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映画「百合子、ダスヴィダーニヤ」大正時代の着物の魅力

約15年前、映画の衣装提供をさせていただいたのは、大変貴重な経験でした、マイナーな映画とはいえ、スクリーンで役者さんがコレクションした着物で演技をされるのです。その中には、故人となられた大杉漣氏も含まれます。時代も大正時代ということで、時代にあった衣装を提供できたのは良い経験です。映画名は「百合子出すヴィダーニャ」です。この映画は、浜野佐知さんという女性の監督が政策されたもので、ロシア文学者の湯浅和子の人生の一部を映画にしています。

映画の1シーンより

1 湯浅良子というロシア文学者

湯浅芳子

湯浅芳子1896~1990ロシア文学者。この方は京都市出身なのです。上京して婦人雑誌の編集に従事する中で、ロシア文学の翻訳・紹介を志します。野上弥生子の紹介で中條百合子と知り合い、1924年から、当時の夫と離婚した百合子と共同生活を送ることになります。
1927年から1930年にかけて、百合子とともに当時のソ連に滞在します。帰国後は、ロシア・ソビエト文学の翻訳紹介を行い、21世紀までよみつがれる翻訳を発表しました。
岩波文庫にある、チェーホフの「桜の園」が有名ですが、「森は活きている」のようなた児童文学も訳しているのです。その後、百合子は後の日本共産党議長・宮本顕治―と結婚します。

2 「百合子、ダスヴィダーニヤ」という映画

映画の1シーンより、監督のご意向で芳子の着物は男性的なものに

2010年10月より、浜野佐知監督によって「百合子、ダスヴィダーニヤ」がクランクインしました。宮本百合子と湯浅芳子、そして、百合子の15歳年上の夫、荒木茂の3人が、1924年(大正13年)に福島県の安積・開成山で繰り広げた愛憎のドラマです。女性同士の恋愛と男女の結婚をめぐる、現代に先駆けたセクシュアリティの実験でもありました。 
原作は、宮本百合子の「伸子」、「二つの庭」(新日本出版社)ですが、本映画は、三人の運命がクロスする大正13年5月末から6月半ばにかけての20 日弱の日々に焦点を当て、強烈な個性を持った百合子と芳子の、他のどこにもない「愛の形」「愛の実験」がいかなるものであったかを描きます。

今の時代なら比較的寛容なLBGTという生き方も、大正時代は「変態」と受け取られました。また、この映画製作そのものも、何かと難しい部分があったと思われます。浜野佐知監督の英断に加え、京都古布保存会の着物を使っていただいたことに、今も官舎しております。衣装合わせの際、大杉漣氏にお会いできたのも筆者として嬉しいことでした。

3 大正の着物を展示する

この映画製作を記念して、当時京都市内にあった京都古布保存会の事務所で、展示を行いました。展示したのは、すべて寄贈品で、かつ年代の確定しているものです。

京都新聞の記事

展示して感じることは、色はとても地味で、柄も小さめですが、素材が大変すばらしいということです。今の時代にはもう作れない麻の絣など、貴重な素材を展示することができました。
展示でわかったことは、湯浅和子氏は、京阪電鉄の清水五条駅ちかくの商家の出身であるということです。宮本顕治と結婚した後は神格化され、日本共産党の母のように扱われている百合子ですが、湯浅との交流に焦点を当てた浜野監督の業績は大きいと思われます。

黒澤亜里子氏の著書、「往復書簡 宮本百合子と湯浅芳子」は、映画と合わせて読んでいただくと面白いと思います。この映画に出演されたのち、2018年に個人となられた大杉漣氏のご冥福をお祈りするとともに、浜野監督にお礼を仕上げたいと思います。

‎ 翰林書房 (2008/3/31) 長編ですが興味深い作品です。

似内惠子(一般社団法人昭和きもの愛好会理事)
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