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新ことわざで遊ぶ辞典「ミイラ取りが未来になる」

ミイラ取りが未来になる
【みいらとりがみらいになる】

【意味】将来の人生設計にしては,あまりにもニッチすぎる職業選択をしてしまうこと。

「先生,進路のことなんですが…」
「おっ,早川か。決めたのか。進学するか就職か,ずいぶん悩んでたよなあ」
「はい。ミイラ取りを目指すことにしました」
「はい?もう一回言って,何だって?」
「えっ,はいミイラ取りです」
「ん~よく分からんなあ。そもそも「ミイラ取り」ってなんだ。ミイラを取りに行くのか?」
「そうです」
「その「ミイラ」って何だ?ゴジラの息子か?」
「先生,それはミニラです」
「あっ,外車の小さなやつだな」
「それミニです」
「じゃあファッションモデルだろ」
「それミランダ・カーです。どんどん遠くなってくなあ。先生,茶化さないでください。僕はいたって真剣なんです」
「そう言われてもなあ。また何でミイラ取りなわけ?」
「この前ネットニュースで知ったんですけど,この先AI技術の高度な発展によって従来の職業の半分以上がAIに取って代わられるらしいんです。そこで,AIに奪われない職業をいろいろ調べたら…」
「ミイラ取りがあったと?」
「はい」
「いやいやいや,それはどうだあ。AIが奪うとか以前の問題だろう。ニッチにもほどがあるぞ。隙間狭すぎて二進も三進も行かないことにならないか?ニッチだけに…ぷっ」
「先生!あんまりです。僕,本当に将来の人生設計真剣に考えてるんですから,きちんと相談にのってください!」
「いやあすまんすまん。先生が悪かった。ごめんな。でもなあ早川,ミイラ取りなんて,大昔ならいざ知らず,現代に需要があるとは思えんし,第一それ言い換えたらミイラの盗掘ってことだろ?悪いことは言わんからまあやめておけ」
「はあ。先生,何もご存じないんですね」
「ん?何その呆れたような顔は。ミイラ取りなんて需要も将来性もないからやめておけって,そんなに可笑しなアドバイスした?俺?」
「先生,これ見てください」
「何このパンフレット?なになに,「世界超自然遺産調査保全機構直属実働部隊入隊案内」?何だよこれ?」
「先生,ハイジャンプ作戦ってご存じですか?」
「えっ,いやいや話がそれこそジャンプしてるぞ。何だよハイジャンプ?話が見えんぞ」
「第二次大戦後まもなく,南極を観測調査するために米軍が行った大規模な観測プロジェクトです。この調査のために4700名の人員と13隻の艦船,多数の航空機が投入されました。これが世に言うハイジャンプ作戦というやつです。おかしいと思いませんか。軍が,なぜこれほどの大部隊を観測の名目で南極に派遣したのか。まるで南極で戦争でもやらかそうという勢いじゃないですか。そう思いませんか」
「いや,いきなり何だよこの方針転換。そんなこと言われても」
「そうなんです!もうお分かりでしょう。実は南極の奥地にギザの大ピラミッド以上の大規模なピラミッド群が発見されたのが,この作戦の前年でした。調査の結果,そこは異星人の大規模な墓地であったことが分かったのです。そして,遺体とともに異星人のオーバーテクノロジーも眠っていることが判明しました。また,それらの埋蔵物が墓の番人としての「何か」に守られていることも」
「うわ。話がすごいところに飛んじゃったぞ早川。ミイラ取りどうなったの?」
「そこです,先生。ハイジャンプ作戦とは,南極観測を名目に,その実,異星人の墓を管理する「何か」と戦って,異星人の超技術を奪取しようという作戦だったんです!」
「だから,その入隊案内は何なんだよ」
「戦いは数十年を経ていまだ決着していません。人類に残された超自然遺産の保護という名目のもと,米軍から国連の一機関に管理を委譲されて,そこで有志の国家が結成した実働部隊が現在も秘密裏に,遺跡の管理者と戦闘を繰り広げているのです。僕は,その戦闘部隊に入隊したいと考えているんです。この部隊の別名が「ミイラ取り」なんです」
「ええ,嘘。そんな話聞いたことないぞ。それホントかよ」
「信じるか信じないかは先生次第です」
「はあ,そんなことになってるのか。いや,先生もその手の話嫌いじゃないよ。よし,先生、早川のこと応援するよ。がんばれ早川,立派なミイラ取りになるんだぞ!あっ,もちろんミイラ取りにはなってもミイラにはなるなよ」
「先生…ありがとうございます!」

これが世に言う「ミイラ取りがミイラになる」である。

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