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「残暑絵金見舞」猥雑、土俗的で血みどろの芝居絵を描く絵師、「絵金」

番組をお聞きの方もそうでない方もこんにちは。
ポッドキャスト番組『昭和オカルト奇譚』のマサです。

公園を散歩していると、蜻蛉が飛び交いはじめたのを見て、2022年の夏もそろそろ終わってしまうのを実感。毎年、「夏にやり残したこと」を自問自答した結果、10年以上に渡って1つの課題を解決しないまま現在にいたっていることに気づく。みなさんは、今年の夏にやり残したことはありますか?
僕の場合は…

土佐赤岡で毎年7月に開催される「絵金祭り」

弘瀬金蔵, Public domain, via Wikimedia Commons

絵金祭り」とは、高知県高知市香南市の赤岡町で、毎年7月第3土曜日と日曜日に開催される夏祭りのことです。“おどろおどろしくも妖しい”血みどろの芝居絵を描いていた絵師「絵金」。地元の各家が所蔵している絵金の屏風絵が町中に飾られ、妖しく揺れるろうそくの灯りの中で観賞するという、何ともオカルティックでココロ踊るお祭り。高知の風物詩です。近年は流行り病で中止になっていましたが、今年は3年ぶりに開催されたそうで、動画でも楽しめます。

この「絵金祭り」にずっと行きたいと思ったまま、早10年以上。スケジュールが合わなかったり、月末で忙しかったり、気づいたら終わっていたりとなかなか実現できない。せっかくなので、こんなオカルト番組を始めた今だからこそ、タイミングは良いのかもしれないと思いつつ。来年は番組テーマとして行きたいもんです。

出会いは「ギャラリーフェイク」原作25巻

実家に全巻あるのに…

細野不二彦氏著の「ギャラリーフェイク」という美術・芸術漫画が昔から好きで、アニメ化もされている名作なんですが、原作25巻で主人公フジタが未発見の絵金の屏風絵を赤岡に届けにいくお話。途中で都会から逃げてきた地元出身の男を拾う。かつて繁華街で水商売をしていた女性と赤岡で偶然再会する男。再び蘇った季節外れの「絵金祭り」を一緒に見る約束を果たすが……。
という、大人向けのしんみりするお話。このエピソードでその男が語る「絵金祭り」が情緒たっぷりでずっと記憶に残っていた。

ひなびた町が、この夜だけは妖しげな生気を取り戻す

うだるような南国の陽が陰り、浜風が凪ぐ夏の宵、
六尺四方の屏風絵が、通りに面した家の軒下にひろげられる。
どこからともなく、浴衣がけの見物客がぞろぞろと。
せまい町内にあふれかえる。
ろうそく1本燃えつきるほんの二時間のあいだ。
おどろおどろしくも妖しげな絵は、その灯に照らし出される。
ある瞬間、ふいに古くさい芝居絵が、血が通ったように見えるんです。
まるで、
ひなびた町が、この夜だけは妖しげな生気を取り戻すように。

出典:ギャラリーフェイク 25巻 「残暑絵金見舞」

この表現がステキすぎて。アウトローな男の発する言葉とは思えないぐらい情緒に溢れて妙に印象に残っているんです。実家に全巻あるのに、Kindleで購入してしまうぐらいには共感してほしくて。
※本は7円でしたがフルプライス購入になってしまいました…(´;ω;`)

弘瀬金蔵(絵金)の人物像

弘瀬金蔵, Public domain, via Wikimedia Commons

wikiを少し編集してまとめながら。幼少の頃から絵の才能があり城下で評判となった絵金は、16歳で江戸に行き土佐江戸藩邸御用絵師に師事。通常ならば10年はかかる修行期間を足かけ3年で修了し、林 洞意(はやし とうい)の名を得て地元高知に帰郷、20歳にして土佐藩家老・桐間家の御用絵師となるも、狩野探幽の贋作を描いた嫌疑を掛けられたことで職を解かれ破門。慶応年間より叔母を頼って赤岡町(現・香南市)に定住し「町絵師・金蔵」を名乗り、地元の農民や漁民に頼まれるがままに芝居絵や台提灯絵、絵馬、凧絵などを数多く描き「絵金」の愛称で親しまれた。

という、割と波乱万丈な天才肌の絵師だったよう。
狩野探幽といえば、日光東照宮に今も残る象など当時謎だったモチーフを描いた絵師としても有名。絵金の才能に嫉妬した誰かの陰謀なのか、魔が差してしまったのか。しかし、絵金の芝居絵は未来へと受け継がれ、こうしてオカルト好きな人間の憧れの祭りとしてインプットされている。

▼ショートテーマ「狩野探幽の想像の象、眠り猫に込められた思い、『日光東照宮』レポート。Twitterリクエストでサルベージ」という回で少し触れています。PodcastやSpotifyでぜひお聞きください。

来年こそは…!企画として現地リポートを

ただし、「絵金祭り」として現在のようになったのは、1977(昭和52)年のこと。町内の須留田八幡宮で行われていた神祭に倣って、商店街に絵を並べたのが始まりとのこと。毎年毎年、夏が終わるこの時期に「来年こそは」と決心しているが、自分たちでPodcast/Spotify番組をやっている間にこそ訪れたいとあらためて思いました。

▼土佐赤岡絵金祭り公式サイト
URL:https://ekinmatsuri.com/

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