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ポスト宗教時代は、非常事態が慢性化する

Dot1: 精神科医の友人との会話

精神科医の友人に久しぶりに再会。一昨年に講演させていただいたのを聞いてくださって、それ以来、親しくさせていただいている。大病院の副院長として病院改革にも力を入れている、とてもリーダーシップのある人だ。近況を聞くと、最近はDPATの任務に参加されていたらしい。省庁や自衛隊とチームを組んで最前線で危機的状況に対処してきた彼の生々しい報告を聞かせてもらった。

医師でありながらスピリチュアリティにも理解の深い彼の視点は、本当に示唆に富んでいた。彼が語ってくれたことで印象的なことはたくさんあるけど、特に印象的なのは「ご支援ありがとうございます」という言葉に救われたという体験。DPATの任務についてはあまり詳しくは書くべきではないのだろうが、過去に参加したミッションの中で、過酷な状況の中で支援を必要としている人を診察に回っている時に、まさにその支援を必要としている当事者から労いの言葉をもらうことがあるという。大変なはずのその人から、支援に来た自分に「お忙しいのに、ご支援に来てくださって、ありがとうございます」と労いの言葉をもらうとき、僕の友人は過酷な状況の中で落ち着きと自信を取り戻すのだという。

彼曰く、「危機の中で仕事をしていると、人はどんどん正気を失っていく。そんな中で、どうやって正気を取り戻すか? 人は自分が正気ではないということに気づくことができると、正気に戻ることができる。そのきっかけとなるのが、正気な人の存在に触れること。刻々とギリギリの決断を迫られ続ける危機現場のリーダーは、根元的なエネルギーとの繋がりを失って、心がどんどんやせ細っていく。そんな時、正気な人、つまり、自分の心の中に神性を保つ人、根元的なエネルギーとつながっているbeing、に触れることで、自分を見つめる物差しをもつことができる」のだそうだ。

非常事態にこそ、それに飲み込まれることなくbeingを保つ人の存在が、リーダーにとってもチームにとっても重要。

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