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米国市場:7/15週の振返りと24年7/22週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,505.00と前週比-1.97%で終了しました。NASDAQは17,726.94と前週比-3.65%で終了しました。
 先週の株価は、週初めには上昇しましたが、最終的には前週比マイナスで終了しています。先週のレポートで買われすぎの状態である旨を指摘していますが、これまでの企業の決算発表の結果から、期待値以上の結果とはなっていないこともあり、相場が夏休みに入ったものと考えています。この結果、暫くの間相場は調整するものと見ています。S&P500とNasdaqのパフォーマンスを、均等加重S&P500と小型株中心のRussell 2000と比較すると、市場のローテーションが起きていることがわかります。CME Fed Watch Toolを確認すると、市場は年内3回の利下げを見込んでいるため小型株へ 物色の矛先が向いていると考えられます。
 先週の下げでS&P500のPERは21.2へ若干下がりましたが、 過熱感はわずかに低下した程度です。センチメントの指標の一つである、Fear & Greed IndexがNeutralの状態を示しており、市場が底入れしたというにはまだ早いと考えています。
 先週発表されたASML Holding(ASML)やTaiwan Semiconductor(TSM)などの四半期決算を発表しており、コンセンサス予想を上回る結果となっており、大手ハイテク企業の見通しは依然として明るいことがわかりました。しかし、売上高成長率は落ちてきており、これらの企業の株価は今後は上がりにくいケースが増えてくるのではないかと考えています。 今週は、先週よりも多くの企業が決算発表を行い、Alphabet (GOOGL)などのAI関連企業も決算発表を行います。AIブームの行方、そして2024年四半期の予想EPS成長率がどのように変化するかに注目しています。企業の決算発表が始まったばかりですので、現時点でEPS成長率が下がっていることについて言及するのはまだ早いかもしれませんが、今後2週間で多くの企業が決算発表を行いますので今後のEPS成長率についても、傾向がわかってくると思います。PEPやCAGの決算からは消費者の価格へ厳しい目が向けられていることが明らかとなっており、Visa(V)の決算から消費者動向についてさらなる見地が得られると思います。DHIが好決算を出した際に、大きく値を上げていましたので、投資家のアニマルスピリットは消えていないように見ています。
 上述しておりますが、CME Fed Watch Toolでは9月、11月、12月と年3回の利下げを市場参加者が高い確率で見込んでいます。トランプ氏が9月の利下げについて牽制していたように9月に利下げを行うことはFRBの政治色を強めてしまいますので、経済が大きく失速していることが明らかにならない限り、FRBは利下げを行いたくないと考えていると思います。しかし、市場は9月の利下げを大きく織り込んでおり、7月の会合で9月の利下げの可能性がない主旨の発言がでると市場が大きく動揺する可能性が高いです。
 19日(金)には、クラウドストライク(CRWD)のセキュリティソフトのアップデートの不具合により世界的なシステムダウンが発生しています。ITセクターに関連した大きな事件ですので、地合いとしてはあまりよくない状況だと考えられます。
 全体として、いろいろな憶測が入り乱れて錯綜している状況であるため、一つ一つのニュースで相場が上下に大きく動くことが予想されます。そんな中は無理に出動せず、今週、来週に続々と発表される重要な企業の決算について、その結果を確認しカンファレンスコールでのトップのコメントを冷静に分析して市場の方向性を見極める時期だと考えられます。
 

株式市場

 S&P500の第2四半期決算シーズンは、現時点では好調とは言えない状況です。ポジティブな収益サプライズを報告したS&P500企業の割合は平均を上回っているものの、収益サプライズの規模は平均を下回っています。セクター別では、金融セクターの収益が大幅に増加している一方で、エネルギーセクターの収益が大幅に減少しており、これらが相殺し合っています。その結果、全体として、第2四半期の利益は先週末と四半期末時点と比較して増加しています。また、2021年第4四半期以来、最も高い前年同期比増益率を記録しています。
 これまでにS&P500企業の14%が2024年第2四半期の決算を発表しました。このうち80%が予想を上回るEPSを報告しており、これは過去5年間の平均77%、過去10年間の平均74%を上回っています。企業全体では、予想を5.5%上回る利益を報告していますが、これは過去5年間の平均8.6%、過去10年間の平均6.8%を下回っています。
 先週、金融セクターの企業が報告したポジティブなEPSサプライズが、エネルギーセクターの企業のEPS推定値の下方修正によって部分的に相殺されましたが、これまでのところ全体的には増益率は上昇しています。この結果、第2四半期の利益は先週末と四半期末時点と比較して増加しています。第2四半期のブレンド(報告済みの企業の実際の結果と未報告の企業の推定結果を組み合わせたもの)増益率は19日時点で9.7%で、先週の9.1%、第2四半期末(6月30日)の8.9%と比較して増加しています。
 もし9.7%が今四半期の実際の成長率だとすると、2021年第4四半期(31.4%)以来、同指数が報告した中で最も高い前年同期比増益率となります。また、同指数にとって4四半期連続の前年同期比増益となります。
 11セクターのうち8セクターが増収(または増収見込み)となっています。この8セクターのうち、コミュニケーションサービス、ヘルスケア、情報技術、金融の4セクターは2桁成長を記録しています。一方、素材セクターを中心に3セクターは減益となっています。
 売上高に関しては、S&P500企業の62%が予想を上回る実績を報告しており、これは過去5年間の平均69%、過去10年間の平均64%を下回っています。企業全体では、予想を1.7%上回る売上高を報告していますが、これは過去5年間の平均2.0%を下回るものの、過去10年間の平均1.4%を上回っています。
 先週は、エネルギーセクターの企業の売上高見通しの下方修正は、金融セクターの企業の売上高の上昇によって部分的に相殺され、この期間における全体的な売上高成長率はわずかに減少しています。その結果、第2四半期の売上高成長率は先週末と比較して減少していますが、四半期末と比較すると横ばいとなっています。第2四半期のブレンド売上高成長率は本日時点で4.7%で、先週の4.8%、第2四半期末(6月30日)の4.7%となっています。
 もし4.7%が今四半期の実際の成長率だとすると、同指数にとって15四半期連続の増収となります。情報技術セクターを中心に、9セクターが増収(または増収見込み)となっています。一方、素材セクターを中心に2セクターは減益となっています。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第3四半期と第4四半期の増益率(前年同期比)をそれぞれ7.4%と17.0%と予想しています。2024年通年では、アナリストは11.0%の増益率(前年同期比)を予想しています。
 予想PER(株価収益率)は21.2倍で、過去5年間の平均(19.3倍)と過去10年間の平均(17.9倍)を上回っています。このPERは、第2四半期末(6月30日)に記録された予想PER21.0よりも高くなっています。
 来週は、S&P500企業138社(ダウ30構成銘柄7社を含む)が第2四半期決算を発表する予定です。(Source Fact Set)

来週の主な決算発表(予定)

7/22(月):
<寄付き前>SAP SE (SAP)
<引け後>Crown Castle (CCK), Nucor (NUE), NXP Semiconductor (NXPI).
7/23(火):
<寄付き前>Albertsons (ACI), HCA (HCA), Lockheed Martin (LMT), Paccar (PCAR), PulteGroup (PHM), Quest Diagnostics (DGX), UPS (UPS)
<引け後>Alphabet (GOOGL), Tesla (TSLA), Visa (V),
7/24(水):
<寄付き前>AT&T (T), Silicon Labs (SLAB)
<引け後>IBM (IBM), KLA Corp. (KLAC), ServiceNow (NOW), United Rentals (URI), Waste Management (WM).
7/25(木):
<寄付き前>Comcast (CMCSA), Dover (DOV), Dow (DOW), Honeywell (HON), Keurig Dr Pepper (KDP), Lazard (LAZ), Masco (MAS), Northrop Grumman (NOC), Pool (POOL), STMicroelectronics (STM)
<引け後>Deckers Outdoors (DECK), H&E Equipment (HEES), Juniper Networks (JNPR), Roku (ROKU). Terex (TEX).
7/26(金):
<寄付き前>3M (MMM), Colgate Palmolive (CL), Sensient (SXT).

米国の主な経済指標

7/22(月):
7/23(火):中古住宅販売件数、リッチモンド連銀製造業指数
7/24(水):新築住宅販売件数
7/25(木):耐久財受注、新規失業保険申請件数
7/26(金):PCE、個人所得・支出

今週の着目点

 19日(金)に発生したクラウドストライクのセキュリティソフトのアップデートによる大規模なIT障害の余波が今週更に明らかになってくると思います。また、民主党大統領候補に関する動向も市場を動かすと思います。21日の午後にバイデン大統領の撤退表明が行われ、後任候補として、カマラ・ハリス氏の支持のニュースがでています。もともと、バイデン大統領の撤退については、本人は継続の意向を示してましたので驚きではありますが、民主党内では公然と撤退を求める声が高まっていましたので、ポジティブに捉える動き強いのではないかと思います。しかし、民主党大会が来月中旬(8月19日~22日)に迫っていますので候補者選びの意味合いでは、紆余曲折が予想されます。しかし、11月5日の投票日まで100日以上あるため、今後の情勢は変化する可能性があります。選挙が近づき、結果の見通しが明確になるまでは、引続き注目していきたいです。
 また、今週は、FRBが7月30日~31日の政策会合を控えブラックアウト期間に入るため、FRB関係者の発言はありません。政策会合までの間に、7月PMI速報値と6月PCE価格指数が発表されます。経済の状況、インフレ、雇用について考え、市場が予想する景気減速と複数回の利下げをされるようなデータとなっているか確認していく必要があります。今年初めは6回~7回の利下げ予想をしていた市場ですので、予想通りに利下げされるとは考えにくいのですが、シナリオの検証は行っていくべきかと思います。
 建設関連株については、6月新築住宅販売と中古住宅販売のデータを掘り下げてみていくべきかと思います。消費者向け銘柄については、消費支出が国内経済の大部分を占めるため、6月の個人所得データとPCEの数字を並べて比較し、実質賃金の伸びが継続していることを確認したいです。
 今週は、Alphabet(GOOGL)、ロッキード・マーティン(LMT)、ServiceNow(NOW)、ウェイスト・マネジメント(WM)などが決算発表をします。どちらも好調が予想されますが、結果とガイダンスに注目して行きたいです。ロッキードについては、いくつかの大型契約を獲得したことから、受注残高が増加すると予想されていますが、2024年後半の焦点はF-35の出荷再開時期が焦点となると思います。Alphabetの決算はAI関連銘柄として、GoogleCloudの伸びがどのように推移しているかに注目をしていきます。クラウドの売上高の伸び、マージンに陰りがないかが焦点になるかと思います。もう一つの焦点は、これまではAIが注目されてきましたが、先日の障害でセキュリティについてどのよう 対策を講じるのかについて経営陣のコメントに注目したいです。
 他にも、消費者関連ではVisa、半導体関連ではNXPなどの結果、コメントから今後に控える企業の決算発表、市場の動向に対して重要な洞察となると思います。


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