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魅惑の「買ってはいけない」の園   ~吉祥寺の文具店から

最近、本屋・文房具屋・雑貨屋への寄り道をほとんどしなくなった。生まれてこのかた、まっすぐ目的地から帰るということが出来ない寄り道生活だったが、コロナの影響もあるかもしれないが、それより人生も後半に入ったらもういいかなという気になって、むしろ、逆に最近はミニマリストを目指そうかなと思い始めた。

そんな私だから、最近は吉祥寺に行っても、なかなかおしゃれな雑貨店などにいくことがない。
ところが、昨日はその場で友人に送りたいものがあり、一筆箋を買いたかった。その日からちゃんと記録しておきたいことがあり、大事にできるノートも欲しかった。
そこで、その場からもっとも近い、おしゃれそうな名前の文具店「サブロ」に行ってみた。

このワクワクをわけてあげたい

小さなビルの階段を上ると、お客さんが下りてくる。「あれ、まだ開店から30分しかたっていないのにもうそんなに出入りがあるのか」と驚きつつ入ったら、小さなお店は既にお客さんでいっぱいだった。

あっ…!これは!オリーブ少女の世界…。往年の吉祥寺⁉
かわいいペン、かわいいノート、かわいいマスキングテープ、かわいい便箋、キッチュな雑貨…。おお、神戸から吉祥寺の雑貨店にわざわざ行った少女時代の昔がいきなり、よみがえってきた。

30年かけて私は集め、学んだ。もう、そういうものは買っちゃダメ、集めちゃダメと。そして、かわいいものは使わないでとっておいちゃダメ、使わないうちにおばあさんになって死んでしまうかもしれないと。最近、やっと持っている文房具を使うようになった。

それにしても、中年にとってのキラキラの雑貨は、太ってからのこってりスイーツに似ている。食べちゃダメと知ったり、そもそもそんなにはたくさんは食べれなくなっても、まぶしくて懐かしくて思わず目を細める。

かつての私のような若いお客さんたちに、「買ってはいけない」というのは、全く野暮なことである。買ってみる経験を若いうちはしたらいいのだ。かわいいものを楽しんだり、買いすぎて反省したりする経験をする権利があるのだ。

封印していたかのような昔の風景まで思い出した、ティーンの頃、散々うろうろした神戸トアロードのONE WAYという輸入文具とポストカードのお店やセンター街のナガサワ文具センター。検索したらONE WAYもまだ健在らしい。泣きそうだ。

高校生の時は、東海ノートやツバメノートで統一し、きれいな字でノートをとるという自分なりの美学があったようだ。そのときは、今みたいに速記者のように書きなぐるライターになるとは思ってもみなかった。(PCでメモを取ると字数が多くなりすぎてあとで整理するのが大変なので意外と手書きがちょうどいい)

今日は便箋とノート2冊を買った。関西ノートの自由帳は子どものころからこのデザイン。神戸ではスーパーで売っていてすべての小学生が使っているものを東京でありがたがって買っているのは滑稽かもしれない。でも懐かしい。前回神戸に帰ったときも、関西ノートの新作「方眼掛ノート」を買ってしまった。

日々の生活に追われて、子どもの頃のように文房具を買いにわざわざ遠いところのお店に行ったりしないし、大きな文房具店に行くのも中で歩き回るのが面倒。しかも近くのデパートの某有名文具店はチョイスの趣味が合わない。文房具は膨大な点数があるので、バイヤーさんと趣味が合うかどうかは大きい。

吉祥寺の文具店で昔の自分に再会してみて、あんまり自分を殺すのではなく、自分の「好き」に従うのもいいなと思った。そういうひとりひとりのこだわりがなり、それが集合体的にそうなってしまうと、ひいては文化がなくなってしまう気がするからだ。


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