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「エンジニア」って何だろう?

はじめに

私は大手製造業に新卒で入社し、技術職・すなわち「エンジニア」として仕事をしました。ちなみにソフトウェア開発をしておりました。
そこから、ソフトウェアをもっと極めたいと思い、IT企業に転職しました。

この両者を見て真っ先に戸惑ったのは、
大手製造業とIT企業の指す「エンジニア」についての違いです。
同じ「エンジニア」でも、全く別物という印象でした。

今回は、両者で扱う「エンジニア」の違いと
大手製造業で感じた「エンジニア」の問題について書いていきます。

一般的な「エンジニア」

エンジニア(Engineer):技術者。専門の技術を備えるもしくは、工学に関する専門的な才能や技術を持った実践者のことである。
出展:

思っていたよりも広い範囲で使用されています。

大手製造業での「エンジニア」

私がメーカーにいた際、このように教わりました。
『「エンジニア」というのは、技術的な経験と専門知識を蓄え、技術的作業
を実行する人である。』

実際に「エンジニア」と自称する人をたくさん見てきましたが、
皆確かに経験してきた作業や技術的動作はとても正確に行い、
いきいきと作業をこなしていました。
一方で、技術と直接関係のない仕事(例:文書作成やスケジュール管理など)は一切しませんでした。

また、製造業の「エンジニア」にこのようなことを言われました。
『仕事(作業)は上司が全部決めて、降ってくるものだ。』
『上司の命令を正確に実行するだけ。それ以上はしないこと。』
つまり、勝手に与えられたものだけすればいいという、受け身的な存在なのが「エンジニア」だろうと考えておりました。

「エンジニア」というのは、経営層・管理職が事業を進めるうえで、
具体的な作業が発生した際に、手となり足となるだけの、
ロボット的な職業
なのかと当初は思っておりました。

IT企業での「エンジニア」

私は上記のような、技術的作業だけをする人を「エンジニア」だと認識しておりました。しかしIT企業に転職して、その認識が正しくなかったことを
実感しました。

IT企業で呼ばれている「エンジニア」は、技術に長けているのは
もちろんですが、それだけでなく、
1. 目的意識を持っていて、成し遂げようと動いている。
2. スケジュール管理や文書作成も行う。
3. 自分自身で仕事を進めようとする。
といった、製造業の「エンジニア」にはない特徴がありました。

製造業しかいなかった私からすると、
「これってエンジニアのすることかな?」
と思いました。

IT企業で言われている「エンジニア」は、下記なのかなと思います。
『世の中をよくするという目的があり、そのために技術で働きかける人。』

製造業のエンジニアは、ただ目の前にある作業を黙々とこなすだけな一方、
IT企業のエンジニアは、将来を見据えて、その先のことまで考えて
働きかけているのでした。

「テクニシャン」

製造業の「エンジニア」とは、本当にエンジニアなのだろうか?と考えたことがあります。色々と言葉を調べているうちに、「テクニシャン」という
言葉を見つけました。

テクニシャン(Technician):技能者。直接的な作業を行う人のこと。

製造業では「テクニシャン」のことを「エンジニア」と呼んでおりましたが
本当にこの呼び方でいいのか、いつも疑問に感じておりました。

なぜ「エンジニア」が「テクニシャン」と
なってしまうのか?

ではなぜ製造業では、「テクニシャン」が「エンジニア」と呼ばれるようになったのでしょうか。
それは製造業の、終身雇用と教育体制にあると思います。

製造業は

  • 新卒で一括採用し、定年まで同じ会社にいる。

  • そのため、新卒や若手の成長戦略が長期的。
    (10年~20年単位)

  • 一方で製造業は人手不足となっており、
    新卒を即戦力として採用する。

  • 新卒を教育する余裕がなく、
    ひたすら実戦させるのみ。

新卒社員がこのような状態になると、10年~20年ひたすら技術的作業を
繰り返し、作業を覚えるのが目的となってしまいます。
そして中堅社員になったころには、経験した作業をリピート(再生)する人になってしまいます。

「エンジニア」が「テクニシャン」になる
問題点

前提として、世の中には「テクニシャン」は必要な存在だと思います。
例えば、職人はある種の「テクニシャン」だと思います。
料理人や建設現場の職人など、世の中に必要不可欠な「テクニシャン」は
たくさん存在します。

では何が問題かというと、
『変化の激しい大手製造業において、ずっと同じ作業しかしない人しか
いなくなってしまう。』
ことです。
このような人だらけになると、以下の3つが問題になってきます。

  1. 指示待ち人間化
    「テクニシャン」は作業が与えられて動きます。
    与えられた以上のことは考えたり、行動したしりません。
    作業のその先、目的や意味について考えることもありません。

  2. 同じことしかしなくなる
    長年の苦労で作業を身に着けたら、人はその苦労が報われるように動きます。
    そうすると、10年以上かけて覚えた作業が無駄にならないよう、その作業をいつまでも繰り返すだけの生活を送るようになります。

  3. 属人化
    長年の苦労で身に着けた作業が、自分以外でもできるようになって
    しまったら、自分の価値がなくなります。
    自分の価値を保つために、自分の専門知識や経験を
    人に共有しなくなり、自分だけが知る・できる環境を作ってしまいます。

大昔から目的が変わらず、未来も変わらないような仕事であれば、
「エンジニア」が「 テクニシャン」になってもよいと思います。

しかし変化が激しく、人手不足がある中で、変化に働きかける製造業は、
目的思考で自主性があり、変化に合わせて技術を更新し、誰でも進められる仕組みを作る「エンジニア」が必要なのではないでしょうか。

おわりに

「エンジニア」について強く伝えたかったことがあり、
感情的な文となってしまった部分もあります。
なにより日本の製造業において
人や世の中をよくするという目的があり、そのために技術で働きかける』
エンジニアが一人でも増えることを願っております。


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