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可視化の活動で見えてきたオンラインとオフラインのそれぞれの特徴

この1年、急速にオンラインでの活動が増えました。皆さんも実感されていることもあると思いますが、私の場合も、デザイン業務然り、ワークショップ然り、グラフィックレコーディングの活動然り、大学でのスケッチ授業然り、すっかりオンライン化しました。しかし、段々と感染対策を万全に行った前提で、最小限の人員だけオフラインでイベントを運営し、参加者やゲストはオンライン参加というようなハイブリッドなイベントも開催され始めました。そんなオンライン・オフラインを横断してみて、この1年で見えてきたそれぞれの違い使い分けを整理していきたいと思います。

🙌オフラインのイベント

今年の初め、まだコロナでてんやわんやする前の遠い記憶です…。オフラインでの可視化の特徴(象徴的な姿)は、壁に模造紙を貼り、テーブルには参加者が円座で集い、その只中から生まれるものをキャッチアップしていました。

▼INCLUSIVE DESIGN WORKSHOP あなたにとって理想の白杖とは?

まさに、テーブルに集った参加者とのセッションを行いながらのアイデアの可視化でした。双方向のインタラクションや、身振り/手振り/振る舞い/といった全身の身体感を共有した場であったと思います。

🧑‍💻オンラインのイベント

オンラインでのワークショップやイベントは、Zoomなどの遠隔会議ツールが活用されます。ここでの可視化の特徴(象徴的な姿)は、iPadの画面を共有したり、iPhoneで模造紙に描いているところを撮影したり、Zoomのホワイトボード機能を活用したり、miroやJamboardなどコラボレーションツールを用いておこなわれる形式です。(意外とバリエーションがありますね。どのくらいデジタルツールを用いるかなど、それぞれ可視化するグラフィッカーの個性が表れるように思います。)

私は、元からiPadで描くことも多かったので、自然とiPadを使って可視化(画面共有)をおこなうようになりました。オフラインの場ではイベントの休憩時間などにふらっとグラフィックを見に行くという体験があったのですが、オンラインでは、積極的にグラフィックを見るための時間が設けられて(その必要が生まれた)、一斉に全員が向き合う時間ができました。

▼Adobe Education Forum2020 Online
オンラインイベントの良いところは、配信された動画がアーカイブ的に保存され、参加者が後から振り返ることがしやすい点ですね。それとセットで可視化されたものもリフレクションに役立てられやすくなったように思います。以前のオフラインでのイベント後にSNS上で拡散されるグラレコとは、少し様子が変わってきたように感じます。(今までは、グラレコ自身がイベントのアーカイブそのものだったのに対し、配信動画の記録などと並びイベントをアーカイブする複数のメディアの一つに位置づけられたような感覚です。)

▼大学でのスケッチセミナー(大学内限定イベント)
コロナの影響で開催することができなかった合宿形式のスケッチセミナーをオンライン上で行いました。発想法やオンラインでのコラボレーション(MiroやJamboardを使ったワーク)をしながら、スケッチ表現のワンアップ講座などを数回に分けて行いました。オンラインでの場の設計を模索中の実験活動でした。

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▼フレームワークをリノベーションするワークショップ
書籍内や表紙のイラストを担当した「ひらめきとアイデアがあふれ出すビジネスフレームワーク実践ブック」の出版記念イベントとして、著者メンバーの方と持ち回りで開催していたオンラインイベントです。私の回では、ただ埋めるだけのフレームワークから、目的に応じてリノベーションしていくためのTipsや、そのための体験を設計しました。

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▼東京芸術祭2020 「どうやって出会う!」トーク2
東京芸術祭の開催に合わせておこなわれたトークイベントの#2です。全3回(実はこの後のトピックででシンポジウムと#1の話が出てきます)で行ったのですが、その最終に当たる#2では、参加者全員がオンラインでの参加になりました。Jamboardを活用して、グラフィッカーによる可視化と同時並行で、付箋ツールを使ったゲスト同士のコメント掛け合いが繰り広げられています。

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下のピンクの帯をあらかじめ用意しておき、ゲストの方々に可視化と同時に書き込んでもらったコメントが貼られていきます。後のフリートークでコメントを拾いながら、さらに話を深めていきます。(上のグラフィックのブルーの塗り部分はその時に追記されたものです)

オンラインで可視化やワークショップをやってみて一番強く感じたのは、リアルタイムに全員が同じ空間で作業する共在感覚です。リアルな場所では、他のテーブルを見に行けないし、卓上の作業空間の制限や、なんとなく生まれてしまう役割分担されがちな部分をオンラインだと誰もが担っている感じがします。オフラインで味わう人と一緒にいる感覚と、オンラインで味わう一緒にいる感覚は少し違う様にも感じました。

😷オンライン&オフラインのハイブリッドなイベント

段々、オンラインとオフラインの入り混じったイベントも出てきました。テレビ番組のスタジオを想像して貰えばイメージしやすいと思います。司会進行とスタッフ、ゲスト1〜2人(オンライン参加とで分散させる)の数人だけがオフラインで集まり、参加者たちはその様子を視聴しながらコメントなどを投稿していくかたちです。

東京芸術祭2020 「どうやって出会う!」シンポジウム&トーク#1
これが、まさに上記の様なテレビ番組的な形式でおこなわれました。ハイブリッドな環境で、可視化という役割は「どこに」あるべきなのか?誰が触れる場所なのか?なんのためなのか?など可視化の『居場所』をいろいろ実験する機会になりました。

▼Wacom Connected Ink 2020
ペンタブのメーカーで知られるWacomと、Ars Electronicaとの共同プロジェクトのひとつの成果発表の場での可視化でした。しかし、成果を発表するのではなく、そのプロジェクトから生まれた「Where is My Soul?」という問いをもとに、新たなる問いを生み出していくという、探索しまくりの場でした。「問い」や「新たな意味の生成」は大好物なので、とてもワクワクしながら可視化をしました。対話に合わせて即興でピアノ伴奏のBGMが変化したり、かなりセッションな色が強かったせいか、すごく全体が一つとなっている感覚がありました。オンラインとオフライン、会場とステージ、あらゆる「境界」という意識が薄れていく不思議な感覚があったことを今でも身体が記憶しています。←この感覚は、今後もっと研究していきたいです。

また、この場では、ペアで可視化をおこなったのですが(ペアでやっているという感覚も溶けていった感じがありました)一緒に描いていたゆきさんの記事がこちら↓

オンラインとオフラインの関係

なんだかありきたりな結論になってしまいますが、オフラインはオフラインの良さがあり、オンラインにはオンラインの良さがある。と言うことを、いろいろ試しながら改めて再認識しました。

オンラインでやり始めた頃は、このnoteでまとめた様に、オフラインでやっていたことをどう再現しようかと言うことに着目していましたが、オンラインの場を何回か経験・設計していく中で、オフラインだからこそ/オンラインだからこその体験を設計しないといけないなぁと思い始め、オフラインでやってたことをオンラインで再現することをやめました。(共有参照としてオフラインのメタファーをオンラインに持ってくるのは、良いかもしれないと感じています)

東京芸術祭2020 「どうやって出会う!」トーク2でのグラフィックレコーディングで、ゲスト自身も書き込む取り組みでは、少しそんなオンラインでのコミュニケーションがうまくハマった場ができたかもと思っています。

いろんな実験をしながら探索した1年でしたが、まだまだニュアンスを掴めたくらいの感覚です。来年からは実践の中で、もっと効果的な場づくりに応用していきたいと思います。

この記事は「グラフィックレコーディング Advent Calendar 2020」の第1弾に参加しています。毎年好評で、第2弾もあるので、たくさんの方の意見や知見、思いに触れることができます!


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