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ゴッホと静物画-伝統から革新へ(SOMPO美術館)

また来たよSOMPO美術館。前回の反省から開館二十分前に到着。

今は時間指定チケットになっているが私が予約した時はそんなのなかった。人気爆発でこりゃいかん、と急遽入れたらしい。

私はそうなる前に取った前売り券だったので入口で「本日10:00の指定券ですか?」と聞いてきた守衛さんに「これでもいいの?」と聞いたら無事通された。似たような境遇の方はご安心あれ。

中に入ると手荷物検査をするという。へ? エロいものとか持ってたらどうすんだよ? なにをチェックしたかったんだろうね? ペットボトルは注意されるけどカバンの中に入れれば大丈夫だし。危険物? ダイナマイトとか? 誰が持ってんだよ?

そうこうする内開館時間に。ちょっと早めに開けてくれた気がする。日本ではほぼ毎年なんかしらの「ゴッホ展」が開催される。食傷気味と思いきや、この企画展はおもしろかった。数合わせ?で置かれる他の画家の作品もレベル高かった。ほとんどの作品が撮影可能なのも嬉しい。

初お目見え多いんだろうな。どうもゴッホ前夜、ゴッホがゴッホになる前の作品が多かったような。わだばこうしてゴッホになった?

《麦わら帽のある静物》フィンセント・ファン・ゴッホ 1881年11月下旬~ 12月中旬

でもこの黄色い麦わら帽子は前にどこかで見たな。前述した通り「ゴッホ展大杉」で思い出せない。

《コウモリ》フィンセント・ファン・ゴッホ 1884年10月~11月

剥製を模写したのではとのこと。これはちょっとへたっぴww。でもコウモリの羽?の裏っかわがちょっと虹色のグラデーションっぽくなっていて、後の光の研究の萌芽が見えるんじゃないかな。

《燻製ニシン》フィンセント・ファン・ゴッホ 1886年夏


こんな習作もあったんだねえ。ロブスターの絵は覚えていたけど。だんだんゴッホっぽさが出てくる。


《陶器の鉢と洋ナシのある静物》フィンセント・ファン・ゴッホ 1885年9月
《りんごとカボチャのある静物》フィンセント・ファン・ゴッホ 1885年9月
《野菜と果物のある静物》フィンセント・ファン・ゴッホ 1884年秋

これらの静物画は有名な「ジャガイモを食べる人々」(1885年4月13日 - 1885年)前夜かな。ミレーに憧れていた時期があったはず。その頃の習作だろうか。

単調な色使い、描かれるものはどれも似たような形。配列も退屈。オレンジのかぼちゃ?と縮れたキャベツが出てくる「野菜と果物のある静物」は多少アクセントあるけど、上にある細長い洋梨に丸い青りんご?を被せるのは構図的にどうなんだろ?

とにかくまったく売れそうな要素がないw。でもこれが「じゃがいも~」みたいな作品に突如大化けするのは驚愕であり謎である。そう思ってまたまじまじと見てしまう。正しい見方ではない?

《野牡丹とばらのある静物》フィンセント・ファン・ゴッホ 1886~87年

ところがその画風も更に一変する。なんとカラフルなお花の絵。これまで暗い色だったのはお金がなくて色んな色の絵の具を買えなかったから?(ピカソの青の時代もそんな説がある)

これ最初はゴッホ作品ではなく参考出品かなと思ったらご本人かよ。これほんとにゴッホなのか? キャプションによると数々の証拠はあるらしいのでホントなんだろうが…。先日「伝ゴッホ作」の作品なんか見たから疑ってしまう。にしてもゴッホの偽物作るとしたらもうちょっとゴッホぽくするよね。

ゴッホさん、このままじゃ地味すぎて売れないから一発勝負に出た? 画面左に花を集めて光も当てて左右の明暗の対比をさせているみたい。こういうのは後の「夜のカフェテラス(1888年9月)」や「糸杉(1889)」に繋がっている気はする。

にしてもお花てんこ盛りすぎ。節操ないよ。牡丹はともかくバラはどこにいるのかな? 星型の白い菊みたいなのがバラかな(野ばら)? 赤いポピーのほうが目立ってないか? そのせいでルドンの「グラン・ブーケ」みたいな妖しさも。

《青い花瓶にいけた花》フィンセント・ファン・ゴッホ 1887年6月頃

これもかなりごちゃっとしてるんだけど、色の組み合わせのシミュレーションと考えると妥当なのかな。黄色い菊?は後の「ひまわり」っぽい。

なるほどね


《白いシャクヤクとその他の花のある 静物》エドゥアール・マネ 1880年頃

マネの静物画ってなんとも物悲しさを感じる。
さっきのゴッホの節操ない花の絵と逆に右から光当てて左右の明暗付けてるね。ゴッホはこれパクったんだろうか?


《レモンの籠と瓶》フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年5月

レモンがお稲荷さんみたいに見えるんだが…。


《ヴィーナスのトルソ》フィンセント・ファン・ゴッホ 1886年6月

もう一個似たようなのが隣にあって、そちらは撮影禁止。所蔵はメナード美術館。ケチだな。

ちなみにトルソというのは「胴体部」のみの像。美術学校でデッサンの練習用に使われるみたい。そこだけ描いてどうすんだろね。
さらにちなみに「バストアップ」というと胸から上の部分を指すと思うのだが、「(証明写真などで)バストアップの写真を送って」というと胸をぺろんと出した写真を想像する人がたまにいてずっこけるどうでもいいですか。


《靴》フィンセント・ファン・ゴッホ 1886年9月~11月

靴。そのまんま。なんかいわくつきかと思ったら、キャプションによれば中古品を買って雨の日に履きつぶしてよれよれになったのを描写したとか。ゴッホが足繁く通ってモデルになってもらった貧しい農家のおじいさんが遺した靴とかしとけば値段が上がったのにバラすなよ。


《皿とタマネギのある静物》フィンセント・ファン・ゴッホ 1889年1月上旬

かの「黄色い家」でゴーギャンとケンカして彼が出ていってしまった後に制作されたという。「ゴーギャンのバカぁ!」とか思いながら描いたのかな。なんか、色遣いとか置いてるものの知的な雰囲気といいゴーギャンっぽい絵だ。


《ひまわり》フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年11月~12月

会場で一番人気があったのはやはりこれかな。たくさんのひとが写真撮ってた。私はこの美術館に来るたび何度も見てるからね。

先日も「ひまわり」揃い踏み見てきたし。

🌻🌻🌻

そのほか参考出品で花やひまわりにちなんだ作品がいくつか。冒頭に描いた通りこれらがまた素敵によかった。撮影不可も多かったので写真で紹介できず残念だが。

・ヴラマンクの「花(制作年不明)」(個人蔵らしい)。最高にカッコよかった。暗い部屋のテーブルに斜に乗せられた鉢植えの白緑ピンク花。左上から右下への流れを意識したほんとに冷たさが伝わってくる現代風クール。

・遠目からもわかるシャガールの「花束(1911年)」。花の出てくるシャガール作品は多いけど花だけは珍しいかな。必ず牛とか空飛ぶひととかいっしょにいるので。

・《『生きている花々』より「ヒマワリ」》 J.-J. グランヴィル J.-J. Granville (1803-1847)
腰蓑付けて擬人化されたひまわり。妙な味わいのある絵というか絵本の挿絵らしいのでイラストっぽかったが。群馬県立館林美術館所蔵とのこと。作品展示は11月26日(日)までだそうだ。

Amazonでその絵本を探してみたら、これっぽいんだけど題名が違うのよね。絶版らしく中古品の値段が上がっている。

・《ひまわり》マウリッツ・コルネリス・エッシャー (1918年)
あのだまし絵のエッシャーのひまわりの小さな版画もあった。学生時代に制作されたものだとか。まだ花開かない蕾のトゲトゲした萼?が大輪のひまわりに割り込んで自分が前に出ようとしている(ように勝手に見えた)作品で特に騙す要素はない。

巡回はしないみたいだね。今年最後の必見企画だと思う。


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