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MMT 政策決定者の年齢とニクソンショック

いま財政赤字の神話という本を読んでいる。
現代貨幣理論(MMT)について書かれている本だ。

MMTとは簡単に言うと「通貨主権を持つ国家は債務不履行になる心配はなく、インフレにならない限り支出を増やしても構わない」という主張を行う理論である。

持論だがMMTとベーシックインカムはそれぞれ逃げてはいけないトピックだと思う。

MMTに関しては、日本の債務残高は記録的な水準に達している。そう遠くない日に(もしくは既に)旧来の財政規律を守り緊縮財政に走るか、MMTを受け入れて国債残高を開き直るかの2択を迫られるだろう。

ベーシックインカムに関しては、格差の拡大や労働の省力化、などを考えた際にベーシックインカム又はそれに近い制度の議論から逃げる事はできないだろう。

しかし、どちらのトピックも実行に移した際のインパクトが大きく容易に「じゃあ試してみよう」とはできない点でも共通している。

MMTへの理解を深めるために、MMTに関するトピックでいくつかnoteを書こうと思う。

今回考えるのは政策決定者の年齢についてだ。

「財政赤字の神話」の中では沢山の政治家の発言が取り上げられている。
有名どころだとマーガレット・サッチャー元英国首相、バラク・オバマ元米国大統領、ヒラリー・クリントン元米国国務長官などである。

例えばサッチャー首相はサッチャリズムと呼ばれる緊縮財政で有名で財政赤字の神話の中ではその発言をMMTの立場から間違っていると断じているが、少なくとも当時のサッチャー首相の主観ではサッチャリズムは何も間違っていなかったのではないかと思う。

なぜならMMTが前提とするのは通貨主権だからである。サッチャ首相が在任していたのは1979年〜1990年。そしてニクソンショックを経てイギリスが通貨主権を獲得したのは1971年である。
まだ金本位制が終わってから10年も経っていない段階で国家の収入が税収と借入だけだと思うのも無理はないのではないだろうか?

なお国家の鋳造権が保有する金の量の制約を受ける金本位制の下ではMMTは成り立たない。

他の政治家についても言える。今日、ニクソンショックから50年経っているが60代後半から70代の政治家が大学で経済学を学んでいたとき、世界の常識が金本位制から変わっていなかったとしても大して不思議なことではないだろう。

以前読んだ記事で、当選回数の少ない若手議員の間で積極財政を求める声が大きいというものがあった。
記事では選挙地盤の弱い議員は国民に痛みを強いる政策を主張しにくいのではないかという分析をしていたが、財政赤字の神話を読むと異なる見方が見えて来た。

若い議員は金本位制の記憶が無く、無意識にMMTと同じような結論に至っているのではないかという見方である。

このような見方と日本の国際残高の現状を見るとMMTは甘いことを囁きながら実現は困難なものでは決してないのではないかと思えてくる。

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