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【インタビュー】本当に大事なことはあなたの目の前ではおこらない:演出・和田ながら

Continue関連企画 case.2|和田ながら
“本当に大事なことはあなたの目の前ではおこらない” https://askyoto.or.jp/e9/ticket/20200721
では終演後に、演出家と俳優へそれぞれに質問を出し合うインタビューを行いました。
演出:和田ながら 

Q1. 大熊ねこさんからの質問
【共通】本番を迎えるまでの準備の段階で、『どうしてもしないでいられなかったこと』を一つだけ教えていただけませんか。

髪の毛を切ること。
美容室に行くタイミングを見つけるのが下手くそで、だいたい髪の毛が伸びっぱなしになってしまいます。いちおう人前に出るんだから…と思って、公演前には美容室に行くようにしているのですが、新型コロナウィルスが流行りはじめてからは公演もなかったので当然髪も切っていませんでした。ちょっと抜けただけで風呂場の排水溝をあっというまにふさぎ、ドライヤーにかかる時間が日に日に長くなり…。
気分を変えたくて、本番数日前に思い切りバッサリいきました。
(マスクをつけないといけないことが多いこのご時世に髪型をガラッと変えたため、誰だかわかってもらえない率が極端に跳ね上がりました。)


Q2. 佐々木峻一さんからの質問
【共通】「これが劇場の性質なのだから仕方ない」と言えるような、「劇場」を「劇場」と呼べるための「劇場」を構成する最低要素は何か? 「劇場」がしないではいられないことは何か?

見る/見られる関係性の発生(人を役割に分け、それを担わせること)。
外部からの一時的な切断/隔離(によって世界の現在と接続すること)。


Q3. 岸本昌也さんからの質問
【演出家あて】今回の上演では、「なかにいる人」が俳優で「私」が企画者(演出家・劇作家)で「あなた」が観客になっていたと思います。上演中、俳優は観客と会えないので様子を知りません。「私」が見た観客の様子・空間の様子を教えてください。

6回で合計12名の観客を迎えました。おひとりおひとり、とても違ったので、ここですべてを答えることはできませんが、俳優が劇場の中に入ったときのかすかなとまどい、私の口上が進むにつれ作品の設計がすうっと納得されていく感触、おしゃべりを始めるという合意が取れたときの空気のゆるみ、は、おおむねどの回にも見られたように思います。ロビーがガラス張りで外がよく見えて、あらためてここがブラックボックスの外側であることが意識されました。

Q4. 紙本明子さんからの質問
【共通】「本当に大事なことはあなたの目の前ではおこらない」を考えるにあたり、戯曲以外で参考にしたあるいはイメージがつながった文献や映画、音楽、ドキュメンタリーなどの「作品」があれば教えてください。

本番がはじまってから気づいたのですが、難波ベアーズで行われた『コロナ調伏撲滅祈念、山本精一絶叫無観客ライブ』の影響はかなり大きかったと思っています。THEATRE E9 Airで行われたTHE GO AND MO’S『妄想コント』にも刺激を受けていました。


Q5. 飯坂美鶴妃さんからの質問
【共通】再演したいですか?

他の俳優と作業したい、とか、他の土地・他の劇場でやってみたい、とか、素朴な好奇心もありますし、まだまだこの作品から学べることがあるはずだから、再演してみたい、という気持ちと、しかし、さまざまな状況と縁のめぐりあわせで生まれたこの作品をあらためて再演する必然性はいったいどのように得られるのか? あまり見当がついていません。


Q6. 松田早穂さんからの質問
【演出家あて】作品の上演に向けて、自覚的に、もしくは潜在的に、最も気をつけていたところはどんなところでしたか? それは上演を経てどう終えられましたか?


今まで自分の作品の本番は観客席で見ていたけれど、今回の作品で初めて、上演の内側に自分を巻き込む、ということをしました。俳優を開演に送り出したらあとは見ることに専念する、のではなく、俳優を開演に送り出してから自分の本番もはじまる。放っておくとどうも守りに入ってしまうので、なるべく準備せずに、あたうるかぎり愚直に本番の時間を過ごせるように、むしろ本番を具体的にイメージしないように努めていたかもしれません。戯曲自体が劇構造をガッチリもっていたので、もう余計なことはすまい。みたいなことも考えていたと思います。小賢しさを捨てて、無防備になること。
そのような構えでやってみた結果は、たぶん、良かった。本番がとても怖くて、同時にとても楽しかったので。


Q7. THEATRE E9 KYOTOからの質問
【共通】本番の日、劇場に向かう道のりは、"どんな”感じ”でしたか。そして劇場から帰る道のりは、"どんな感じ”でしたか。考えたこと、感じたこと、見えたもの、空気や光、自分の足取り、など自由に教えてください。

昨年12月にTHEATRE E9 KYOTOで上演した『擬娩』の小屋入りで通ったときとおおむね同じルートをたどりました。
行きは、(『本当に大事な~』をE9で上演することになるなんてまったく想像できなかった)12月のことを思い出したり、本番に向けて緊張したり。
帰りは、本番後特有の疲れと充足感による身体の重たさと付き合いながら、駅まで歩きました。バスに揺られながら、その日の本番のことを反芻して、あっというまに記憶の網目からこぼれおちてしまうディティールを慌ただしくiPhoneのメモに書きつけていました。

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和田ながらポートレイト_撮影:守屋友樹

和田ながら (わだ・ながら)
京都造形芸術大学芸術学部映像・舞台芸術学科卒業、同大学大学院芸術研究科修士課程修了。2011年2月に自身のユニット「したため」を立ち上げ、京都を拠点に演出家として活動を始める。2015年、創作コンペティション「一つの戯曲からの創作をとおして語ろう」vol.5最優秀作品賞受賞。2018年、こまばアゴラ演出家コンクール観客賞を受賞。2018年より多角的アートスペース・UrBANGUILDのブッキングスタッフ。2020年より鳥公園アソシエイトアーティスト。NPO法人京都舞台芸術協会理事長。
撮影:守屋友樹


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