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男2人×女1人の恋愛事情⑭ お誘い

涼太は遠い地元から、毎月1回会いに来てくれた。
金のかかる女、翔英です。本当に、申し訳ないと思っている。

 毎月1回来てくれる涼太は、私の癒しでした。
「今度は〇日に会えるから頑張ろう!」と思えた。
もちろん、前の記事でも書いたけれど、友達以上、恋人以上の関係になりました。
涼太に抱かれてみて、全然嫌じゃなかった。むしろ、とても安心できた。
「今度は〇日にイチャイチャ出来るから、頑張ろう!」と思って日々を過ごしていたと言っても過言ではない。

 そんな中、新しい仕事のせいで思った以上に精神的・肉体的なダメージ追っていた。
もう辞めて!翔英のHPはもうゼロよ!と叫びだしたかったけれど、そんな事を言った所で仕事をしないとお金は入らない。ぜいぜいと過呼吸を起こしながらも、なんとか毎日仕事に行く日々。
職場の人はお局を除いてみんな優しかった。まぁ、そのお局が問題だったんだけれど。お局を除く女性の先輩は、「大丈夫ですか?」とこっそり聞きに来てくれたりした。
最初のうちは「大丈夫ですよ!」と言えていたが、次第に「大丈夫」という言葉も言えなくなっていった。
「ちょっと、しんどいですね」
「ちょっと泣きそうです」
そんな言葉がぽろぽろと出るようになってしまうほど追い詰められていた。
 そんなある日、いつも通りがっつり残業をし(先輩たちはまだ仕事中)、
「お疲れ様です。お先に失礼します。」
 と、部署を後にした。・・・が、自動的に閉まる部署の扉が、閉まらなかった。いつものように、ガチャンと閉まる音がしない。「あれ?」と思って私が振り返るのと、「松浦さん」と声を掛けられるのはほぼ同時だったと思う。
 振り返ると、そこには慎吾が立っていた。
 「お疲れ様です」
 私は反射的に挨拶する。トイレかな?なんてぼんやりと考えていた。
 「お疲れ様です。あの、明日飲みに行きませんか?」
 「え?」
 斜め上から想像もしていなかった事を言われて、私はフリーズした。
 「前の部署の集まりで、日本酒が好きって話を言われていたと思うんですが、日本酒カクテルを出すお店があるんです。」
 「それは・・・気になりますね。」
 欲望に正直な女、翔英です。脳がフリーズしていても、好きな事にはしっかり反応していく。
 「じゃあ、連絡先教えていただけませんか?」
 言われるがままにスマホを取り出し、LINEを交換している時に、ふと我に返る。
 「あの、二人でですか?」
 「はい。嫌ですか?」
 「あ、嫌とかではないんですが・・・私でいいんですか?」
 「もちろんです。仕事の話とかもしたかったので」
 仕事の話って、なんだろう。でも私も、思いっきり愚痴を言えるような仲の良い職場の人がいれば嬉しいしなぁ。
 いつの間にか、LINEの交換は完了していた。
 「ではまた明日、連絡します。気をつけて帰って下さい」
 そういって慎吾は、再び扉の中へ戻っていった。


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