見出し画像

米国市場:5/13週の振返りと24年5/20週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、5,303.27と前週比+1.54で終了しました。NASDAQは16,685.97と前週比+2.11%で終了しました。
 先週の株価は、5月17日(金)はまちまちの動きで週を終えましたが、週全体で見ると主要4指数すべてが上昇し、四半期累計でプラス圏に浮上しました。S&P500指数、NASDAQ指数ともに史上最高値を更新し、ラリーを展開中とみています。
 5月15日(水)の4月CPI発表後、週前半の市場の上昇は、16日(木)のFRB高官の慎重な発言によって停滞しました。4月のコアCPIは、ここ数カ月の横ばい圏の動きと比較して、前年同月比3.6%に改善しましたが、依然としてFRBの目標である2%には程遠い状況です。FRB高官は、4月のCPI発表について市場と同じ感覚ではないことは明らかでした。
 クリーブランド連銀のメスター総裁、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁、リッチモンド連銀のバーキン総裁は、「冷や水」をかけるような発言をし、インフレ率が目標の2%に達するには、より長い時間がかかる可能性があるとの発言を行っています。メスター総裁は、FRBが「インフレの道筋について明確になる」まで、より長い期間高金利政策を維持する姿勢を崩しませんでした。これは、コアCPIが持続的に3%を下回るまで、FRBは利下げを開始しそうにないと考えても良いと思います。
 FRBのウォラー理事は金曜日の講演で金融政策についてコメントしませんでしたが、FRBのボウマン理事は、インフレ率がある程度の期間高止まりすると見ていると述べました。ボウマン理事は、政策金利を据え置けばインフレ率はさらに低下するという基本的な見通しを維持しているものの、依然としてインフレ率の上振れリスクがいくつかあると考えていると付け加えています。ウィリアムズ総裁が木曜日に「インフレが2%の目標に向かって進むことに対して、我々が必要とする確信を、ごく近い将来に得られるとは期待していない」と述べたことが、状況をよく要約しています。これらの発言を受けて、市場は再び、パウエルFRB議長が繰り返し述べている「さらなる良いデータ」を見る必要があるというモードに戻ったとおもいます。10年物米国債利回りは17日(金)に反発を見せています。
 まとめると、CPIは市場予想と一致したためインフレの更なる悪化というシナリオがなくなったため、市場はこれを好感しました。しかし、FRB高官の発言からもある通り、目標値にはほど遠いため、利下げは経済データから確証が得られるまでは行われない可能性が高いと考えられます。前月比ではCPIが0.3%と伸びの鈍化が確認できましたので、この動きが続けば前年同月比も鈍化してくるものと思います。小売売上高も前月比+0.0%と予想0.4%を下回ったことで、経済の鈍化という点もこの傾向が続くと論点として上がってくる可能性もあります。
 次のインフレに関する経済指標は24日(木)の5月PMI速報値であるため、今週の初めは市場は様子見となる可能性が高いと思います。理想的なシナリオは、PMI速報値がインフレのさらなる改善と、経済がトレンドを上回る成長を続けていることを示すことです。インフレ面では、鈍化を示す材料が出てきて、経済面では今後も収益成長をもたらす経済環境であることが示されることです。その結果、アトランタ連銀の第2四半期のGDPNowの予想値3.6%からどのように変化するかを見ていく必要があると考えられます。
 市場について言えば、4月の中旬をボトムに約1ヶ月ほどS&P500とナスダックは力強い伸びを見せていますPER的には買われ過ぎの状態に近づいていると考えられます。先週末時点ではFear&Greed指数が「Neutral」から「Greed」になりましたので、今後は推移を見守る方が良いかと思います。

株式

 第1四半期決算発表も終盤に差し掛かり、S&P500企業の業績は引き続き予想を上回る好調ぶりを示しています。S&P500企業のうち、好業績を報告した企業の割合と、その上振れ幅はともに過去10年間の平均を上回っています。その結果、第1四半期の利益は四半期末時点よりも上方修正されています。前年同期比では、2022年第2四半期以来、最も高い増益率を記録しています。
 これまでにS&P500構成企業の93%が2024年第1四半期の決算を発表しました。このうち、78%の企業が予想を上回るEPSを計上しており、これは過去5年間の平均77%、過去10年間の平均74%を上回る数値です。全体では、企業の利益は予想を7.5%上回っており、これは過去5年間の平均8.5%を下回るものの、過去10年間の平均6.7%を上回っています。
 結果、第1四半期の利益は四半期末時点よりも上方修正されています。第1四半期の混合(実績発表済みの企業の実際値と未発表企業の予想値を組み合わせた)増益率は、四半期末(3月31日)の3.4%から5.7%に上昇しました。もし5.7%が四半期の実際の成長率であれば、2022年第2四半期(5.8%)以来、最も高い前年同期比増益率となります。
 11セクターのうち8セクターが増益を発表しており、通信サービス、公益事業、一般消費財、情報技術セクターが特に好調です。一方、エネルギー、ヘルスケア、素材の3セクターは減益となっています。
 売上高に関しては、S&P500企業の60%が予想を上回る実績を報告しており、これは過去5年間の平均69%、過去10年間の平均64%を下回ります。全体では、企業の売上高は予想を0.8%上回っており、これも過去5年間の平均2.0%、過去10年間の平均1.4%を下回っています。
 結果、第1四半期の売上高は四半期末時点よりも上方修正されています。第1四半期の混合売上高成長率は、四半期末(3月31日)の3.5%から4.2%に上昇しました。もし4.2%が四半期の実際の売上高成長率であれば、S&P500指数は14四半期連続で増収を達成することになります。
 8セクターが増収を報告しており(または報告済み)、通信サービスと情報技術セクターが特に好調です。一方、公益事業セクターを筆頭に、3セクターが減収となりました。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第2四半期、第3四半期、第4四半期の増益率をそれぞれ9.2%、8.2%、17.4%と予想しています。2024年通年の増益率は11.1%と予想されています。
 将来12ヶ月の株価収益率(PER)は20.7倍で、過去5年間の平均(19.2倍)と過去10年間の平均(17.8倍)を上回っています。しかし、これは第1四半期末(3月31日)に記録された将来PER21.0倍を下回っています。
 今週は、S&P500企業のうち17社が第1四半期決算を発表する予定です。


来週の主な決算発表(予定)

5/20(月):
<寄付き前>
<引け後>Palo Alto Networks (PANW), Trip.com (TCOM), Zoom Video (ZM).
5/21(火):
<寄付き前>AutoZone (AZO), Eagle Materials (EXP), Lowe’s (LOW), Macy’s (M).
<引け後>Toll Brothers (TOL), Urban Outfitters (URBN)
5/22(水):
<寄付き前>Analog Devices (ADI), Dycom (DY), Target (TGT), TJX Companies (TJX).
<引け後>Nvidia (NVDA), Snowflake (SNOW), VF Corp. (VFC).
5/23(木):
<寄付き前>BJ’s Wholesale (BJ), Ralph Lauren (RL), Shoe Carnival (SCVL).
<引け後> Deckers Outdoor (DECK), Dollar Tree (DLTR).
5/24(金):
<寄付き前>Hibbett (HIBB).

米国の主な経済指標

5/20(月):
5/21(火):
5/22(水):中古住宅販売件数、FOMC議事録
5/23(木):新規失業保険申請件数、新築住宅販売件数、S&P PMI
5/24(金):耐久財受注(速報)、ミシガン大学消費者信頼感指数(確報)

今週の着目点

 今週の経済指標の発表は、先週のラッシュの後ですのでペースは大きく鈍化します。今週は、FOMC議事録と5月のPMI速報値が発表されます。経済の速度、雇用創出、インフレの手がかりを探すため、PMIデータとFOMC議事録を確認していくことになります。
 FRB高官の講演等があり、20日(月)と21(火)だけで9人がなんらかの動きをするようです。今週の4月のCPIデータを受けて、市場は利下げ開始への期待を新たにしています。9月の利下げの期待が引続き高いのですが、彼らがどのような内容を述べるかは確認していきます。しかし、彼らの発言は、木曜日と金曜日に見られたように、利下げサイクルに入る前に「さらなる良いデータ」を求めるものが繰り返される可能性が高いです。木曜日のPMI速報値発表後に発言がどのように変わるかは注目していきます。
 今週の決算発表の波は、Target (TGT)、Macy's (M)、TJX Companies (TJX)、VF Corp. (VFC)など、小売業に大きく偏っています。これらの企業のコメントから、消費者需要、選別的な支出、低価格志向について分析しますが、在庫水準にも注目します。弱い消費者需要と在庫水準の上昇が組み合わさった場合、より積極的な販促活動によって利益率への圧力が高まる可能性があるためです。
 決算発表で特に注目が集まるのはNvidia (NVDA)になると思います。その結果とガイダンスは市場が大いに注目することになると思います。GAFAMが大きな投資を計画しているなどのAIとデータセンターに関する見出しや支出発表を考えると、Nvidiaの業績とガイダンスに対する市場の期待は高いものとなります。ただし、昨年からこの投資は続いており、良い決算になると予想されますが、売上高の成長率面では緩やかに鈍化していく可能性があるとみています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?