見出し画像

米国市場:4/29週の振返りと24年5/6週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,127.79と前週比+0.55%で終了しました。NASDAQは16,156.33と前週比+1.43%で終了しました。

・パウエル議長の声明、4月雇用統計、アップル決算などが市場を動かす

 先週は4月の月末と5月の月初の週でした。4月はS&P500は-3.97%、NASDAQは-4.51%とさげており、今年の上昇分をほぼ帳消しするような形となりました。5月も不安定なスタートとなり、パウエル議長の水曜午後の声明後、市場は大きく上昇しましたが、引けにかけて大きく下げるという展開となりました。インフレ率が2%目標に向かって持続的に低下するとの確信が得られるまで、中央銀行は利下げは適切でないと考えていると述べたことが影響していると考えています。
 直近の統計データは、PCEが市場予測を上回っていたなど、FRBがインフレ圧力の低下の確信を得るまでにより長い時間を要することを示唆しています。しかし一方で、パウエル氏は金融政策は十分に抑制的であり、これ以上の利上げの必要性はないと述べ、市場への安心材料となりました。
 5月2日(木)の夜から3日(金)にかけて、アップルが決算発表をしており市場予想を上回るものでした。このところアップルは市場予想を下回りかつ、ゼロ成長が続いていたため市場にとって一つの安心材料となったと思います。クアルコムの決算も比較的良かったこともあり、スマホ市場も底打ちされたと市場は考えていると思います。
 4月の雇用統計では過去6ヶ月間で最低水準の雇用創出となりました。さらに失業率が3.9%と上昇し、平均時給の伸びも7¢と賃金上昇圧力も低下したように見受けられました。カリフォルニア州におけるファーストフード業界の新たな最低賃金の影響を反映しているものですが、インフレ退治の意味合いでは明るい兆候となると思います。もし、カリフォルニア州での引き上げをこの統計から除去するした数字にすると、雇用報告における平均時給の前年比上昇率はさらに低くなったともいわれています。

・10年国債利回りが4.7%から4.5%に小幅低下

 年初来じりじりと、上昇していた10年国債利回りが先週後半に4.7%から4.5%付近にまで小幅に低下し、上昇トレンドが終わったようにみえたことも市場にとって安心材料になったと思います。またCME Fed Watchツールは9月の利下げはあると織り込み始めたことも上昇につながったことと思います。しかし、今年は大統領選が11月5日にあることを考えると、9月の利下げは以前も述べた通り現職大統領に対してのプレゼントとも受けとられかねないため、9月にFRBが利下げを発表するということは現在の水準のデータが続く限りかなり低いものと考えたほうが妥当だと思います。このため、市場は利下げの時期をめぐって右往左往するとは思いますが、年末に1回もしくは2025年にずれ込むと予想しておくのが良いと思います。

・FRBの理事たちの発言が今後の焦点

 雇用統計で少しインフレ圧力の弱まりの兆候がすこしみえましたが、一つだけのデータであるため、根拠としては乏しいです。来週は新たな経済データの発表が乏しいことを考えると、連邦準備制度理事会(FRB)関係者の発言が今後数日の焦点となると思います。
 企業の決算発表はS&P500の構成企業のうち80%が決算発表を終えており、今週も56社が発表します。今後は決算を手掛かりにした動きも徐々に乏しくなります。

株式

 2024年第1四半期の現時点でのS&P 500企業の業績は、引き続き予想を上回っています。 S&P 500銘柄のうち、予想を上回る好決算を発表した企業の割合と、その上振れ幅はともに10年平均を上回っています。結果、今週は、前週末および前四半期末と比較して、高い第1四半期の結果となっています。S&P500は2022年第2四半期以来、通年ベースでの最高の収益成長率を示しています。
 全体として、S&P 500を構成する企業のうち80%が2024年第1四半期の決算発表をしています。このうち77%の企業が予想EPSを上回る決算を報告しており、5年平均(77%)と同じ水準ですが、10年平均(74%)を上回っています。全体として予想を7.5%上回る収益を報告しており、これも5年平均(8.5%)を下回っていますが、10年平均(6.7%)を超えています。
 過去1週間の指数全体の成長率の上昇に最も寄与したのは、(ヘルスケア・セクターと一般消費財セクターを中心に)複数セクターの企業から報告された好決算です。3月31日以降、通信サービス、金融、工業、一般消費財、情報技術セクターの企業から報告された好決算による影響が大きく、ヘルスケア・セクターの2社でEPS予想が下方修正された影響がある程度相殺され、この期間の同指数の上昇要因となっています。
 結果として、今週までの第1四半期の決算は、前週末および前四半期末との比較で増加しています。ブレンデッド(決算発表済み企業の実績と未発表企業の予想実績を組み合わせた)第1四半期の収益成長率は、先週の3.5%、第1四半期末(3月31日)の3.4%に対し、現在は5.0%となっています。もし、5.0%が今期の数字となれば、2022年第2四半期(5.8%)以来の高成長となります。
 セクター別に見ると、通信サービス、公益事業、一般消費財、情報技術がリードする形で、11セクター中8セクターが前年比で収益を伸ばしています。一方で、エネルギー、ヘルスケア、素材の3セクターでは前年比で収益が減少しています。
 売上高に関しては、S&P 500企業の61%が予想を上回る実績を報告していますが、これは5年平均(69%)と10年平均(64%)を下回っています。総合では、予想を0.8%上回って報告されており、これもまた5年平均(2.0%)、10年平均(1.4%)を下回っています。
 金融セクター主導の好調な収益が、ヘルスケアの不調によって部分的に相殺されつつも、全体としてはプラスとなっています。 5月3日時点の第1四半期の売上高は、前週末および前四半期末と比較して増加しています。第1四半期のブレンド売上高成長率は、前週の4.0%、第1四半期末(3月31日)の3.5%と比較して、現時点では4.1%となっています。
 第1四半期の実際の売上高成長率が4.1%となった場合、同指数としては14四半期連続の収益成長となります。
 今後の見通しとしては、アナリストは2024年第2四半期、第3四半期、第4四半期の収益成長率(前年比)をそれぞれ9.6%、8.4%、17.1%と予想しています。通年では、アナリストは2024年の収益成長率を11.0%と予想しています。
 フォワード12ヶ月P/Eレシオは19.9で、5年平均(19.1)と10年平均(17.8)を上回っています。**しかし、第1四半期末(3月31日)に記録されたフォワードP/Eレシオ21.0よりは低下しています。
 今週は、S&P 500銘柄から56社(うちダウ30構成銘柄1社を含む)の第1四半期決算発表が予定されています。

来週の主な決算発表(予定)

5/6(月):
<寄付き前>TreeHouse Foods (THS), Tyson Foods (TSN),
<引け後>Axon (AXON), Coty (COTY), International Flavors & Fragrances (IFF), Palantir (PLTR), Simon Properties (SPG).
5/7(火):
<寄付き前>Bandwidth (BAND), BP (BP), Duke Energy (DUK), GlobalFoundries (GFS), Jacobs Engineering (J), Surgery Partners (SGRY), Walt Disney (DIS),
<引け後>Astera Labs (ALAB), Dutch Bros (BROS), Electronic Arts (EA), Inter Parfums (IPAR), Redfin (RDFN), Veeco Instruments (VECO).
5/8(水):
<寄付き前>Affirm (AFRM), Emerson (EMR), Kennametal (KMT), Radware (RDWR),
<引け後> Airbnb (ABNB), Cheesecake Factory (CAKE), The Trade Desk (TTD).
5/9(木):
<寄付き前>Ceva (CEVA), GoodRx (GDRX), Hanesbrands (HBI), Papa John’s (PZZA), Roblox (RBLX), Tapestry (TPR),
<引け後>Akami (AKAM), AMN Healthcare (AMN), Blink Charging (BLNK), Dropbox (DBX), indie Semiconductor (INDI), Insulet (PODD), Rackspace Technology (RXT), Synaptics (SYNA), Trex (TREX).
5/10(金):
<寄付き前>Construction Partners (ROAD), Digital Ocean (DOCN).

米国の主な経済指標

5/6(月):
5/7(火):
5/8(水):
5/9(木):新規失業保険申請件数
5/10(金):ミシガン大学消費者信頼感指数

今週の着目点

 先週は経済データの発表が多くまた、FOMCも行われいました。今週は、経済データの発表は少ない状況ではありますが、FRBの理事たちが講演活動を行うことで金利の方向性が明確化されるものと考えています。理事たちのコメントを精査するためにも、5月1日のパウエル議長の記者会見の様子を振り返ると、声明では年内の利下げの可能性が低下していることが示唆されておりました。長期金利が下がらない状態が続くという大きなシナリオに変化はありませんが、その後に発表された5月3日(金)の4月雇用統計から雇用増加の鈍化および7¢という賃金の上昇圧力の緩和に対して、FRB理事たちが4月に上昇した価格指数データをどのように位置づけるのかを確認していく必要があると思います。
 今週も短期調整から脱出したサインが出ることを確認する週になりそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?