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ライカの引力。黒いコンタックスの狂気。

ノルマンディ上陸を写した黒いコンタックス。撮影者はその後生還するも船上で気絶する。

日本の漫画に「その着せ替え人形(ビクスドール)は恋をする」(以降、着せ恋)と言うのがあってアニメ化もされ、そのスジにはたいそう人気があるのです。
コスプレしたい女子と衣装作りたい男子のボーイミーツガールなのです。
男子が雛人形のカシラ師を目指しててガールはドクモのオタクという、極めて最前線な立ち位置の男女である。共にいわゆる変態。

この漫画の中で面白いのがフラッグシップ(最上位機種)として登場した「デジタルカメラ」がライカのレンズ固定一眼だった。

アニメ版はLUMIX DC-FZ1000M2らしいのだけど漫画ではがっつりライカロゴ入ってたので、 V-LUX5と思われる。
このVラックス5が登場したのがちょうど3巻の115Pに登場する。
アニメでも血縁のFZ千M2を出してるあたりたぶん承諾の問題があったのだろう。ライカはそこんとこウルサイから(笑)

ハナシもどして。
たまたまライカのM8をぶら下げてサツコスというコスプレ中心のホコ天イベントにカメラマン登録して出張ったとき、偶然その着せ恋のライカ登場回のコスプレ「ブラックロベリア」さんをしてる方がおられた。雰囲気からしてプラっと来た感じ。

ライカM8とコシナのカラーヘアー


自分も友人からコスイベアリのハナシを聞いて、チケット購入したはいいが当日の朝まで知らずに過ごして、友人の連絡から気付いて機材をババっとカバンに詰めて出撃したわけである。

レンズセットに28ミリが不在だったり三脚ナシ、フラッシュナシ、現場経験もゼロ(モデル撮影は何度かしてる)なとこでの特攻を敢行したわけだけど、そこそこいい仕事ができたと思う。
21ミリの露光問題やセンサーにゴミだらけだったりな問題やTvダイヤル不測に回して謎の1/8000縛りでドアンダーカットが一部にあったりと反省点は多かったがまぁ2006年の機材でようとったわい。
デジカメの世界で16年といえば骨董品やね。動く化石。

そのハナシはワキに置いておいて。
M8から本格的にライカが独自開発製造しててその前のモデルまではパナソニックと協業して作ってたのです。

DIGILUX2辺りがそれで、ライカ社はパナソニック開発室近くにオフィスを設けて技術者が頻繁に行き来してたそうな。
センサー部門に南さんと言う方がいてデジラックス2と血縁のパナソニックのLC−1の開発に関わってたそうで、彼はその後にライカへ移籍してM8のセンサー開発に回ったらしい。本業はセンサードライバーのソフトウェア開発なのかな?
あるひFacebookのライカのグループで自分が使ってるLCー1を話題にだしたら声をかけられた。「ボク、LCー1のセンサー開発してました!」と。
(その時はM3でフィルムメインだった)
田中長徳さんだかの本で読んだ「ハッセルの600万画素程度のデジバックでも発色やトーンが素晴らしい」というハナシに発展したあげくM3のファインダー改造の話に至り、自分のことをプロシューマーと認めてくれたのは嬉しかった。
(プロシューマー=ハードユーザー/コアユーザー的なニュアンスかな)
その観点から「解像度を無碍に上げる事の無意味さ」をライカにレポートして欲しいと頼まれたのはもうかれこれ7-8年前(!)
やっとこさM8も使い慣れたんで、ライカ社に呪いの手紙を送りつけてやろうかと思ってるけどそこではなく。

パナソニックとライカが結びついた縁で出来た「南さんのセンサーが載ったエムハチ」が着せ恋の「ライカ(パナソニック)にエピソードがあるキャラクターのコスプレをした方と出会い撮らせてもらった」という繋がりになんか「ライカ」が持ってるある種の霊感のような“引力“を感じたのです。

着せ恋の原作者さんは取材をきちっとやるタイプらしいので、各種デジカメは調べ上げてその上でデジラックス2を選択して作中に登場させたのだと思う。

「その瞬間をイメージの通りに収めたい」
と言うのは写真欲の基本であり、ライカ初号機を造った技術者のオスカーバルナックさんも撮る人であった。
ライカがいまだにその引力を失わないのは撮影者のライフに寄り添う事を念頭に置いてるからかと思う。
キャノンやニコンのフラッグシップはやはり戦場カメラであり究極の現場カメラであると思う。使い手がオペレータであればあればあるほどパフォーマンスを発揮する。つまりカメラを中心に据え、サイドにカメラマンがおるという構図。

ライカは撮影者がまず中心にありそのワキにある感じ。
厳密にいえば、撮影者の視神経がイコールでライカになるのがライカたるモノかと思う。

今回使ったレンズは
21ミリ ミノルタロッコール
35ミリ コシナビオゴン 
50ミリ ツァイスオプトンゾナー1.5
75ミリ コシナ MCカラーへリアー
135ミリ メガネエルマリート
ミノルタ、オプトンツァイス、コシナ、ライツ
とギガバラバラなんだけど、ライカがライカのシゴトをしてくれた。

翻って自分が今作ってる3Dプリントカメラは一体どのような性格なのかと問う。
答えとしては黒いコンタックスを目指し、裏スケを実現する。事にある。

黒いコンタックス。つまりコンタックス1型なのだけど見る人がみると、どうやら怖いらしい。
そりゃまぁ。中古のコンタックス1型となれば死体の10や20は撮ってるだろうし、前オーナーは既に死んどるだろう。それが関係なくてもデザイン的に「怖い」らしい。
しかしそれらの怖さを超えた引力をボクはコンタックス1型に感じてる。
ドイツ人の狂気じみた正しい物作りがそこにある。

写真は眼前にあるモノの瞬間をカタチにする一種の暴力性がある。
過ぎ去り消えゆくべきものにクサビを打つ行為。
表現とは元来暴力行為(イメージの押し付け/表出)なのだから、その道具に殺意があることは望ましい。
ライカは肩を丸くし使用者によりそうとみせかけて視神経に取り憑く。

では四角い、黒いコンタックスは?

その答えを自分が今作ってるカメラで表せたらと思う。

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