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プログラマ以外のエンジニアはどこへ消えたのか?

最近、エンジニアへの転職を勧める広告をよく目にします。noteにもエンジニア関連の記事は多いです。AIを作るのも、使いこなすのもまたエンジニアと言われています。

しかし待っていただきたい。言及されているのは全て、ソフトウェアを主体とする情報系のエンジニア、あるいはプログラマと呼ばれる職種です。エンジニアは他にもいます。


そもそもエンジニアとは

メーカーで主だった分野と言えばメカや電気、他にも化学や材料など。しかしメディア、特にインターネット上でそれらを見かけることはあまりない気がします(少なくとも私はそう感じる)。彼らはどこに消えたのでしょうか?

そもそもエンジニアとはどんな仕事か。

機械・電気・土木・建築などの技術者。技師。

goo国語辞書

日本語だとどうしても曖昧な表現になりますが、大学の工学部で学ぶ分野の知識、技能を使う職種が概してエンジニアと呼ばれるように思います。そう定義すると、プログラマももちろんエンジニアであり、機械のエンジニア、電気のエンジニア、建築のエンジニアなどが存在します。彼らをあまり見かけなくなったのは、私だけでしょうか?

結論から言うと、彼らは当然消えてなどいません。何より私も機械をメインとするエンジニアです(コードも書きますが)。インターネットを中心としたメディアでプログラマの露出が多いのは、いくつか理由があるように思います。

私は転職を挟み業界を変えたものの、一貫してメーカーに勤める機械系のエンジニアです。プログラマとも一緒に仕事をしていますが、ソフト関連の事情について見当違いのことを述べている場合もあると思いますので、その点はご容赦ください。

プログラマをよく目にする理由

1. インターネットとの親和性が高い

我々が目にする情報のうち、インターネットを経由する割合は非常に高くなりました。そして当たり前というべきでしょうが、インターネットはプログラムの集積であり、プログラマとの親和性がそもそも高い領域です。

根幹を支えるのはサーバー、通信網といった物理的な要素ではあるはずですが、インターネットを使うときにそれらの裏での働きに思いを巡らすことはほとんどありません。基本的にはプログラムこそがインターネットを支える技術の柱であると言える以上、親和性が高いのは当然と言えます。

また、プログラマのアウトプットは文字情報(コード)であるので、インターネットという媒体に乗せやすいという側面もあるでしょう。

2. 設備面で参入障壁が低く、自由度も高い

プログラミングは他のエンジニア分野と比べ、初学者の設備的な投資が小さいのが特徴の一つです。基本的にパソコンがあれば、誰でもプログラミングを始めることができます。優秀なプログラマであっても、スペックに差はあれどメインの投資がPCであることには変わりないはず。そしてPC一台あれば仕事ができるということは、その分働き方も自由に選べる(フリーランスやリモートワークなど)ということ。

他のエンジニア分野の場合、いずれも何らかの物理的なものを作り上げることこそが技術の目的となります。個人の仕事が仕様のインプットと設計のアウトプットで完結していたとしても、それを作る工程がどこかで発生するので、結果的に原材料や製造設備といった投資が可能な企業に属するという形が、スタンダートであるように思います。

必要な設備がどの程度あるかということは、参入障壁の高低や働き方の選びやすさに直結します。

3. オープンなマインドが是とされている

自分の書いたコードがそのまま世に出るからでしょうか。基本的にプログラマの方々は、自分の成果やキャリアをオープンにすることが喜ばれる傾向にあります。企業や業界を超えた交流会などもプログラマならではの文化ではないでしょうか。

反面、他分野のエンジニアは、物理的な制約を受けることが多いこと、また技術の流出を防ぐためにものづくりの工程が秘匿される傾向にあるため、クローズな傾向が強いように思います。

4. ソフトウェアこそ技術の最先端

エンジニアが携わる分野は数あれど、やはりその中でも最先端を行くのがソフトウェアであることも理由の一つでしょう。今の時代であれば、LLM(Chat-GPTなど)をはじめとする生成AIでしょうか。

それ以前から、例えば私たちの生活になくてはならないスマートフォンも、その価値の根幹を担っているのはソフトウェアです。日本でも普及するであろう電気自動車も、今後の価値を決めていくのはハードではなくソフトである、と言われています。

5. 一人当たりの生産性が高い

自動車など身近なものをイメージするとわかりやすいかもしれませんが、一つの工業製品が世に出るまでは、数多くの人間がそのモノづくりに携わることになります。技術開発、設計、製造、品質保証など、それぞれの分野を担うエンジニアがおり、エンジニア以外にも数多くの人間が携わるのがハードウェアの世界です。

しかし、ソフトウェアになるとその事情は異なります。たった一人の開発者がいくつもアプリを開発していたり、少人数の開発チームがスタートアップとして大きなサービスを構築する、といったことが起こり得るのが、プログラマの世界です。アウトプットであるコードが基本的にそのまま世に出ること、またその複製(コピー)がほぼ無制限にできることがそれらの要因でしょうか。

結果的に、優秀なプログラマであるほど、一人当たりの生産性が高い、すなわちよく稼ぐことができるエンジニアである、というわけです。機械系のエンジニアである身としては少々残念ですが、最終成果物の価値を人数で割った時の一人当たりの生産性はやはりプログラマの方が上ではないか、と(ちゃんと計算したわけではないですが)。

これはフリーの独立したエンジニアとして生計を立てやすい、という側面にもつながります。この性質によってプログラマが人気職業となり、結果的によく人の目に触れる、という要因もありそうです。

夢の職種というわけでもなさそう

ここまで、世の中で「エンジニア≒プログラマ」という認識が定着している理由を考えてみました。端的に表現すると「プログラマこそエンジニアの花形だから」と言えるのではないでしょうか。

では、本当にプログラマは夢の職種なのでしょうか?私が別分野のエンジニアだからかもしれませんが、決してそれだけではないように感じます。

1. 参入障壁が低い分、競合は多い

二つ目の理由に「参入障壁が低い」と書きました。これが事実だとすると、多くの人間がプログラマになれる、ということを指します。すなわち、プログラマ同士で競合となる相手も必然的に多くなる、ということ。ビジネスにおいては、競合が多いと得られる賃金はどうしても安くなる傾向にあります。優秀な人材も増えるので、頭ひとつ抜けるのも一苦労。

花形であるプログラマを名乗れるから、と安易にその世界に足を踏み入れると、逆に苦い経験をすることになるかもしれません。

2. 日本と海外における違い

個人的には、日本と海外(というか、アメリカ?)の差こそがとても大きいのではないか、と感じています。

先ほど、プログラマの生産性の高さについて書きましたが、日本の企業で、その生産性が給与や待遇に反映されるか?というと、そのようなケースはレアだと思います。給料が上がる要因は依然として勤続年数と職位(管理職に就くかなど)が大きな要因を締めており、生産性が高いプログラマだから高い給料を得ている…という事実は、あまりないように見えます。

海外のプログラマの事例を見聞きしていると、事情が大きく異なるようです。特にシリコンバレーでは、優秀なプログラマにはスポーツ選手のような年俸や、大きなストックオプションが与えられ、一攫千金も夢ではないそう。外資系であれば同じルールに従うことになるのかもしれませんが、国内の企業でエンジニアがそのような雇用がされている話は、少なくとも今はあまり目立ちません。

新しい働き方を目指すベンチャー企業であれば、国内でもそういった待遇の違いを設けているところもありそうです。しかし、今度は日本におけるベンチャーの育ちやすさ、というハードルがあります。ベンチャー企業もまた、アメリカ独自の文化の賜物といえるでしょう。

そもそも、海外においてエンジニアを名乗るには、修士や博士をとっていることが不可欠だそうです。日本と海外のエンジニアというものが、そもそも別物と考えた方が良いのかもしれません。

全てのエンジニアに光を

この記事は私の「ハードウェアのエンジニアも世の中にいるぞ」という思いによる記事なので、結論めいたまとめもあまりはっきりしないまま書き上げました。

職業選択という観点からこの記事(と今まで私が書いたnote)を読んだ上で、これからエンジニアになる方、すでにエンジニアである方に向けては、こんなことが言えそうです。

  • プログラマになるなら、完全にソフトウェアの企業に勤める、海外や外資系に行く、フリーで働く、などを目指した方が、プログラマの特性(生産性の高さや、働き方の自由度)を享受できる

  • 国内の一般企業、特にメーカーに勤めると技術分野による待遇差があまりない(ように見える)

  • ただし、プログラマは競合も多い。ので、花形だからという理由だけで向き不向きを考慮せずに選ぶと痛い目を見るかも

  • 興味があったり好きな技術分野が他にあるなら、その道に進んだほうがいい。その場合も、+αでコードが書けた方ができることは広がる

  • 国内企業で頑張るのであれば、技術分野に加えてどの業界に身を置くか考えるのが大事

「どの業界に身を置くか」については別記事で書いたことがあるので、興味があればそちらをご参考に。

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