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言葉は残り、意思が紡がれる

先日YOSAGEMONOで紹介しました「vertebra 03 」。


今も座りながら原稿を書いていますがとても快適です。デザイン性がありながらもこの座り心地を実現しているのは本当に素晴らしい。

今回紹介するにあたって公式サイトを確認していました。そこにはジャーナルというコンテンツがあり、デザインされた柴田文江さんと様々な方の対談が掲載されています。

「日本仕事百貨」のナカムラケンタさんとの対談で、ナカムラさんが常に口にされていた「生きるように働く」という言葉に影響を受け、このvertebraのプロジェクトが進んできた段階で説明として使いたいとオファーをしたくだりが紹介されています。

仕事と生活くらしの境目がどんどんと溶け合い融合していく時代の中で、しっくりと収まるプロダクトというのはこれからも求められ続けていくのでしょう。

初代から紡がれるvertebraの意思

私自身オフィスチェアといえばアーロンチェアやオカムラのコンテッサといったような15万から20万するようなものがメインというイメージでしたが、今回リビングでの仕事のためと割り切って検索をしていたときにこのvertebra03を見つけました。

過去を紐解くと、初代、2代目はあくまでもオフィスチェアとして販売をされてきたようです。しかし実は座面のスライド構造など、発売当初からある機能が踏襲されており、きちんと過去の資産が受け継がれているのもvertebra03のプロダクトとしての存在感に関わっています。

初代vertebraが発売されたのは1981年。OLという言葉が浸透し職場に女性が入ってくるようになり、これまでの画一的なグレーのオフィスチェアではない新しいデザインと、機能が求められたタイミングで発表されています。2019年廃盤になったということで40年近く販売されてきた超ロングセラー商品です。

時代の変革期に登場し、人々の暮らしを変え、長く愛され続ける。デザインを時代に即してバージョンアップしながらも、そのプロタクトの意思やメインの機構を変えていない。なんだかとても愛おしくなるプロダクトです。

コロナ禍は40年ぶりに来る働き方の転換点なのか

vertebra03が発売された1980年代は第2次ベビーブームが終わり、日本が少子高齢化に向けた時代の変化を歩み始めた時期です。それまでの男性の社会から、女性が職場に出て男性と共に働くという環境が生まれたという意味では本当に働く環境が大きく変わった時期になるでしょう。


一方で2020年から世界を襲っているコロナ禍においては、人々にとってのオフィスや職場というものの存在感が大きく変貌してしまいました。 もちろん背景として20年近く続いてきた IT技術の浸透というサポートがあったことは言うまでもなく、緩やかな働き方、暮らし方の変化というのはずっと起きてきていたものではありますが、それが一気に加速したのがこの一年半ぐらいと言えるでしょう。

多くのサラリーマンにとって他人事であったようなテレワーク、在宅勤務といったものが急に日常になり、必然的に仕事だけではなく暮らしにも向き合う時間が増えています。

働くということは生きるということに直結する。まさに「生きるように働く」時代の到来です。この大きな時代の転換点に合わせて登場したvertebra03は、新たな働く場所、思いもよらなかった環境を多く生み出してくれるでしょう。そんな暮らしにも仕事にも寄り添えるような快適さを求められるプロダクトデザインというものを大切にしていきたいですね。

オフィスに適している、家庭に適している、という目線だけではなく、暮らしに適している、もっと言うと自分に適しているという考え方。 より多様な働き方や暮らし方で人々が幸せになれるような変化の転換点であったと、コロナ禍を振り返ってみた時に思えるようになれば良いですし、そうなるように前向きな取り組みをしていきたいです。より暮らしに寄り添うようなプロダクト作りもQuest FM でやっていきたいですね。


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