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国字に学ぶ日本のことばの素晴らしさ

 漢字は、今から2000年近く前に、お隣の国、中国から伝わってきた文字である。そのときの中国は「漢」という名前だったで、「漢」で作られた文字ということで「漢字」と言われるようになった。しかしながら、実は日本で作った漢字も存在する。そんな日本製の漢字は「国字」と言われている。「国字」とは、「漢字の要素や作り方を真似して日本で作られた和製漢字」のことだ。日本で国字が作られるようになったのは、日本にあって中国大陸にはなかった大和言葉や概念などを表記するためであり、日本独特の文化・習慣を表すために、文字を独自に作り出したのだ。

 もともと漢字には「音読み」しかなかった。それは中国語の発音に従ったものだった。そのうちに、日本人が使っている言葉を漢字に当てはめて「訓読み」が出来た。例えばサンと音読みする象形文字「山」には「やま」と自分たちが使っている言葉を合わせていった。これを「国訓」という そのうちに漢字には存在しない言葉を表現する必要が出てきた。例えば、神にささげる木を「さかき」というけれど、漢字にはないので「榊」という字を作り出した。これが国字である。このため国字は一部の例外を除いて「訓読み」しかない。

 このようにして、次々と国字が作られていき、現在確認されている国字の数は1500字以上あると言われている。春夏秋冬の自然や地名、動植物などに関係するものが多く、それらは日本特有の文化から生まれたもので、中国文化との相違を示す。国字の誕生は7世紀中頃の天智天皇が在位していた飛鳥時代とされている。 中国では、田んぼも畑も、すべて「田」という漢字で表している。日本だとそれでは不便なので、「畑」という字が作られた。小学校で習うもう一つの国字の「働く」である。中国には「はたらく」という漢字はなく、「はたらく」を表すときには「動く」や「工作」という字が使われている。日本ではどうも合わないというので「働く」という国字が作られたという。小学校で習う「働」は音読みと訓読みのある国字のひとつだ。  小学校では卒業するまでに、1026字の漢字を学び、中学校を卒業するまでに1110文字の漢字を学ぶ。その中で、日本で作られた漢字、つまり「国字」は、小学校では3年生で習う「畑」と4年生で習う「働」の2字だけ。中学校では、「込」「峠」「枠」「匂」「栃」「塀」「腺」の7字だけ。

 これ以外にも日常生活の中に溶け込んでいる国字がいくつもある。「鰯」「凧」「笹」「樫」「襷」「辻」など。室町時代に生み出された「躾」という字には、「身を美しく飾る」という礼儀作法を重んじる日本人のものの見方、価値観が感じられる。中国には「しつけ」に該当する言葉はない。また「鱈」のように、日本で作られた字が近世になって中国に輸出されて使われるようになった国字も存在する。

 たくさんの国字を作るなかで、既に中国に同じ形の漢字があることを知らずにそれと同じものを作ってしまうという事も起きてしまった。この漢字については「国訓」と呼ばれる。例を紹介すると、日本語の「鮎」は中国では「ナマズ」の意味、「鮭」は「フグ」の意味、「芝」は「キノコ」という意味になるそうだ。

 「俤」…すてきな漢字だ。「おもかげ」と読む。日本の文化って面白い!

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