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米国市場:11/29週の振返りと12/6週の予定

市場概況
今週の米国株式市場は、旅行者数の増加に対する規制強化やオミクロン株による経済への影響が懸念されるなど、不安定な展開となりましたが、ダウ、S&P500、Nasdaq、Russell2000の主要4指数は前週比マイナスで終えました。

また、週の半ばには、11月の締めとなりましたが、ナスダック総合指数が小幅な上昇にとどまった一方で、他の3つの主要市場指数は10月の上昇分を程度の差こそあれ失った形で11月を締めくくりました。12月は、VIX指数がさらに上昇し、ここ2~3週間で75%以上も上昇したことにより、低調なスタートとなりました。これは、CNN MoneyのFear & Greed Indexからもうかがえ、1週間前の「Fear」、1ヶ月前の「Extreme Greed」から、20の「Extreme Fear」に低下しています。

この原因の多くは、オミクロン株によって市場がギクシャクしていることにあると考えられます。この懸念は、旅行やレジャーへの需要を抑制することになります。ただ、オミクロン株に対する既存のワクチンの有効性が判明することによって、今後の展開が変わってくると思います。

これまでのところ、さまざまな情報が飛び交っていますが、ファイザー等も有効性に関する調査結果を発表する予定です。もし既存のワクチンが有効であることが判明すれば、株価は回復するでしょう。そうでない場合、あるいはオミクロン専用のワクチンが必要な場合は、まだまだギクシャクするかもしれません。

その結果いかんで、2020年3月のように、大きく下げることが起きうるのかは、慎重に見極める必要があると思います。ただ、これまでのところ、楽観的な見方のほうが多いように見受けられます。

経済
11月29日(月):
Sensormatic Solutions社の発表によると、ブラックフライデーの買い物客数は昨年より48%増加しましたが、売上は2019年に比べて28%減少しました。
また、Adobe社によると、ブラックフライデーのオンライン支出は、前年の90億ドルから約89億ドルに減少しました。2019年のブラックフライデーのオンライン支出が74億ドルであったことと比較すると、デジタルでの買い物へのシフトが進んでいることがうかがえます。

Adobe社によると、今年のサイバーマンデーの支出の最終集計額は107億ドルで、記録的な額を記録した昨年の108億ドルから小幅に減少しました。2021年のサイバーマンデーの支出は2019年に比べて13%増加しました。2021年の数字は、Adobe社が予想していた113億ドルには届かなかったものの、今年のサイバーマンデーは、1年のうち他のどの日よりもオンラインセールスが多かったと述べています。Adobe社の発表の詳細を確認すると、サンクスギビングデーからサイバーマンデーまでの間に約340億ドルがオンラインで消費され、11月1日から11月29日までの間に米国の消費者が消費した金額は1,098億ドルで、2020年の同時期に比べて約12%増加していることがわかりました。

11月30日(火):
S&Pケースシラー住宅価格(20都市)(前年比)は、19.05%と予想19.3%を下回りました。10ヶ月連続の2桁での価格上昇となっています。
Source:S&P

12月1日(水):
11月のISM製造業景気指数(PMI)は、11月の60.8%から0.3%上昇し61.1%でした。予想61.2%を下回り、18ヵ月連続の拡大となりました。
報告書において「労働力やサプライヤーの供給に若干の改善が見られるものの、依然として需要主導型でサプライチェーンが制約された環境にるようです。製造業のすべての分野で、原材料や資本設備のリードタイムが記録的な長期化、重要な最下層材料の継続的な不足、商品価格の高騰、製品輸送の困難さなどの影響を受けている。」と述べていました。
Source:ISM

12月2日(木):
11月27日週の新規失業保険申請件数は22万2,000件で、前週の修正値19万4,000件から2万8,000件増加しました。予想の24万件を上回りました。
なお、4週間の移動平均値は23万8,750件となり、前週の25万1,000件から1万2,250件減少しました。
Source:DOL

12月3日(金):
非農業部門雇用者数(NFP)(前月比)は、21万人増となり予想の55万人を大きく上回りました。
失業率は、4.2%となり、予想の4.5%を上回りました。
平均時給は、前年同期比0.08ドル増の31.03ドルとなり、前年同期比で約4.8%の増加となりました。
部門別では、専門職・ビジネスサービス(9万人)、運輸・倉庫業(5万人)、建設業(3万1千人)などが大きく伸びましたが、小売業はホリデーショッピングシーズンにもかかわらず、意外にも2万人の減少となりました。また、レジャー・ホスピタリティ分野でも2万3千人の減少にとどまり、顕著な落ち込みが見られました。運輸・倉庫業が増加したことで、サプライチェーンが改善しているとの見方が強まっていますが、小売業の雇用が予想外に減少したことは、小売業者がホリデーシーズンは少ない労働力で多くの仕事をこなそうとしていることを示唆しているのではないかと考えています。また、サプライチェーンが動き、製造業の活動が改善しているとの見方に加えて、11月の民間非農業部門雇用者の全従業員の平均労働時間は0.1時間増加して34.8時間となり、製造業の平均労働時間は0.1時間増加して40.4時間となりました。
また、企業は労働者が見つからないと言い続けていますが、11月の雇用統計では、現在仕事をしたいと考えている非労働力人口は590万人で、前月とほとんど変わらず、2020年2月から84.9万人増加しています。これは、必要とされるスキルと募集中の仕事に必要なスキルのミスマッチが拡大していることを示しているのではないかと思います。
Source:BLS

11月のISM非製造業景況感指数は、10月の66.7%から69.1%へと先月に続き過去最高を更新しました。サービス業は18ヵ月連続でプラスとなりました。要因として人手不足や物流の問題、材料の入手困難などの制約がある中で、需要が衰えることなく、サービス業の活動が記録的なペースで行われておりインフレを引き起こしていると考えています。
Source:ISM

石油
今週は、WTI原油価格は引き続き下落し66.22ドルで終えました。これは、オミクロン株によって、経済の不確実性と航空・旅行への影響への懸念が大きな要因であると考えています。週の後半には、OPEC+がCovidの脅威にもかかわらず、予想されていた日量40万バレルの供給増を継続するというニュースが流れ、原油価格は回復しました。株式の短期的な見通しは、オミクロンに対するワクチンの有効性の調査結果が待たれるということと同様に、原油についても、需要とそれに伴う原油価格についても今後の方向性を検討するためには同じファクターが必要になると思います。

株式
21年3Qの決算もほぼ終了し、今後は4Qの業績予想の修正や業績見通しについて、注目していくことになります。ただ、今回の4Qについてアナリストは直近の3Q、2Qと比較すると楽観視していないようです。
 S&P 500種構成銘柄の収益成長率は4四半期連続で20%を超えると予想されています。

来週の主な決算発表(予定)
12/6(月):
<寄付き前>Science Applications (SAIC)
<引け後>ComTech Telecom (CMTL), Coupa Software (COUP), MongoDB (MDB), Sumo Logic (SUMO).
12/7(火):
<寄付き前>AutoZone (AZO)
<引け後>ChargePoint (CHPT), Dave & Buster's (PLAY), SentinelOne (S), Toll Brothers (TOL)
12/8(水):
<寄付き前>Brown-Forman (BF.B), Campbell Soup (CPB), Thor Industries (THO), United Natural Foods (UNFI).<引け後>GameStop (GME), RH (RH), Torrid (CURV), UiPath (PATH).12/9(木):
<寄付き前>Ciena (CIEN), Hormel Foods (HRL)
<引け後>Broadcom (AVGO), Costco Wholesale (COST), lululemon athletica (LULU), Vail Resorts (MTN).
12/10(金):
<寄付き前>N/A
<引け後>N/A

米国の主な経済指標
12/6(月):
12/7(火):
12/8(水):
12/9(木):新規失業保険申請件数(前週比)
12/10(金):消費者物価指数(CPI)

今週の着目点
今週は経済指標的にはあまり大きな発表はなく、落ち着いた週になります。ただ、今週には、インフレに関連した経済指標がいくつか発表されるため、FRBが国債のテーパリングスケジュールの前倒しを検討することの判断指標の一つになると思います。

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