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商店建築9月号はオープンエアがテーマ!

「商店建築」9月号が発売となりました。
今日は、その見どころをいくつかのテーマに分けてお伝えします。

1冊を通して共通するキーワードは、「内と外をどうつなぐか」。囲まれた安心感から開かれた安心感へと私たちの感覚がシフトする状況で、物理的かつ感覚的に開かれた空間デザインは、今後ますます重要になるのではないでしょうか。
それは、ウィズコロナ/ポストコロナとどう向き合うかという問いに対する回答のひとつであることはもちろん、ECサイトの発展普及に応じて実店舗がどう振る舞うべきか、という難題にもヒントを与えてくれます。

9月号のラインアップは次のとおりです。

●新作
WITH HARAJUKU/竹中工務店+伊東豊雄建築設計事務所
星のや沖縄/東 環境・建築研究所+オンサイト計画設計事務所
虎ノ門横丁/サポーズデザインオフィス
SHISEIDO FUTURE SOLUTION LX/I IN
新宿 北村写真機店/トネリコ
●連続企画/〈ウィズコロナ/ポストコロナ〉を考える Vol.3
オープンエアな空間デザイン ~空気が流れる開放的なテラス、軒先、植物
PARK in CAFE bird tree/ルームス
VERVE COFFEE ROASTERS 鎌倉雪ノ下店/F.H.C.
HOT SUNS 今泉店/スタジオモブ
ドライブスルー査定 ガリバー 高松中央通り店/スタジオモブ
アオキ/フルーツピークス仙台/シナト
FLORIST nakamura/ファゾム
台湾料理 班比/ファゾム
いとの森の歯科室/ノットイコール一級建築士事務所
茶室ryokan asakusa/UID
hotel Siro/MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO
HANA・BIYORI/パーカーズ
【記事】設計者に聞くオープンエアな空間のつくり方
●業種特集/テイクアウトショップ
AMAM DACOTAN/ヒラコンシェ
BOUQUETIN Boulangerie/AIDAHO
B squared/小野寺匠吾建築設計事務所
山安 ターンパイク店/MORIYA AND PARTNERS
金胡麻焙煎所 なんばスカイオ店/graf
MALEBRANCHE 八条口店/辻村久信デザイン事務所+ムーンバランス
OIMON アミュプラザ鹿児島店/やぐゆぐ道具店
菓心おおすが 本店/こより+アトリエソルト
cafe The SUN LIVES HERE FACTORY/CANOMA
NUMBER SUGAR Marunouchi/ya
PATISSIER eS KOYAMA 本店/橋本夕紀夫デザインスタジオ
TOKYO BENTO STAND/anea design+SEE SEE
堀口珈琲 Otemachi One店/aaat 高塚章夫建築設計事務所
●フォーカス
SMALL WORLDS TOKYO/アトリエ長谷川匠+S.A.D建築設計事務所+エチゴデザイン

それでは、実際に誌面を見ながら見どころを紹介します。

街に投げ出されたカウンター

まずは、オープンエアをファサードの構えから考えます。三密という言葉にも慣れてきた昨今、テイクアウトは当たり前の選択肢になってきました。そこで着目したのが、カウンターが街に投げ出されたような店構えです。


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「FLORIST nakamura」は、老舗花屋のファサードを改修して店内外をつなぐカウンターを設けた事例です。お客は取り付けられたイスに腰掛け、花束が出来上がるのを待ちます。

「HOT SUNS 今泉店」は、繁華街の路地奥に店を構える、わずか2坪の飲食店です。その広さゆえ、店内に客席はなく、客はホットサンド片手に街へ繰り出します。

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「TOKYO BENTO STAND」は、「弁当のセレクトショップ」をコンセプトにした街角の弁当屋。ストリートの要素が約10㎡の店内を満たし、内外をつないでいます。

店の外からカウンター越しに店員に話しかけ、商品を受け取る。購買活動が街に飛び出すと、その街の景色はどう変わるでしょうか。8月号で掲載した連続企画第2弾「〈職住一体〉と〈小商い〉の空間づくり」では、毎日の暮らしを豊かにするという視点から、店の役割を考えました。「店内」が無いほど小さな店は、ファサードを起点に街全体を「内部」とすることで、その小ささを地域に大きく広がるための軸としています。


距離感で居心地をコントロール

通りを歩く人の視点から店内の様子がまったく見えないと、入るのにちょっと身構えてしまいますよね。反対に店内から考えると、通りから見えすぎていると、ゆっくりしにくくなる可能性もあります。
店内外を行き交う視線のコントロールは、お店の敷居を調整するための手法のひとつです。業態や立地などによって、お店への入りやすさや席についてからの安心感は多種多様。「開放感がありつつ中に入ると落ち着く空間」を、いくつか紹介します。

茶室ryokan asakusa

「茶室ryokan asakusa」では、明度差/レベル差/植栽/動線などの要素を掛け合わせることで、敷地境界からエントランスドアまでの4mに実際以上の奥行きを生み出しています。

山安 ターンパイク店

「山安 ターンパイク店」は、跳ねる魚や山脈から着想を得た大きな柱が特徴的な干物販売店舗。視線が常に柱に集まり、また見通しの抜け感が移動と共に変わることで、ガラス張りの大きな気積に不思議な居心地を生んでいます。

外の気持ち良さと内の落ち着き

心情的に、囲まれた空間よりも開かれた空間に安心感を覚えるようになった、という方も多いかと思います。開くと言っても、直接外気に開放する、空間的には閉じていても開放感がある、など、開き方は多種多様。そこで、以下のお店が参考になるのではないでしょうか。

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鎌倉の「VERVE COFFEE ROASTERS 鎌倉雪ノ下店」は、ファサードの大部分を開口部とし、建具の開閉によって店の境界そのものが変わるような構えとなっています。

新感覚フラワーパーク「HANA・BIYORI」は、温室の中を水盤、植栽、アクアリウムで満たし、外の庭園からイメージを引用し、物理的には閉じた空間でありながら、開放的な雰囲気に満たされた空間となっています。

共有するという公共性

ECサイトの普及によって、ショールーム化する実店舗が増えています(前回の投稿もぜひ参考にしてみてください)。https://note.com/shotenkenchiku/n/nfadff6378679

実店舗でものを売らなくても良いとなった時、その空いたスペースには、店舗や施設としての姿勢が現れます。
店舗というプレゼンテーションの場では、提供したいモノやコトとお客との出会いをいかに演出するかが重要です。施設に入ることが目的でない人にそこを通ってもらうこと、言い換えると、利用者にとって購買活動以外に目的が必要です。例えば、近道や通り道になっていること。巻頭の新作「ウィズ原宿」や連続企画で紹介する「アオキ/フルーツピークス仙台」は、通行人にとって便利な環境を整備することでタッチポイントを増やすとともに、「お店がそこにあるだけでメリットになる」状況が生み出されています。

ウィズ原宿

「ウィズ原宿」を竹下通り側から見ると、ボリュームを崩し、植栽を点在させることで小さな街区スケールとの親和性を意図していると理解できます。明治神宮側の、顔としての大きなファサードと、竹下通り側のボリュームと動線をつなぐためにパサージュが機能して、そこかしこに腰掛けている人たちを見かけます。

アオキ/フルーツピークス仙台

「アオキ/フルーツピークス仙台」は、郊外のロードサイド型ショップの構成を崩し、大きな看板と駐車場の代わりに道行く人々やテラス席で飲食を楽しむ様子が前景化します。

9月号では、カフェやショップ、ホテル、クリニックなど多種多様なラインナップを掲載しています。なので、どういった視点を持つかによって、上記以外にも色々な解釈ができるはずです。
ぜひお手にとってみてください。〈平田〉


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