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IBS(過敏性腸症候群)とにおいについて

こんにちは!
体臭評価サービスを提供するオドレート株式会社代表の石田翔太です。

今回は「IBS(過敏性腸症候群)とにおい」に関する内容です。

先日、「IBSでガス漏れのにおいが気になる」という方とお話しした際、その不安を軽減できる方法を思いつきましたのでnoteに書き残します。

仕事としてにおいの評価を行う臭気判定士の立場から、ヒトの嗅覚の特徴を押さえつつ、IBSによるにおいとの向き合い方についてご提案できればと。

前提として、この方法が役に立つ方は下記5つの確認事項の全てに該当する方です。

事前にTwitterで行ったアンケートをもとに、IBSでお悩み方の半数前後のお役に立てると想定しています。

目次以下は、各確認事項に触れながら必要な知識を共有し、最後に上記方法を説明する流れで進めます。

そのため、もし「役に立ちそう、読んでみよう」と思われましたら、上から順番に読み進めて頂くと腹落ちしやすいと思います。

【確認事項】

  1. IBSの症状で最も気になるものは「ガス漏れ」である。

  2. ガス漏れで最も気になるのは「においを周りの人に感じられること」である。

  3. ガス漏れは、常に起こっているわけではない。家でリラックスしているときなどガス漏れが起こりにくい状況もあるし、逆に人がいる場所 / 緊張したり力んでしまう場面など、特定の状況でガス漏れが起こりやすい。

  4. 自分の糞便のにおいや、通常のおならのにおいを感じることができる。(通常のおならとは、IBSではない方も発する、1,2発ボフッと出てその後しばらくでないようなものを指しています。)

  5. ガス漏れが起きている時、そのにおいを感じることができない。(IBSによるガス漏れとは、少しずつ出続ける、そしてその状態が続く、あるいその状態が頻繁に起こるようなものを指しています。)

はじめに

対象外の方へ

今回はIBSの症状の中でも「ガス漏れ」が気になり、かつ「ガスのにおいが周りの人に感じられること」が気になるという方に向けた内容です。

そのため、確認事項①②に該当しなかった方のお役に立つことはできません。申し訳ありません。

IBSに関する懸念

個人的には、上記のアンケート結果がとても気になりました。「IBSかもしれないけれど、診断を受けていない(受診していない)」方が相当数いらっしゃるものと推測します。

「病院に行くのは面倒くさい/恥ずかしい」「病院に行っても治るわけじゃないんでしょ」というお考えも理解できるのですが、下記の理由から、一度受診された方が良いのかなと思いました。

例えば、日本消化器病学会ガイドラインというWEBサイトの「過敏性腸症候群」に関するページでは、「IBSと思われる症状がある際、検査を行い大腸癌や甲状腺機能異常症などの問題がないことが確認された場合、IBSと診断する(筆者の解釈)」という旨が記載されています。

また、アメリカ国立補完統合衛生センター(政府機関)IBSに関する現状をまとめたページによると、「IBSに対する鍼治療やサプリメントの効果は、これまでに行われた研究の質が低く、明確なエビデンスや結論を示すことができない(筆者の解釈)」という旨が記載されています。

つまり、医師による診断を受けずにIBSかもしれないと思い放置することが、「重篤な病を見落とすこと」「効果が不明瞭な対策に時間やお金を費やすこと」といったあなたの不利益に繋がる可能性があります。

私はあなたの家族ではありませんので「受診して!!」と強くお願いすることはできませんが、もし診断を受けずにいらっしゃるのであれば、まず一度医師に相談されることを強く願います。

確認事項③と「嗅覚の慣れ」について

ここから本題に入ります。

確認事項③
ガス漏れは、常に起こっているわけではない。家でリラックスしているときなどガス漏れが起こりにくい状況もあるし、逆に人がいる場所 / 緊張したり力んでしまう場面など、特定の状況でガス漏れが起こりやすい。

嗅覚概論〜においの評価の基礎〜(斉藤・井濃・綾部・吉井・中野)』は、 ヒトの嗅覚について、現時点で確認されている知見を様々な角度から解説している本です。

少し余談になりますが、この本は、臭気判定士という国家資格試験の参考図書にもなっていて、小難しく書かれてはいるものの、個人的には、においで悩む方にはぜひ読んでほしいと思っています。

においに関する正しい知識が得られると、過度な不安を抱いたり、タチの悪い業者にカモられるリスクが大きく減ると考えているからです。

(公益社団法人という堅めの機関が出版しているためか、購入方法が少し面倒くさいですが、そこは気合いで乗り越えて頂いて・・・)

閑話休題として、『嗅覚概論』は「嗅覚の慣れ」について次のように解説しています。

知人宅を訪れて、初めは気になったにおいが、しばらくするとほとんど気にならなくなるということはよく体験する。通常、このような現象をにおいに順応したとか慣れたなどどという。(中略)順応や慣れのおかげで、我々は一日中嗅いでいる自分の体臭や口臭を感じないか、たまに感じる程度でいられる。

『嗅覚概論』第二版 p.117

噛み砕くと、「常に存在するにおいをいちいち感じていると脳が疲れる。だから、常に存在するにおいを感じなくするために嗅覚は慣れる」と読めます。

そのため、頭部や上半身から常に発せられている体臭に対して、自分の嗅覚が慣れてしまうことはあり得ます。

一方で、確認事項③のように、IBSによるガス漏れが常に起こっているわけではないのであれば、嗅覚が慣れる可能性は低いと考えられます。

常に存在するにおいではないのであれば、そのにおいに対して嗅覚の慣れは生じないからです。

この章の結論は「IBSによるガス漏れのにおいに、自分の鼻は慣れない」ということです。

確認事項④と「嗅覚障害」について

確認事項④
自分の糞便のにおいや、通常のおならのにおいを感じることができる。(通常のおならとは、IBSではない方も発する、1,2発ボフッと出てその後しばらくでないようなものを指しています。)

前出の『嗅覚概論』は「嗅覚障害」についても触れており、嗅覚障害の1つとして「嗅盲」という症状を挙げています。

嗅盲:ある特定のにおいのみわからない状態。

『嗅覚概論』第二版 p.98

前章で「IBSのガス漏れのにおいに、自分の鼻は慣れない」と書きましたが、もしあなたが「嗅盲」であり、かつ「IBSによるガスのにおいがわからない状態」であれば、今回紹介する方法は役に立てません。

ただし、確認事項④を満たされている場合、その心配はありません。なぜなら、糞便・おなら・IBSによるガス漏れは、3つとも肛門から排出されるものであり、においの種類が近いと考えられるためです。

特に、おなら・IBSによるガス漏れの2つは、同じ場所に溜まり、同じ出口から排出される気体ですので、においの印象は同じ、あるいは極めて近いと考えられます。

そのため、自分の糞便・おならのにおいがわかる場合、あなたの嗅覚は、IBSのガス漏れのにおいに対しては嗅盲ではないと言えます。

この章の結論は「あなたの嗅覚は、IBSによるガス漏れのにおいを感じることができる」ということです。

確認事項⑤と「ガス漏れのセルフチェック方法」について 

確認事項⑤
ガス漏れが起きている時、そのにおいを感じることができない。(IBSによるガス漏れとは、少しずつ出続ける、そしてその状態が続く、あるいその状態が頻繁に起こるようなものを指しています。)

前の2つの章で、次のことがわかりました。

  • あなたの嗅覚は、IBSによるガス漏れのにおいを感じることができる

  • IBSによるガス漏れのにおいに、自分の鼻は慣れない

これらのことから、確認事項⑤を満たす場合、周りの人もガスのにおいを感じていないと言えます。

IBSによるガス漏れのにおいを感じることができる嗅覚の持ち主であるあなたは、慣れが生じていないIBSによるガスがもし自分の鼻まで届けば、そのにおいを感じるからです。

自分の肛門と鼻の距離において、自分がそのにおいを感じていないのであれば、ガスは自分の鼻まで届いていないということです。

そして、その場合、自分の鼻よりも離れた場所にある他人の鼻までガスが届くこともありません。

ゆえに、この記事の本題である「ガスのにおいが周りの人に感じられていないか?」という疑問/不安は、その時に自分がガスのにおい(≒おならのにおい)を感じているか否かで判断することが可能です。

この記事の結論は「IBSによるガス漏れのにおいが周りの人に感じられているかどうかは、自分の嗅覚を用いてセルフチェックが可能」ということです。

最後に

いかがでしたでしょうか?

この記事では、ヒトの嗅覚の特徴を踏まえて下記の事実を説明しました。

IBSによるガス漏れのにおいが周りの人に感じられているかどうかは、自分の嗅覚を用いてセルフチェックが可能であり、自分がにおいを感じていなければ周りの人も感じていない。

「常に発生しているわけではない」というIBSによるガス漏れの特徴は、元来大きな不安要素であったと思います。

一方でその特徴が幸いし、自分の鼻を用いて無料でいつでもどこでもセルフチェックすることが可能である、という結論に至りました。

IBSをお持ちの方の肛門から、どれほどの量のガスが放出されているのかをオドレートや私は把握していません。実際に少なからず出ているのだろうと思います。

ただし、「もし漏れ出ていたとしても、そのにおいを周りの人に感じられさえしなければ問題ない」という認識をお持ち頂けると、上記のセルフチェック方法は最強の精神安定策になるものと信じています。

これは体臭でお悩みの方にもお伝えするのですが、人体からにおいが全く発せられていない、すなわち完璧な無臭状態というのは実現不可能だと考えています。

そうであれば、「無臭」ではなく、「もしにおいがあったとしても、周りの人が感じない程度であれば問題ない」へとハードルを下げることで、心理的な負担は減りますし、本来悩む必要のない方が過度に悩んでしまうことも減ると思っています。

本文は以上になります。

Twitterでのアンケートに回答して下さった方、拡散して頂いた方、本当にありがとうございました!

この記事がIBSのにおいでお悩みの方のお役に立つことを望んでいますので、もしわかりづらい箇所や、ここは違うだろというツッコミなどがありましたら、Twitterのリプや質問箱で気軽にお声がけ頂けますと幸いです。

おまけ①足裏のにおいへの応用

この記事でご紹介した「IBSによるガス漏れはセルフチェック可能」という結論は、足のにおいにもそのまま応用可能です。

足裏のにおいは、靴を履いている間に生成され、靴を脱いだ時に気になるものと認識しています。

足裏が蒸れてしまうような密閉性が高い靴(ブーツ、革靴、スニーカーなど)であれば、履いている間は靴の中のにおいは外に漏れにくいものと考えられます。

そうであればIBSと同様、あなたの鼻は足裏のにおいに慣れていません。

つまり、仮に靴を脱いで鼻を近づけて嗅ぐと臭いと感じたとしても、普通の距離感(例えば座った状態)で自分の鼻が足裏のにおいを感じないのであれば、周りの人もそのにおいを感じていない可能性が高いと言えます。

逆に、もし普通の距離感で自分が感じる場合は、周りの人も感じている可能性がありますので、靴下を履き替える等の緊急対応で乗り切って頂ければと思います。

ちなみに、弊社は「足のにおいの検査キットも開発してほしい」というご要望をよく頂きます。足裏のにおいでお悩みの方も大勢いらっしゃるものと推測しています。

ただし、上記のとおり精度の高いセルフチェックが可能であることから足臭検査キットは不要と考えており、お客様にもそのようにお答えしています。

足裏のにおいの検査キットは今後も開発することはないと思います。

おまけ②実は私も・・・

「IBSのnoteを書きたいからアンケートにご協力お願いします!」とツイートした後、2名の知人が「実は自分もIBSで、・・・」と打ち明けてくれました。

そして、実は私(筆者)も過去にIBSっぽい現象で悩んでいました。大学院生の時、狭い研究室にいる時と、週2回大教室で受講する特定の授業中にいつも「やべーおなら出そう。腸がぽこぽこ鳴ってる。ここでおならするのは絶対やばい。我慢…。」という状況でした。

当時はIBSという病名があることを知らず、(冒頭で「病院受診しましょう!!」と書いておきながら非常にアレなのですが)ひたすら耐えていました。

交友関係狭めな私の知人数名が該当することからIBSをお持ちの方は大勢いらっしゃることが予想できますし、昔の私のようにIBSという言葉を知らずにただただ我慢している方も少なからずいらっしゃると思います。

IBSという病名の認知度が高まり、実態調査や研究が進み、有効な治療法が確立されることを陰ながら願います。

そして、普段Twitterで仲良くして下さるIBSでお悩みの方々、勇気を出して声かけてくれた知人、当時の自分の辛さを思い出し、頑張って少しでも役に立つものを書こうというモチベーションでこの記事を書いていました。

予定より公開が遅くなり申し訳ありませんでした。

おまけ③なんでIBSに関わったの?

弊社はIBS関連の事業を行なっていませんので、知人や社内の人からこうした主旨の質問を受けました。他にもそのように感じた方がいらっしゃるかもしれません。その答えです。

たまたまです。

たまたまIBSとにおいで悩んでいる方とお話しする機会があり、その中で「自分たちが既に有する知識をもとに、note1つ書くだけで解消できる疑問/不安があるかもしれない」と感じたからです。

オドレートは「においの悩みを解消する」ことを目指す会社です。今はリソースの関係でワキガや加齢臭といった皮膚から発せられるにおい(体臭)に特化していますが、広く捉えれば本件はにおいの悩みに含まれます。

そうであれば、方向性はズレていませんし、私がnote1つ書くぐらいのリソースは自由に使わせてくれー、という心境です。

おまけ④PATMに関する懸念

いつになるかはわかりませんが、次に現在の事業領域外で、今回のような形で取り組む対象があるとすれば、PATMかなと思っています。

PATMについては、弊社も以前から小さな研究プロジェクトを回していますが、まだよくわかっていません。世界的にも、存在・病態・原因のいずれも明確に解明した研究者/機関はないものと認識しています。

そうした状況ですので、これまでオドレートや私はあえてPATMについて全くコメントしないようにしていました。正しい情報を持っておらず、できることもないからです。お悩みの方が大勢いらっしゃることは把握しており、申し訳ないと思いつつも知らないふりをしていました。

ただ、最近、特許庁のホームページで意味不明なPATM関連の特許公報(申請)を見つけました。

PATMと言えないもの(いわゆる一般的な体臭)をPATMに含めることでPATMの定義を曖昧にし、PATMを治す製品を特許化しようとするものです。

特許広報内で示されている実験についても、方法、結果の解釈ともに質が低く、再現性はなく、それをエビデンスとして何かを示すことには無理があると認識しています。

ただし、特許庁は主に「申請内容の目新しさ/新規性」をもとに審査/判断するため、例えその内容に怪しさが含まれていても、「まだ他の人はやっていません。新しいです!」が伝わる書類を提出すれば特許になってしまう可能性はゼロではありません。

もし上記の内容が特許として認められると、「PATMの存在と、その有効な対処法を特許庁(行政機関)が認定した」と受け止めてしまう方がいるかもしれません。

PATMという未知の現象において、正しいプロセスを経ることなく、妙な金儲けを企てている人がいることを強く懸念しています。

私たちとしては、PATMについて何らかの答えを見つけることを急ぐとともに、特許庁へ情報提供を行い上記特許の査定(認定)を阻止することが直近すべきことであると考えています。

上記の動きについて、機会があれば今回のようにnoteを書きたいと思っています。

あと、特定の誰かに向けたコメントではないのですが、一般に、上記のとおり特許は「新しさ」を認めるものであって、「性能や有効性」の確認がなされたものではありませんので、「特許取ってますよ!だからうちの商品すごいです!」と伝わりかねない販促活動(webサイトや広告の表記等)を行うと景品表示法の「優良誤認」という点に引っかかって行政処分を受けるかもしれないと聞いたことがありまする^^

参考:太陽国際特許事務所
特許権者における広告表示の留意事項について(景品表示法上の留意点)

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