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米国市場:8/5週の振返りと24年8/12週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,344.16と前週比-0.04%で終了しました。NASDAQは16,745.30と前週比-0.18%で終了しました。
 先週の始めは市場にとって厳しいスタートとなりました。東京マーケットの混乱によって、円が急騰し円のキャリートレードを行っていた投資家も大きく傷ついたと思います。VIXは急上昇し、投資家は不安と恐怖に陥りました。しかし、S&P500とNASDAQは売られ過ぎの水準から反発し、週を終えた時点では小幅な下落にとどまりました。指数自体は反発はしていますが、出来高を伴って反発しているわけではないので投資家のセンチメントはまだ立ち直れていないものと考えています。Fear&Greedも8月5日につけた17から24までは回復してはいますがExtreme Fearとなっておりそれを裏付けているように思います。
 週末をはさんで状況を整理した結果、安心して出ていける状況かというと不透明感は増してきているように思います。一つに企業の業績ですが、S&P500の構成銘柄のうち先週までに91%が決算発表を終えた時点で、S&P500の2024年、2025年のコンセンサスEPS予想は下方修正されています。2024年のEPSは242.2、2025年は278.69となっています。消費者の選別意識が高まっているという企業からの方向を受けて、今回の決算シーズンは小売業やその他の消費者向け企業に焦点が移りつつあります。今週は小売企業が多く決算発表を行いますので、この結果を受けて更に予想EPSが下方修正される可能性はあります。その結果、2024年下半期のEPS予想が引き続き悪化すれば、投資家は再び市場のPERに疑問を抱き始める可能性があります。ただ、企業業績自体は21年第4四半期以降最も大きな伸びを見せており、大きな減速がみられているわけではないと思っています。
 FRBの利下げに対する市場の期待も、行き過ぎていることを示唆する水準になっています。CME FedWatchツールの最新データによると、市場の利下げ期待は年末時点で4.25~4.5となっており、FRBの残り3回の政策会合で合計100ベーシスポイントを下げることを期待しています。FRBの9月政策会合後に、50ベーシスポイントの利下げが行われると市場が考えていることを意味していると考えます。これは、7月の雇用統計が思ったよりも悪く、非農業部門雇用者数が11.4万人と少なかったことから大きな利下げが必要だと考えられたことと思います。しかし、今週の月曜日に示されたISM非製造業景気指数は51.4と先月より若干回復しており、中でも新規受注が大きく回復していました。経済はまだ引続き問題ないと解釈していいと思っています。また、この結果、アトランタ連邦準備銀行のGDPNowは、8月8日時点で当四半期について2.9%に上方修正されており、これは経済が転換の危機にあることを示唆していません。また、仮にリセッション入りするのであれば、株式市場の下げ幅は、7月の下げでは足りずもっと下げる必要がありますが今のところそのような状況にはなっていません。従って、市場が予想している利下げ幅よりもより少ない利下げになる、もしくは9月も見送られるかもしれません。
 大統領選挙も、カマラ・ハリスが候補者になって依頼、与党である民主党が大きく巻き返してきており、過去の大統領選挙のあった年の株式相場のアノマリーは、野党である共和党が勝つ場合、1月、2月、3月はマイナス、7月はプラスとなっていますが、これまでの結果は、むしろ逆の結果となっており与党が勝つ可能性を相場は示しているように思えます。まだ、リアルポリティークの予想では5分5分の状態ではありますが、民主党が勝つ可能性が高くなっているようにも思います。この場合は、8月~12月にかけて株式相場は高いとアノマリーでは示しております。
 これらの個々の内容を吟味してくると、市場の期待は相反する内容を示しているように思います。市場は利下げはしてほしいが、経済指標からはリセッションが来るとはあまり考えていない。そのため何かが間違っており、それがはっきりした時点で一時混乱するかもしれませんが、方向性は明確化されるものと思います。
 今週は経済データの発表と小売企業の決算発表が始まるため、市場の懸念が注目される可能性があります。ボラティリティ指数(VIX)も低下しましたが、過去数ヶ月と比較すると依然として高止まりしています。恐怖&強欲指数も「極度の恐怖」の領域にとどまっています。カレンダーを見ると、今後数週間は夏の休暇期間ですので、一方向に相場が動く傾向が高まりますが、それぞれの指標をしっかりとみていくことで今後の動きを予想していきたいと思います。

株式市場

 第2四半期の決算シーズンも終盤に差し掛かり、S&P 500企業の業績は、期待値に対して引き続き好悪混在の状況です。
 ポジティブな面としては、予想を上回る利益を報告したS&P 500企業の割合は平均を上回っています。一方、ネガティブな面としては、収益サプライズの規模は平均を下回っています。しかしながら、全体としては、第2四半期の利益は先週時点および四半期末時点と比較して増加しています。また、2021年第4四半期以来、最も高い前年同期比増益率を記録しています。
 これまでにS&P 500企業の91%が2024年第2四半期の決算を発表しました。このうち、78%が予想を上回るEPSを報告しており、これは過去5年平均の77%、過去10年平均の74%を上回っています。企業全体では、予想を3.5%上回る利益を報告していますが、これは過去5年間の平均8.6%、過去10年間の平均6.8%を下回っています。
 過去1週間では、コミュニケーションサービスセクターの1社のネガティブなEPSサプライズが、複数のセクター(ヘルスケアと金融が牽引)の企業によるポジティブなEPSサプライズによって部分的に相殺され、全体的な増益率はわずかに減少しました。6月30日以降、金融、一般消費財、情報技術セクターの企業によるEPS推定値の上方修正とポジティブなEPSサプライズは、コミュニケーションサービスとエネルギーセクターの企業のEPS推定値の下方修正とネガティブなEPSサプライズによって部分的に相殺され、全体的な増益率の増加に最も貢献しています。
 その結果、第2四半期の利益は先週の終わりと比較すると減少していますが、四半期末と比較すると依然として増加しています。第2四半期のブレンド(報告済みの企業の実際の結果と未報告の企業の推定結果を組み合わせたもの)増益率は本日時点で10.8%で、先週の11.4%、第2四半期末(6月30日)の8.9%と比較すると増加しています。もし10.8%が今四半期の実際の成長率だとすると、2021年第4四半期(31.4%)以来、同指数が報告した中で最も高い前年同期比増益率となります。また、同指数にとって4四半期連続の前年同期比増益となります。
 11セクターのうち9セクターが第2四半期の前年同期比で成長を報告しています。このうち、公益事業、情報技術、金融、ヘルスケア、一般消費財の5セクターは2桁成長を記録しています。一方、素材セクターを中心に2セクターは減益となっています。
 売上高に関しては、S&P500企業の59%が予想を上回る実績を報告しており、これは過去5年間の平均69%、過去10年間の平均64%を下回っています。企業全体では、予想を0.5%上回る売上高を報告しており、これは過去5年間の平均2.0%、過去10年間の平均1.4%を下回っています。もし0.5%が今四半期の最終的な数字だとすると、2019年第4四半期(0.5%)以来、同指数が報告した中で最も低い売上高サプライズ率となります。
 過去1週間では、複数のセクターの企業が報告したポジティブおよびネガティブな売上高サプライズが互いに相殺され、全体的な売上高成長率は変化しませんでした。6月30日以降、金融セクターとヘルスケアセクターの企業による売上高サプライズが、全体的な売上高成長率の増加に最も貢献しています。
 その結果、第2四半期の売上高は先週の終わりと比較すると横ばいですが、四半期末と比較すると依然として増加しています。第2四半期のブレンド売上高成長率は、本日時点で5.2%で、先週の5.2%、第2四半期末(6月30日)の4.7%と比較すると増加しています。
 もし5.2%が今四半期の実際の成長率だとすると、2022年第4四半期(5.4%)以来、同指数が報告した中で最も高い売上高成長率となります。また、同指数にとって15四半期連続の増収となります。
 情報技術、エネルギー、コミュニケーションサービスセクターが牽引する形で、10セクターが増収となっています。一方、素材セクターは唯一減収となっています。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第3四半期と第4四半期の増益率(前年同期比)をそれぞれ5.4%と15.7%と予想しています。2024年通年の増益率は10.2%と予想されています。
 予想PER(株価収益率)は20.2倍で、過去5年間の平均(19.4倍)と過去10年間の平均(17.9倍)を上回っています。しかし、このPERは、第2四半期末(6月30日)に記録された予想PER21.0倍よりは低くなっています。
 来週は、S&P500企業9社(ダウ30構成銘柄3社を含む)が第2四半期決算を発表する予定です。(Source:Fact Set)

来週の主な決算発表(予定)

8/12(月):
<寄付き前>Ballard Power (BLDP), Monday.com (MNDY).
<引け後>
8/13(火):
<寄付き前>Home Depot (HD).
<引け後>
8/14(水):
<寄付き前>Brinker (EAT), Cardinal Health (CAH), UBS AG (UBS).
<引け後>Cisco (CSCO), Lumentum (LITE).
8/15(木):
<寄付き前>Alibaba (BABA), Walmart (WMT).
<引け後>Applied Materials (AMAT).
8/16(金):
<寄付き前> Flower Foods (FLO), Buckle (BKE).

米国の主な経済指標

8/12(月):
8/13(火):生産者物価指数(PPI)
8/14(水):消費者物価指数(CPI)
8/15(木):小売売上高、新規失業保険申請件数、設備稼働率、鉱工業生産指数
8/16(金):住宅建築許可件数・着工件数、ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 先週は新たな経済データが少ない週でした。しかし、今週はインフレ、消費者支出、住宅に関する主要な報告があり経済の状況がよくわかるようになっています。特に今週はCPIが発表されます。現時点でのコンセンサス予想は、前年比3.0%、前月比0.2%のプラスとなっておりインフレは落ち着いていますが、若干加速する可能性もあると予想しています。この予想が正しければ、FRBの利下げ回数は少なくなると考えるのが普通です。従って、このデータによって、市場が期待している今年度複数回の利下げ期待を確実にするか、打ち砕くかことになるかもしれません。この状況は今週の市場のボラティリティを高める可能性があると思ってます。
 今年は9月、11月、12月の3回のFOMC会合が残っているため、7月のインフレデータが予想よりも高ければ、FRBが9月の会合で50ベーシスポイントの利下げを実施するという現在の市場コンセンサスに疑問が生じる可能性が高いです。先週、一部のウォール街のストラテジストは景気後退確率を25%~35%に引き上げましたが、月曜日に発表された7月のISM非製造業景気指数は、経済が加速していることを示していました。
 これは、来週発表される7月の小売売上高、鉱工業生産、住宅着工件数報告書に、これまで以上に大きな注目が集まる可能性があることを意味します。アトランタ連邦準備銀行のGDP予測にも反映されますので、この数字がどのように動くかにも注目していきたいです。8月8日時点では四半期で2.9%となっており、景気後退が差し迫っていることを示唆する数字ではありませんが、比較的少数のインプットを用いて計算されたものでもあります。データが揃えば、7月のインフレと経済の速度についてより明確な予測が得られます。FRBが次の政策決定を下す前に、まだ8月と9月のデータが残っており、経済指標に一喜一憂する相場になりそうです。
 投資家のセンチメントは回復していませんが、総合的に勘案すると方向性は上を示しており、強気で行っていいのではないかなと考えています。


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