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【無料】仏教入門ノート02 宗教ってなに?② 民族宗教

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前回の記事では、世界中どこにでも歴史ある宗教があり、考えるという能力を獲得してしまった人間という種にとって、信仰は歌うことや絵を描くことと同程度には本能的で自然なことで、必要不可欠なことだ、というお話をしました。

(1)宗教のはじまり

どんなに歴史ある宗教であっても始まった時点はあるはずです。
宗教はどうやってその歴史をスタートさせたのでしょうか?

前回同様に、今日も宗教の「宗」という字を見るところから考えてみましょう。(字、見るの好きやなー…)

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さて、この「宗」という字ですが、字を構成する部分ごとに物の形を表しています。

まず、一番上の「ウ冠」は屋根を表します。
そして、その下の「示」は神に生贄(いけにえ)を捧げている台の方う形です。

もうちょっと細かく言いますと、

「示」の中の「丁」が生贄をのせる台で、その上の「一」は生贄そのもの。そして、両脇の点々は、生贄から滴り落ちる血液を表しているわけです。

わーお…
字の由来は結構ハードな景色なんですね…

古代の人たちはこの生贄によって何を祈っていたのでしょうか。
先祖神への感謝だったり、狩りの成功、豊穣の祈り、あるいは戦争に勝てますように、などなど、色々なことを祈ってきたのでしょう。

当然、当時は学業成就や交通安全の祈りはなかったでしょうが、その当時あった様々な困難を克服するためであったり、解決しようのない問題の解決を願って、人々は精一杯の生贄を捧げて祈ったのでしょう。

ロマンですね。

そうやって始まった原始的な宗教を「民族宗教」と言います。

(2)民族宗教

民族宗教の一般的な特徴としては、

①自然発生的で創唱者(そうしょうしゃ・教祖)がいない。
②特定の民族の人々が信仰している。
③教典がないことが多い。

というものがあります。

今に残っているもので有名なのは、昔からの神道やヒンドゥー教、ユダヤ教などもこのカテゴリーに含まれます。ユダヤ教には聖書という立派な教典がありますから、上に書いた③にはあてはまりませんよね。なので、あくまでも「民族宗教はだいたいこんな感じ」という一般的な特徴だと思ってください。

なんにせよ、どの地域でも人間の信仰は民族宗教から始まったのです。

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(3)宗教誕生の場面を想像してみよう

ここからは、例えばのお話、非現実的な話なのですが、

無人島に何も知らない100人くらいの子供達が子供だけで入植したと考えてみましょう。

最初は生きるために、ひたすら現実的な目に見える世界と対峙するのが精一杯でしょう。

島での厳しい生活の中で、やがて彼らは理解できない自然現象や災難に出あいます。

台風やカミナリでさえ、科学的な知識のない彼らにとってはとんでもなく不思議で恐ろしいことです。地震や竜巻などは、化け物の攻撃に見えるかもしれません。そんな時、彼らは自然の中に人智を超えた存在を感じ畏怖することでしょう。

また一方で、思いもよらない自然からの恵みを得ることだってあります。
その時、彼らは自然になんらかの意志を感じ感謝するはずです。

このように、彼らは理解不能な自然現象になんらかの意志を感じ、そこに人格を生み出していきます。

病も不思議のカタマリです。
細菌もウイルスも目に見えません。
なぜ、近くにいる人が同じ病気に感染するのかがわかりません。目に見えない悪いもの、恐ろしい魔物が不思議な力で人々の間を移動しているように感じるのではないでしょうか。

悪魔や妖怪、呪いはこのように誕生していくのかも知れませんね。

そして、子供達だけで入植した彼らですが、いつしか大人になり恋をして、子を残します。
現代の私たちは、卵子と精子がであって受精卵になる、などという科学的な知識がありますが、彼らはどうやって生命が誕生するのかなんて当然わかりません。

生命誕生ほど神秘的なことはありません。この命はどこからここにやって来たのだろうか?と彼らは考えます。
どこかからやってきたとすれば、この子がここに来る前にいた場所はどこなのだろうか?そして、私自身はどこから来たのだろうか?
彼らは、この命より前の世界に思いをはせることでしょう。

そして、いつか彼らは仲間の死に出あいます。
昨日まで生きていたあの人はどこに行ったのだろう?
この死体はあの人そのものなのだろうか? それとも、脱ぎ捨てた心のうつわなのだろうか?
昨日この体にあった心はどこへ行ったのか?
もっと一緒に居たいのに、話したいことがあるのに、それはもう叶わないのだろうか?

彼らは、去ってしまった人の行き先を考えずにはいられません。
そこは亡き人が居る場所であり、いつか自分自身が行くはずの場所です。

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ここに、神や悪魔、生まれる前の世界や死後の世界が彼の生活の中に生まれ、それらと関わり合う新たな生活が生まれます。
それまでの、ただただ目に見える自然現象との対峙しかなかった生活ではなく、目に見えない世界と関わりながらの生活です。

目に見えませんから、彼らはそれを目に見える形にして、とらえ受けついでいくことでしょう。そこに儀式が生まれていきます。

このようにして、原始的な宗教が生まれていくのです。

実際にはもっともっと複雑で、様々な要因があって膨大な時間をかけながら宗教は生まれていったのでしょうが、これだけ単純化して考えてみても、人類が宗教を生み出してしまう種であるということが容易にわかるのではないかなと思います。

考える力を持ってしまった人間が宗教を生み出すのはとても自然なことなのです。

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(4)次回予告 民族宗教から創唱宗教へ

このように生まれた宗教の土壌の上で、さらに存在の問題への思索を深めていく人々があらわれます。

その人々は、思索や体験を通し、特定の民族や特定の場所を超えて広まっていくような真理へと通じる言葉を紡ぎ出していきます。

その、紡がれたものが世界宗教(創唱宗教)です。

次回は世界宗教について触れていこうと思います。
仏教入力と言いながら、なかなか仏教が出てきませんね。
次回もよろしければ読んでみてくださいね。

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