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【インタビュー】本当に大事なことはあなたの目の前でがおこらない:出演・松田早穂

Continue関連企画 case.2|和田ながら
“本当に大事なことはあなたの目の前ではおこらない”
https://askyoto.or.jp/e9/ticket/20200721
では終演後に、演出家と俳優へそれぞれに質問を出し合うインタビューを行いました。
俳優:松田早穂(dracom)  出演回:7月14日(火) 19:00

Q1. 大熊ねこさんからの質問
【共通】本番を迎えるまでの準備の段階で、『どうしてもしないでいられなかったこと』を一つだけ教えていただけませんか。

自分にも他人にも見えず見せていない、了解や開示をしていない心の内があると信じて静かに細やかに分け行ってみること。


Q2. 佐々木峻一さんからの質問
【共通】「これが劇場の性質なのだから仕方ない」と言えるような、「劇場」を「劇場」と呼べるための「劇場」を構成する最低要素は何か? 「劇場」がしないではいられないことは何か?

客席には過去や未来に観客が座っていた(いるだろう)と認められること。直接目の前に観客がいなくても、観客の視線があった(あるだろう)ことを、想像させられること。作品が始まったら、その瞬間から作品独自の時間が流れ始めること。劇場の壁があることで劇場内は外の時間とは完全に区切られていて、観客と作り手はどちらも別個に、一人ずつ何からも疎外されない守られた時間と空間を享受できること。


Q3. 岸本昌也さんからの質問
【俳優あて】「他人に見られている時とそうでなときでは違うことになるだろう。」という仮定が戯曲にあります。見られている時とそうでないときは違いがありますか?またそれはどんな違いかを教えてください。

私の場合は、どこかせっかちなところがあり、頭の中で考えることが身体の状態よりも一人歩きしてずかずかと進んでしまう性質があります。他人の目があれば、自分の身体や声でどのように伝えるかを判断したり目の前の相手の様子を同時進行で確認することで、多少はせっかちさを調整して、自分の思考と身体を躾ることができると思います。今回の作品では劇場のロビーに観客と演出がいましたが、劇場内の演者にとっては他人の目が直接にあるわけではなく、劇場と自分・観客と自分・演出と自分や、劇場に過去や未来にいた人との精神的な対話などを優先したので、思考が一人歩きするのを気にとめず自由に解き放ちました。もし他人が見たら何を話しているのか、どういう意味の身振りなのか、すぐにはまったく理解できないものになっていたと思います。

Q4. 紙本明子さんからの質問
【共通】「本当に大事なことはあなたの目の前ではおこらない」を考えるにあたり、戯曲以外で参考にしたあるいはイメージがつながった文献や映画、音楽、ドキュメンタリーなどの「作品」があれば教えてください。

作品の準備のためにこれを見よう、読もう!と思って用意したものはありません。今回俳優としてはっきりとした目的意識を持つよりも、日常生活の延長で常にゆるやかに作品のことを考え続けて、できるだけ最も遠回りをしてあらわれてくるものを待っていた、というような消極的にも思える作り方だったので、準備がはじまってから、意図せず目にしたもの、なんとなく日々読んでいた4冊くらいの本や、口にしたものの影響を無意識に受けたと思います。その内容よりも、なぜその本を手にとっていたか、や何時ごろどんな体調で読んでいたか、本を読んだあとの自分、のように、作品そのものよりもその周辺についてどちらかと考えました。生命や家族や性別に関する本は比較的手に取りました。


Q5. 飯坂美鶴妃さんからの質問
【共通】再演したいですか?

同じタイトルの作品で、会場が今回と同じTHEATRE E9 KYOTOだったとしても、内容はまったく異なるものになると思います。再演という感覚にはきっとならないでしょうが、また年月を経てやってみたいとは思います。


Q6. 松田早穂さんからの質問
【俳優あて】俳優として今作品への関わりが、これまで経験した演劇作品への出演と、何か違う部分はありましたか? もしあれば、それはどのような部分でしたか?

戯曲を読むところ、立ち上げるところ、上演するところまで、すべて、一人で行うことが今までの作品と大きく違いました。演出の和田さんと3時間のオンラインミーティングは経ましたが、一番初期の段階での初動の打ち合わせしかしませんでした。最後まで自分以外の誰の目にも触れない、ということは、もしかすると作品が存在しないことと同じなのではないかと上演前は思っていましたが、上演中は観客が一枚だけの壁を隔てたロビーにいることをとても意識しましたし、上演のことを知っている人がいて終演までの時間を共有しているということに、全然無関係ではいられず、鑑賞方法が全く違うだけで、わけのわからないけどくっきりした立体の形の劇を壁を隔てて手渡していると感じました。上演前と終演後にロビーで挨拶をすることも、何かあったらしいけど詳しいことは分からないね、という状態で話せることからたどたどしく話したり、演者も起こったことの10分の1も説明できないものの、お互いに隣の空間で起きていたことを無骨に想像しあうのは、複雑で興味深いもどかしさを生んでいるように思いました。


Q7. THEATRE E9 KYOTOからの質問
【共通】本番の日、劇場に向かう道のりは、"どんな”感じ”でしたか。そして劇場から帰る道のりは、"どんな感じ”でしたか。考えたこと、感じたこと、見えたもの、空気や光、自分の足取り、など自由に教えてください。

劇場に向かう道のりは、恐怖心が強かったです。自分の心や身体の奥を見つめつつどこまでも自分を薄めなければ、生まれてこない作品だと思って準備してきたので、準備が整って当日は精神的に閉じてしまわずに向き合えるかどうか少し心配しながら東福寺駅から歩きました。お昼には雨がふっていましたが、夕方の鴨川は晴れて、静かで澄んで鱗雲が光っていて、みたことのない輝きをしているな、と思って写真を撮りました。写真はまだ誰にも見せていません。景色が肌へ垂直に刺さるような感じがありました。劇場から帰る道のりは、ぼんやりしています。動揺していて身体にエネルギーが溢れている、力の有り余っている感じだったので、どうにか落ち着かなくては、と熱を冷ましながらゆっくり歩いたのは覚えています。


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松田早穂
兵庫県出身京都在住。俳優。大阪を拠点とする公演芸術集団dracomのメンバー。2008年よりベビー・ピーに参加、人形劇や野外テント作品等に出演。最近の出演作はdracom『今日の判定』『しじまの夜がこだまする』、ベビー・ピーの旅芝居『ラプラタ川』、若だんさんと御いんきょさん『時の崖』、したため#7『擬娩』。

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