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西日本豪雨から半年。今とこれから。


2019年1月5日,6日の二日間に渡って愛媛県宇和島・吉田地区を中心に現地視察を行ってきました。今回の視察はこちらの環境省プロジェクトの一環です。未曾有の災害から半年経った現場の状況や地方のこれからについて、知っていただければと思いnoteを書きました。


平成30年7月豪雨

2018年7月6日夜〜7月8日にかけ、台風7号と梅雨前線の影響により西日本の広域において記録的大雨が発生。特に広島や岡山、愛媛などを中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し死者数は200人超となる「平成最悪の水害」と報道されるまでに至りました。現在も各地で災害の爪痕が残っており、一次産業の衰退や人口減の引き金になることが懸念されています。

宇和島市

愛媛県の南予に位置する自然豊かで気候も穏やかな街です。
真鯛真珠の生産では日本一を誇っており、柑橘類の栽培でも有名で貴重な文化財も数多く残された魅力ある都市ですが、近年では水害に加えて、高齢化・人口の減少なども課題に抱えています。

日程

1月5日
 ・吉田地区農園被害状況を視察
 ・ポンカン収穫作業支援
 ・成果の出荷、加工工場見学
 ・夜鍋会(地域の方との交流)
1月6日
 ・真珠の養殖見学
 ・遊子水荷浦の段畑見学
 ・鯛の養殖場見学
 ・参加者との意見交換ワークショップ


みかん農園が集まる吉田地区では様々なところで地滑りが発生して苗木ごと流されてしまっていたり、家屋が流されてなくなっていたり、人間が何十年と続けてきた営みが一瞬で失われた様子が、今も生々しく残っていました。

農家の方のお話では、地盤ごと崩れてしまってはもう畑にはできないし、仮に土があっても製品として出荷できるようになるまで15年かかるとのこと。
被災直後にはライフラインは壊滅的で、集落みんなで助け合いながら水を汲みに行ったり寝る場所を確保したりしたそうです。

少し意外だったのは、柑橘類や加工品は需要も値段も上がっており、生産の方が追いついていないそうで、ここ最近は若い方もUターンで実家を継ぐことも少なくないみたいです。地域にはそれなりに農業を学ぶ場所や、コミュニティもあり、みなさんそれぞれの事情を抱えられているはずなのに、悲観的な雰囲気はなく、前向きに考えていらっしゃったのが印象的でした。


夜は地元の名産をお腹いっぱいいただきました。新鮮な野菜にじゃこ天、かまぼこ、ブリしゃぶ。お腹はちきれました。。。

駆けつけてくださった宇和島市長をはじめ、校長先生や宇和島を拠点に世界で活躍する事業家、自治体、NPOの方のお話を伺いなから、意見交換をさせていただきました。

特に教育長とのお話が心に残っています。

「近年、様々なテクノロジーによって生活が便利になる一方、隣近所で生活丸ごと支えあうような事もなくなり、相対的には関わり合いの総量も密度も減っている。しかしいびつな人口構造が加速していくと社会保障は機能しなくなり、先の災害を通して痛感したように、地域コミュニティでの助け合いや繋がりはより一層必要になってくる。人口も減り続ければそれも破綻する。10年後、20年後の未来を想像して、今行動を起こそう。」

少子高齢化・人口減少の問題とレジリエントの問題も表裏一体であり、あらゆる課題は繋がっているのだと再認識できました。またある方のお話↓

「災害で多くのものを失ったが、それと引き換えに多くのことに気づかされ、地域住民の意識は明らかに変わっている。子どもたちも誰かのために行動するようになり、来たる災害に向けて顕在化した問題解決に取り組んでいる」

この言葉に、未来志向で社会継続のために、一人一人が自覚的に社会に貢献し、誰も取り残さない世界を実現しようとしていると感じました。SDGsという言葉を使わずとも、マインドセットとして素晴らしいものを獲得していました。

翌日も興味深い体験をさせていただきました。
これは真珠の養殖現場を見学。完璧な球体でもないし、均一的な光を放つものでもないのに、人は貝から取れる丸っぽくて少しざらっとした物体に惹かれるっているのは不思議。ちなみに真珠を取り出したアコヤガイの貝柱は高値で取引されるほど美味しい!そもそも流通にそんな出回らない。

これは観光名所「遊子水荷浦の段畑」。
宇和海からの照り返しと温暖な気候に加え、石積みによる栽培で地熱も加わって、芋を収穫するのに最適らしいです。ほとんど水もやらなくてもいいって。昔は石積み職人がたくさんいたけど、今はほとんどできる人がいない。水害で崩れてしまったところもありました。

最後に鯛の養殖場。
宇和海のあらゆるところに、養殖用のいけすがあって、その多くは鯛。他にも鯖やぶりも名産で、黒潮が定期的に流れ込んで海が常に綺麗な状態で保たれるため、これまた全国でも有数の養殖場として栄えています。黒い布は日焼け防止ネットです。

所感

魅力がぎゅっと詰まった宇和島。近辺に大学がないために、若い人たちがそのまま出て行ったきり帰ってこないことで人口減少の一因とされていましたが、都心での生活を経験することで今までの生活を再評価できるようになったり、釣り好きの人、みかん好きの人、何より宇和島に住んでいる人たちが大好きになってIターンしている人たちもいます。

一次産業に従事されている方は、口を揃えて後継者不足を優先課題にあげていますが、産業の未来を切り開こうとイキイキ働く大人がいて、自分もこうなりたいと思う子どもたちは増えるだろうなと思いました。

今回の視察から得られたヒントをもとに、少しずつ自分のアクションプランが明確になってきた気がします。

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