見出し画像

米国市場:24年9/16週の振返りと9/23週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,702.55と前週比1.36%で終了しました。NASDAQは17,948.32と前週比1.49%で終了しました。
 先週の株価は、S&P500指数が19日(木)には終値で5713.64と過去最高値を記録し、7月中旬より続いてきた夏休み相場の終わりを告げるサインかもしれません。このきっかけとなったのは、FRBによる50ベーシスポイント(0.5%)の利下げがあると思います。利下げはあるものの、伝統的な25ベーシスポイントの小幅な利下げを予想していましたが、すでに観測記事が先々週から出ており、市場に取ってはノーサプライズであったと思います。さらに、FRBは市場の期待に応え、さらなる利下げの可能性を示唆しており、ドットチャートでは、今年度中にFFレートが4.25~4.5%に達するという予想が多く示されました。つまり、今後FRBが小幅に利下げをするのであれば、11月と12月のFOMCで0.25%ずつ利下げを予定することになります。25年度はもう1%程度下がることをドットチャートでは見込んでいます。
 FRBは利下げ局面に入りましたが、今後の利下げのペースは経済データ次第だと思いますので、引き続きこのデータには注意を払う必要があります。
 また、金曜日のトリプルウィッチングであったにもかかわらず、ボラティリティ指数(VIX)は週を通して低下しました。この結果、主要な市場指数はすべて上昇して取引を終えています。結果として、S&P 500とナスダックは過去1か月でプラス圏に復帰しており、少なくとも今のところ、9月は市場が下げやすいという例年のアノマリーは今年は当てはまらない可能性を示しています。ただし、市場の状態は依然として買われ過ぎであり、S&P 500のバリュエーションは拡大していることを認識しておくべきかと思います。9月四半期の決算シーズンが間もなく始まることに加えて、今後数週間で市場の注目を集める可能性のある気になるニュースもいくつかあります。例えば、東海岸と湾岸の港を麻痺させる可能性のある港湾労働者のストライキ、政府閉鎖の可能性、2024年の大統領選挙、そして継続する地政学的緊張が含まれます。
 2024年の大統領選挙に関しては、カマラ・ハリス氏が徐々に優勢になってきております。経済が好調である場合は、現職大統領の政党が勝つ確率が高く、また民主党が勝つことについて、市場は好感すると思います。選挙は水物ですので、今後も引続き観察することは必要かと思います。しかし、今ある材料で判断するのであれば、大きな下げ要因は見当たらないため、9月、10月に大きな下げはないと考えています。大統領選の2週間前ぐらいから大勢がはっきりしてくるにつれて徐々にあがり始め、11月~1月のラリーとなるのではないかと考えています。

株式市場

 第3四半期末が近づく中、アナリストと企業の両方が第3四半期の利益見通しを平均的な水準で下方修正しています。その結果、第3四半期のS&P 500の推定利益は、四半期初めの予想と比較して減少しています。推定利益は減少したものの、同指数は5四半期連続で前年同期比増益を報告する見通しです。アナリストらも、同指数が2024年第4四半期以降再び2桁の増益を報告すると引続き考えています。
 S&P 500構成銘柄の推定EPSに関しても、アナリストは2024年第3四半期の推定EPSをほぼ平均的な水準で引き下げました。1株当たりベースでは、第3四半期の推定利益は6月30日以降3.2%減少しました。この減少幅は5年平均(-3.3%)と10年平均(-3.3%)をわずかに下回っています。
 第3四半期のガイダンスに関しては、2024年第3四半期にネガティブなEPSガイダンスを発表したS&P 500企業の数は平均的な水準内です。現時点では、同指数の110社が2024年第3四半期のEPSガイダンスを発表しています。これらの企業のうち、60社がネガティブなEPSガイダンスを、50社がポジティブなEPSガイダンスを発表しています。2024年第3四半期にネガティブなEPSガイダンスを発表したS&P 500企業の数は、5年平均の57社と10年平均の62社の間です。しかし、ネガティブなEPSガイダンスを発表したS&P 500企業の割合は55%(110社中60社)であり、5年平均の58%と10年平均の62%を下回っていることには留意すべきです。
 アナリストによる利益推定値の下方修正と企業によるネガティブなEPSガイダンス発表により、2024年第2四半期の推定(前年同期比)利益成長率は、第3四半期初めに比べて今日では低くなっています。本日現在、S&P 500は(前年同期比)4.6%の増益を報告する見通しですが、6月30日時点での推定(前年同期比)利益成長率は7.8%でした。
 もし4.6%が実際の四半期成長率であれば、それはこの指数にとって5四半期連続の前年同期比増益となります。11セクターのうち8セクターが増益を報告する見通しです。これらの8セクターのうち、情報技術、ヘルスケア、コミュニケーションサービスの3セクターは2桁成長を遂げると予測されています。一方、3セクターは前年同期比で減益となる見通しです。これらの3セクターのうち、エネルギーセクターは2桁の減益となる見通しです。
 売上に関しては、アナリストらも四半期中に推定値を下方修正しました。本日現在、S&P 500は(前年同期比)4.7%の増収を報告する見通しですが、6月30日時点での増収予想は4.9%でした。もし4.7%が実際の四半期増収率であれば、それはこの指数にとって16四半期連続の増収となります。
 情報技術セクターとコミュニケーションサービスセクターが主導する形で、10セクターが増収を報告する見通しです。一方、エネルギーセクターは前年同期比で減収となる見通しで、唯一のセクターです。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第4四半期、2025年第1四半期、2025年第2四半期の(前年同期比)利益成長率をそれぞれ15.0%、14.6%、13.7%と予想しています。2024年通年では、アナリストは(前年同期比)10.0%の増益を見込んでいます。2025年通年では、アナリストは(前年同期比)15.2%の増益を予測しています。
 今後12ヶ月のP/E(株価収益率)は21.4倍で、5年平均(19.5倍)と10年平均(18.0倍)を上回っています。このP/E比率は、第2四半期末(6月30日)に記録された将来P/E比率21.0も上回っています。(Source:Factset)

来週の主な決算発表(予定)

9/23(月):
<寄付き前>-
<引け後>-
9/24(火):
<寄付き前> AutoZone (AZO) ,
<引け後>KB Home (KBH) , Progress Software (PRGS)
9/25(水):
<寄付き前>Cintas (CTAS)
<引け後>Jefferies (JEF) , Micron (MU)
9/26(木):
<寄付き前>Accenture (ACN) , CarMax (KMX)
<引け後>Costco (COST)
9/27(金):
<寄付き前>-

米国の主な経済指標

9/23(月):
9/24(火):S&Pケースシラー住宅価格、
9/25(水):新築住宅販売件数
9/26(木):耐久財受注、新規失業保険申請件数
9/27(金):PCE

今週の着目点

 アトランタ連邦準備銀行のGDPNowモデルの今四半期の予測は2.9%となりました。次の更新は来週の終わり、9月27日金曜日です。来週は、9月の経済状況を初めて具体的に把握することから始まり、個人所得と支出、そしてFRBが好むインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数の最新情報で締めくくられます。その間には、8月の住宅市場と工業市場の動向に関する詳細なデータも発表されてきます。
 23日(月)にS&Pグローバルから発表される9月のPMI速報値では、週間鉄道輸送量の増加を考慮すると、製造業経済が強化されたかどうかを確認できます。また、サービス部門が引き続き経済全体を支えているかどうかも注目点です。FRBがインフレと雇用創出の両方に焦点を当てていることから、これら2つの項目に関するデータを分析し、最近の他のデータと比較検討することが重要となります。
 8月のPCE価格指数データは、FRBの2%のインフレ目標に向けて継続的な進展があるかどうかを確認する上で重要です。これらの数値に加えて、過去数か月と比較した実質賃金上昇についてもデータが何を示すか考察を深めたいと思います。
 来週はまた、FRBの講演者が12件の会合を持ち、その中には9月26日木曜日のパウエルFRB議長の講演も含まれています。今週のFRBの政策行動を受けて発表される新しいデータはわずかですので、これらの講演で新しい話題を提供するとは考えていません。一部の講演者はハト派またはタカ派的な姿勢を示すかもしれませんが、FRBが政策を再調整しており、そのペースは今後のデータ次第であるというメッセージが支配的になると予想します。言い換えれば、今週の講演は先週のパウエル議長の発言の再確認となるため、市場に大きなサプライズをもたらすことは少ないでしょう。
 9月末が近づいているため、今後数週間の間に決算発表をする企業の大半はブラックアウト期間に入ります。FRBの政策決定前のブラックアウト期間と同様に、四半期の帳簿を締め、決算報告とカンファレンスコールの準備を始めるときは、静かになるのが一般的です。 来週は決算発表自体は少ないのですが注目すべき決算発表がいくつかあります。Lennar(LEN)の住宅引き渡しに関するポジティブな見通しを受けて、KBホーム(KBH)も楽観的な見通しを示すかどうか注目します。もしそうであれば、住宅市場のより広範な回復が始まっていることを示唆しており、FRBが利下げを受けて住宅ローン金利も同様に低下し、さらにカマラ・ハリスも住宅政策に力を要れる方針であることを考慮すると、回復が加速する可能性を示唆しています。
 Cintas(CTAS)は、経済に関する新たな視点を与えてくれるでしょう。Jefferies(JEF)は投資銀行業界について同様の役割を果たすでしょう。FRBの利下げサイクル開始を受けて、JefferiesはディールフローとIPO市場について楽観的な見通しを示す可能性が高いです。Micron(MU)の四半期決算とガイダンスも発表されます。MicronからPC、スマートフォン、データセンター市場に関するコメントに興味があります。これらのコメントは、スマートフォンとPC市場の回復を確認するためのデータポイントとなります。特にMicronのデータセンターに関するコメントは、NVIDIA(NVDA)、Marvell(MRVL)の動向にも注目したいです。Accenture(ACN)の決算発表では、企業におけるAI導入に注目したいと思います。Costcoも木曜日に報告しますが、月次売上高報告書と月次小売売上高報告書を比較すると、良い結果が予想されます。9月1日から、Costcoの新しい会員料金が適用されています。過去90日間で、コンセンサスEPS予想はやや上昇しましたが、まだ上昇の余地があると考えられます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?