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世界一のパエリアの味

2024/2/23

最近、もったいないなーと感じることがある。
主要駅などに行くと最近では海外の人をよく見かけるのだが、夕食時になると何でもないようなチェーン店のしゃぶしゃぶなんかが、海外の人で満席だったりする。
もちろんその店だって美味しいし、店側が海外の人にアプローチするための努力あってのことなのだから、何も否定したいわけではない。
ただ、一番高い食べ放題のコースなんかを頼んでいるのを見ると、近くに同じ値段でもっと美味しい店あるのになぁ...なんて余計なお世話としか言いようのない感想が浮かんだりするのだ。

けど、よくよく考えてみると自分も海外に行く時は同じことをしてるのでは?と思ったりする。ひとえに、検索サイトが自国のものだったり、その土地の言語が話せないからという理由で「観光者に有名な店」に足を運んでしまう。
海外のほうがありがちなだけで、国内旅行でも似たようなことは多々ある。

北海道に行った時に、有名なジンギスカンの店に行ったのだが、現地で仲良くなった子に改めて教えてもらったジンギスカンの店はその有名店の何倍も美味しかった。
江ノ島にある有名な生しらす丼の店も土日は平気で3時間待ちだったりするが、徒歩5分圏内にほぼ同じ味のものを出している店がいくつもある。

食にあまり興味がなかったり、その有名店に行くこと自体が目的なら全然構わないのだが、私の場合せっかくだったらより美味しいものをより手軽にという欲が湧いてしまう。

この考えに至って依頼、旅行をするときは大抵ローカルな人やタクシーの運転手に美味しい店を聞くか、世界でも通用するGoogleマップで検索をして店選びをしている。

そんな私が、スペインのバルセロナに行った時のことだった。ちょっとツテがあり、父親がバルセロナで働いているという子にオススメのなるべくローカルな美味しいパエリアが食べられる店を教えてもらった。
海岸沿いの店は満員の店ばかりだったのに対して、3本くらい裏道にあるその店はカウンターと4つくらいテーブル席があるだけで、私が入店した時は常連客が数人、カウンターでお酒を飲んでいるだけだった。

私はまず飲み物を頼み、外でタバコを吸っている(ヨーロッパは大抵、外ならどこでも喫煙ができる)と、その店のシェフらしき人が同じくタバコを吸いに外に出てきた。
「どの料理に自信ある?」と尋ねると「パエリアは食っとけ、この周辺で一番うまいの食わせてやる」というもんだから、中に戻ってイカのカラマリ、オイルサーディンと共にパエリアを頼んだ。

その日は、昼にたった4ユーロ(円安レートの今でも600円くらい)の馬鹿でかいケバブを食べた後だったので、先に来たカラマリとサーディンを食べ切った頃にはお腹いっぱいで、正直パエリアが入る隙はほぼなかった。
その後、店主がでかくて平らな鍋で具沢山のパエリアは持ってきた時には、正直絶望した。

しかし、一口食べてからは手が止まることはなかった。
今まで日本でもあまりパエリアを食べる機会はなかったのだが、想像の5倍くらいの海鮮の風味にスープに溶け込んでもなお強烈な味を出すムール貝とエビ。添えてあるレモンも、さっぱりさすためとか味変のためにあるわけではなく、レモンをかけることでもう一段階化けるために計算されて存在していた。

食後に再び外でタバコを吸っていると、シェフがまた出てきて「どうだ、うまかっただろ?」と聞いてきたので「ここ周辺で一番じゃない。世界で一番うまかった」と伝えるくらいには感動するうまさだった。

思い返して見ると、海辺に並ぶ店のパエリアはそんなに美味しそうではなかった。水々しさもなくパサパサだったし、具材も小さなアサリが乗っている感じで、私が行った店のような立派なムール貝や手長エビはなかった。

もっと衝撃的なだったのは、日本に帰ってきてからだった。日本の飯は本当に美味しいと思うし、海外の料理もうまく取り入れ調理していると思う。
しかし、帰国してしばらくパエリアの味が忘れられず、食べログで⭐︎3.6くらいあるスペイン料理屋に行ってパエリアを食べたのだが、がっかりした。決して不味かったわけではなかったが、至って普通。おそらく、バルセロナの海辺の店が出していたようなパエリアだったのだろう。体感で言えば、衝撃も含めて20倍くらい美味しさが違った。

まあ、長々と世界一のパエリアの思い出に浸ったわけだけど、有名だからうまいわけじゃないし、やっぱり自分で確かめてみたり詳しい人に聞くのが一番だと改めて思ったの。
そう思うと、海外の人向けの食べログなんかを作れば、いいビジネスチャンスがあるのでは?と感じる。まあ、あまりビジネスには興味がないので、誰かがはじめてせっかく日本にまで足を運んでくれた海外の人を喜ばせてほしいと思う今日この頃。

〜世界一うまいパエリアの店を添えて〜

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