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米国市場:8/30週の振返りと24年9/2週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,648.40と前週比+0.24%で終了しました。NASDAQは17,713.62と前週比-0.92%で終了しました。
 先週の株式相場は8月末日で閉じる形となりました。今年は既に8か月が過ぎ、残り4か月となりました。8月は市場にとって非常に波乱の月であったと言えます。しかし、S&P500指数は2.28%の上昇を示し、NASDAQが7月からほぼ横ばいとなりました。このため8月の結果だけを見ると、相場は落ち着いて伸びているように見えますが、8月前半の市場の急落とその後の急速な回復を見逃してしまいかねません。
 今週から9月に入り、レイバーデイ明けは米国市場にとって試練の月として知られているこの時期にかかります。現時点で、S&P500のバリュエーションは再びピークレベルに近づいています。今後、今の水準からしっかりとした上昇をしていくためには、少なくとも2024年後半および2025年のEPS予想が上方修正されることが必要となってきます。9月に予定されているInvestor Meetingのシーズンは、その兆候を探ることになりそうです。そして、S&P500と比較して優れた収益見通しを持つ企業に引き続き焦点を当てていくことになるのかなと思います。
 8月は市場が回復し、S&P 500は上昇しましたが、NASDAQの上昇はそれほど大きな上昇を見せていません。これは、NASDAQ指数のなかで大きな割合をしめす大手ハイテク株の株価が伸びていないことが要因ではないかなと思っています。実際にADラインは上層しており、幅広い銘柄に買いが入っていますが、GAFAM、NVDAなどの大手ハイテク株が出遅れていることを示唆しています。NVDAも先週決算発表をしており、市場予想は上回りましたが、今後は前年比での更なる成長率を出すのは難しく、これ以上の大きな伸びは期待しづらいと考えています。
 また、市場の回復の背景には、6-7月期決算シーズン後半、好調な経済指標がありましたが、最大の要因の一つは、パウエルFRB議長が金融政策の「調整」が必要であると発言したことだと考えています。この発言により、市場はFRBが9月のFOMCより利下げサイクルを開始することを予想しています。CME Fed watch Toolでは年末までに1%の利下げが予想されていますが、これには大きな疑問が残ります。年末までに1%の利下げを矢継ぎ早に行うということは、経済が大きくスローダウンしているということになりますが、アトランタ連銀のGDPNowは2.5%の成長としており、スローダウンの傾向はみられないとされています。また、小売りセクターもまだら模様の決算となっていますが、ウォールマート、コストコの決算は全く問題のない決算となっておりました。従って、消費者のふところも痛んではいるものの消費は続けているということを示しています。9月18日のFOMC前までに失業率等の経済データが発表されますので、これらのデータの結果次第で今後の利下げ予想も変わってくると思います。今後のデータで労働市場の堅調さが示されれば、市場はFRBのコメントや更新された経済予測に失望するかもしれません。9月も市場が不安定になる可能性を示唆しています。
 また、9月はIPOシーズンですが、大型IPOは期待薄であるため、IPOに備えた大きな売り圧力は想定していません。これらの状況と現在の市場のバリュエーションを考慮すると、9月も8月と同様に慎重な投資スタンスが適切と考えています。

来週の主な決算発表(予定)

9/2(月):祝日(レイバー・デー)
9/3(火):
<寄付き前>
<引け後>Zscaler (ZS)
9/4(水):
<寄付き前>Ciena (CIEN), Dick’s Sporting Goods (DKS), Dollar Tree (DLTR), Hormel Foods (HRL)
<引け後>C3 ai (AI),  Hewlett Packard Enterprise (HPE).
9/5(木):
<寄付き前>·
<引け後>Broadcom (AVGO), Samsara (IOT), DocuSign (DOCU)
9/6(金):
<寄付き前>

米国の主な経済指標

9/2(月):祝日(レイバー・デー)
9/3(火):ISM製造業景気指数
9/4(水):製造業新規受注、耐久財
9/5(木):ISM非製造業景気指数、新規失業保険申請件数
9/6(金):失業率

今週の着目点

 9月2日は祝日(Labor day)で休場です。この後は、感謝祭までは市場は休みなくうごきます。アメリカでは9月が新学期にあたり市場は若干ギクシャクするかもしれません。祝日明けにはいつもの月初めの経済データが発表されます。FRBは9月18日の午後の記者会見で0.25%の利下げを発表すると予想されますが、ISMのデータ、労働市場のデータから更に踏み込んで、0.5%の利下げをする可能性があるかを探ってい行くことになると思います。
 8月30日(金)の7月PCE価格指数データはほぼ予想通りだったため、市場は来週発表される8月の雇用創出に関する様々なデータの注目度が高くなっていると思います。S&P Globalの8月速報PMIのコメントによると、製造業の雇用は8月に停滞し、サービス部門の雇用は減少したとのことです。S&P GlobalとISMの8月データ、およびADPのデータ等で、この状況を改めて確認することになります。これらの数字を評価することで、8月の雇用者数が16万5,000人という現在の市場コンセンサスがどの程度可能性があるかを判断していくことになります。現在のコンセンサス数値は、7月に創出された11万4,000人の非農業部門雇用者数よりも多いため、どちらかの数値に乖離があるため、3日〜5日までに発表されるデータで吟味することになりそうです。
 経済の速度、雇用創出、賃金上昇、失業率に関して、経済指標が悪化すればするほど、市場の利下げ期待は高まります。しかし、これはリセッションのシナリオであり、株式市場が大きく下落することも意味しています。逆に、経済が急激に悪化せず、雇用が継続し、実質賃金が上昇しているなどのデータが出れば、市場は今年予想されている100ベーシスポイントの利下げを疑問視することになります。この結果、株式市場がギクシャクする可能性はあります。しかし、年初のことを考えてみると年初には今年は6回~7回の利下げが予想されていましたが、結果としてこれまでは利下げが行われなくても株式市場は伸びてきました。このため、FRBは0.25%程度の利下げを1回、2回ぐらい行い、そのあとは行わないシナリオがベストシナリオになるのではないでしょうか。


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