In Between/ ep1 リナからの電話

2024年4月、ロサンゼルスで初めての映画撮影にシネマトグラファーとして参加してきました。


2022年から2023年にかけて、ロサンゼルスにある映像の大学院American Film Instituteのシネマトグラファーコースに在学していました。


学生と一緒に作る映画は何度か経験していましたが、今回がプロとして参加する初めてのプロジェクトとなりました。
インデペンデントながら、初ハリウッド映画になります。


私自身の忘備録として、海外で映画制作に興味があるあなたの参考になるものとして、何より映像を作ることの楽しさが伝わるようなものを目指してnoteで私の経験をシェアしたいと考えています。


① リナからの電話

3月後半、インスタグラムの友人だった女優のリナ・エスコから不在着信とメッセージがあった。


are u in la?


このリナのメッセージから今回のプロジェクトが始まった。


リナとは、AFIの学生だった時に出会った。
高校卒業後すぐにアメリカに渡りITの道に進んだ共通の友人健太からの紹介だった。


健太はNYで教育の会社を立ち上げたり、LAでは映画プロデューサーをしていた。
健太が当時住んでいたシルバーレイクの家で映画を見たり、ストーリーテリングについて話したり楽しい時間を過ごしていた。チキンを丸ごと煮込んだスープとトロというワインを飲みながらお互い力尽きるまで話していた。


今から撮影を手伝って欲しいというメッセージが届く。
健太の家に行くと、リナともう一人フランスの女優ノラが後からやってきた。
読んで欲しいという脚本をもらう。
今からクラウドファンディングを立ち上げるという。
ノラが初めて監督をして、健太とリナがプロデューサーになる。


「僕たちの思いを映像にしたいんだけど、翔太それを形にしてくれないかな?」


大切な友人の健太からのお願いだから、喜んで引き受けた。
なぜこのプロジェクトをしたいの?
何を話す?
どこで撮影する?
どういう構成にする?
どういうトーンで話をする?
完成尺はどれくらいの長さにする?
カメラは何を使う?
音声はどうやって録音する?


30分で全部決まった。


健太が持っていたコンパクトデジカメで撮影。
録音は当時私が使っていたiphone 13 proだった。


15分で撮影が終わった。


近くのトレーダージョーで、インサートも撮影。
トレーダージョーでのガンシューティングについての短編だった。
撮影が終わると、隣のカフェで一息つく。


リナは私がAFIの学生であることを知ると、ビザで協力できることがあれば教えてねと電話番号をくれた。


その日の夜にはクラウドファンディングが立ち上がっていたと思う。
完成させた1分の動画も載っていた。


健太とリナとノラの社会問題に対するストーリーに少しでも協力できたことに感謝を伝え、リナにリールも送る。


私のリールを送るかどうかは、2日ぐらい迷った。
ロサンゼルスでは自分を売り込む機会を掴んだら離してはだめだと、同級生のティモシーから教えてもらった。


2日後に返事をもらう。
2022年のクリスマスの日だった。
you are so talented!!
will def keep in touch


ロサンゼルスではみんなが keep in touch と言うのだと、先輩のバオから教えてもらった。


リナのインスタを見ると、S.W.A.T.のクリス役として有名で、監督もしていた。
フォローを返してもらった。


1年と少し経ってから、インスタグラムのDMでリナからメッセージがあった。


are u in la?


私はロサンゼルスにいなかった。
AFIを卒業して、日本に戻り企業のインタビュー動画を撮影したり、CMを撮影したり、次のプロジェクトを探していたりしていた。


こういう連絡はチャンスが後に続くので慎重に返信をした。


今はLAにいないこと。
日本にいるが、LAと日本を行き来して活動していること。
8月に一度LAに戻り、同級生たちと短編を撮影したこと。
面白いプロジェクトを探していること。


リナは4月に短編の撮影があるので私をシネマトグラファーとして推薦したいと言ってくれた。
チャンスが来たようだった。


そして、you are so talented btw とも言ってくれた。


・4/18がプレップ
・4/19,20,21,22が本番
・砂漠で短編を撮影


今後、ほとんど毎日脚本について、ストーリーテリングについて、ショットリストについてはなし合うことになる強烈な個性を持った監督のことも教えてくれた。


名前は、キャトリンアダムズ。
ニコールキッドマン、ブラッドピット、ナオミワッツ、レイチェルワイズ、エイミーアダムス、ジェーンフォンダらのプライベートの演技コーチをしている。
伝説的なアクティングコーチで、14歳からアクターズスタジオに所属している。


キャトリンは一刻も早くシネマトグラファーを見つけたいらしい。
リナから脚本をもらって、ミーティングをセットアップすることになった。


キャトリンとの最初のミーティングは、24時間後に決まった。


今日は、キャットとzoomで打ち合わせをして、グレーディングについて話し合った。
通話をしたのは、2ヶ月ぶりだった。

音声のついていないグレーディングされたタイムラインを一緒に見ていく。
キャットの細かく鋭い指摘が続く。
撮影のことを思い出す。

休みを知らないキャットは素材のチェックをしながらも、いつものように別の仕事もこなしている。
73歳とは思えない。
力が衰える前に、この映画を完成させたいと最後に脚本を見せてもらったことを思い出す。
ロサンゼルス時間の夜7時から10時まで休みなしで続く。

ひと段落して、お互いに好きなフレームについて話をする。
私が選んだものも、キャットが選んだものも、あれだけ議論して決めたショットリストにはなかったものだった。

最近何をしているの?とキャットに聞かれた。
この経験を忘れたくないから、ノートに書いていこうと思うと言った。
リナから電話をもらったところから、最後キャットの家で脚本を見たときまでの話になるよと言った。

「それはいいアイデアだね。でも、私は過去は振り返らない。前に進むだけなの」キャットが言った。



ここまで、読んでいただきありがとうございます!

あなたにフォローやライクをしてもらうと次のエピソードを書くモチベーションになるので、よろしくお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?