込む必要があり、この動きによって株価が動くものかと思います。
 アトランタ連銀のGDPNowは5月8日の最新の更新では、モデルのGDP数値が5月2日の改訂時の3.3%から4.2%に引き上げられました。5月15日の次回更新では、おそらく新たな改訂が行われると思いますが、米国経済は好調であることが引続き示されてくるものと思います。ただし、この改訂によって、2024年第1四半期の最初の発表値1.6%を下回るGDP数値になってくるようであれば、市場は再び利下げ期待を織り込み始めると思います。
 今後の経済データが発表されるにつれて、経済、金融政策、市場に影響があると思いますが、明らかな経済減速が見えるまでは、高金利が維持される方向のシナリオで見ていきたいと思います。

株式

 第1四半期の決算発表も終盤に差し掛かり、S&P 500企業は引き続き予想を上回る好業績を維持しています。S&P 500企業のうち、予想を上回る結果を発表した企業の割合と、その利益の超過幅はともに過去10年間の平均を上回っています。その結果、S&P 500の第1四半期のEPSは、四半期末時点よりも高くなっています。前年同期比では、S&P 500は2022年第2四半期以来の利益成長率を記録しています。
 S&P 500構成企業のうち92%が2024年第1四半期の決算を発表しました。このうち、78%が予想を上回るEPSを報告しており、これは5年平均の77%、10年平均の74%を上回っています。全体として、企業は予想を7.5%上回る利益を報告しており、これは5年平均の8.5%を下回りますが、10年平均の6.7%を上回っています。
 3月31日以降、通信サービス、金融、一般消費財、情報技術セクターの企業による好決算は、ヘルスケアセクターの2社のEPS予想下方修正によって部分的に相殺されたものの、この期間におけるS&P 500指数の利益成長率の上昇に最も大きく貢献しました。その結果、S&P 500指数の第1四半期の利益は、四半期末時点よりも高くなっています。第1四半期のブレンド(報告済みの企業の実際の結果と未報告の企業の推定結果を組み合わせたもの)利益成長率は、5月10日時点で5.4%であり、第1四半期末(3月31日)の3.4%と比較して上昇しています。もし5.4%が四半期の実際の成長率となれば、2022年第2四半期(5.8%)以来のよい年間利益成長率となります。
 11セクターのうち8セクターが、前年同期比で利益増を報告しており、通信サービス、公益事業、一般消費財、情報技術セクターがそれを牽引しています。一方、エネルギー、ヘルスケア、素材の3セクターは、前年同期比で利益の減少となっています。
 売上高に関しては、S&P 500構成企業のうち59%が予想を上回る実績を報告しており、これは5年平均の69%、10年平均の64%を下回っています。全体として、企業は予想を0.8%上回る売上高を報告しており、これも5年平均の2.0%、10年平均の1.4%を下回っています。3月31日以降、金融セクターの企業による好決算は、この期間におけるS&P 500指数の売上高成長率の上昇に最も大きく貢献しました。その結果、S&P 500指数の第1四半期の売上高は、四半期末時点よりも高くなっています。第1四半期のブレンド売上高成長率は、本日時点で4.1%であり、第1四半期末(3月31日)の3.5%と比較して上昇しています。もし4.1%が四半期の実際の売上高成長率であれば、14四半期連続の増収となります。
 8つのセクターが、前年同期比で売上高の増加を報告しており)、通信サービスと情報技術セクターがそれを牽引しています。一方、3つのセクターが前年同期比で減収を報告しており、公益事業セクターが最も減少しています。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第2四半期、第3四半期、第4四半期の利益成長率をそれぞれ9.3%、8.4%、17.4%と予想しています。2024年通年では、アナリストは11.1%の利益成長を予想しています。
 将来12ヶ月の株価収益率(P/E)は20.4倍で、5年平均(19.1倍)と10年平均(17.8倍)を上回っています。
 来週は、S&P 500企業のうち7社(うちダウ30構成銘柄3社)が第1四半期の決算発表を予定しています。

来週の主な決算発表(予定)

5/13(月):
<寄付き前>Paysafe (PSFE)
<引け後> American Healthcare REIT (AHR)
5/14(火):
<寄付き前>Home Depot (HD), Jack in the Box (JACK)
<引け後>Prestige Consumer (PBH)
5/15(水):
<寄付き前>Monday.com (MNDY)
<引け後>Cisco (CSCO)
5/16(木):
<寄付き前>Advanced Drainage Systems (WMS), Canada Goose (GOOS), Under Armour (UAA), Walmart (WMT)
<引け後>Applied Materials (AMAT), Ross Stores (ROST), Take-Two (TTWO)
5/17(金):
<寄付き前>-

米国の主な経済指標

5/13(月):
5/14(火):生産者物価指数(PPI)
5/15(水):小売売上高、消費者物価指数(CPI)、ニューヨーク連銀製造業景気指数
5/16(木):住宅着工件数・許可件数、フィラデルフィア連銀景況指数、新規失業保険申請件数、設備稼働率、鉱工業生産指数
5/17(金):

今週の着目点

 今週は、新たな経済指標が( なく市場が停滞した1週間を経て、重要な週となります。市場の動きが鈍かった一因として、経済指標発表が非常に少なかったことですが、今週は4月のPPI、CPI、小売売上高、住宅着工件数などの発表があり、状況が変わります。
 上述してもいますが、新たなデータが発表されるにつれ、市場が9月の利下げを期待する見方は薄れる可能性が高いと思われます。4月のPMI報告における価格支払データや、コモディティ価格やその他の価格圧力の上昇があることから、簡単にはインフレが下がってくることはないと思っています。PMIデータとCPIおよびPPIとの関係を考えると、これらの指数が今週の報告で大幅なインフレ沈下を示すようなことは発生しないのではないかと思います。
 石油価格は4月の上旬に今年の高値を付けましたがここ数週間で下落傾向となっています。原油価格は下げ傾向ではありますが、ガソリン価格は依然としてほぼ同等の水準で推移しておりインフレ低下への後押しにはまだ力不足かなと思います。石油在庫が増加していますが、イスラエルがハマスをラファから排除するよう新たに呼びかけていることで、特に停戦交渉の進展の兆候が薄れる中、地政学的な緊張が再燃し原油価格が動くことになる可能性もあります。
 CPIに戻ると、クリーブランド連銀のインフレ予測モデルは、4月のコアCPIが3.65%になると予想しており、これは前年同月比でしばらくぶりの低水準となります。この数値がCPIの実際の結果として発表されれば、昨年10月以来、3.8%から4.0%の範囲にとどまっていたデータから低下したことになります。それでも2%からはまだかなり離れており、すぐに利下げがされると考えるには時期尚早かと思います。
 CPIとPPIのデータ発表も通常とは異なっており、CPIの後にPPIが発表されるのではなく、4月のPPIデータが5月14日(火)に先に発表され、翌日に4月のCPIが発表されます。これは、CPIの発表直前に、4月のPPIデータからの推測として、市場が若干動く可能性もあります。
 先週の決算発表でのコメントでは、ここ数カ月の雇用創出と賃金データにもかかわらず、消費者は依然として消費先を選択していることが言われています。これは、4月の小売売上高の報告書の内容に影響を与える可能性があり、今週の小売の決算発表からもはっきりする可能性があります。また、金利がより長く高水準にとどまるため、住宅の購入には逆風ですが、現状は異常に低いことから今後の発表は前年同月比の比較は難しく、絶対数がどのように推移しているかを見ていくほうがよいかと思います。
 四半期決算発表のペースは、ピークは超えたため、今週はいくつかの大きな小売業の決算を見ていくことになります。この結果とガイダンスは、消費者支出の期待に新たな側面を加えることになるでしょう。来週は、ホーム・デポ(HD)とウォルマート(WMT)の決算発表から始まります。
ポートフォリオの観点からは、来週発表されるのはアプライド・マテリアルズ(AMAT)です。さらに、投資モザイクを更新する中で、他の決算報告や電話会議も引き続き確認していく予定です。


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