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Connecting the dots:人生の取りまとめ機能

スティーブ・ジョブズは2005年のスタンフォード大学の卒業式で "Connecting the dots" という表現を使ったスピーチを行った。点と点が繋がり線になるように、複数の一見関係のなさそうな経験や学びが、後に新しい発見や発明に繋がることを示している。それは、将来のためにと意図的に行動を起こした結果ではなく、全く意図していなかった行動や経験が振り返ってみると結びついていたということだ。

人は過去・現在・未来という時間の流れを知覚し、ある程度未来を見据えて生きている。しかし、未来を考えることには不安が付きまとう。一方、過去を振り返ることには、後悔や執着が付きまとう。過去と未来について考えてもいいことはない。

過去・現在・未来という流れは、真実でない可能性がある。それは人間が錯覚しているだけで、実際には無数の現在が存在しているとする見方もある。時間はあくまで人間が作り出した概念に過ぎない。歴史的にも数多くの宗教家や哲学者が似たようなことを論じている。

話を戻そう。人は自分の人生における未来を、社会システムに基づく自分の思考でもって設計しようとする。それは未来に不安を抱えている証拠だ。だから、将来役に立つと思うことに時間を費やす。たとえそれが自分の心の声に背くことであったとしても。

僕は、未来のために今を犠牲にする生き方で将来が明るくなるとは到底思えない。そんな人生は生きるに値しない。今を充実させることに自分の時間と情熱を費やすべきだ。そうして最も情熱の持てるワクワクすることに集中していれば、長期的に人生は上手く展開されていく。

何が人生を充実させるのだろうか。「社会で生きる」ということを論じる人はいるが、人生そのものの展開について、その原理と法則に言及する人は少ない。目の前に広がる現実には必ず何かしらの物理法則が作用している。それは全くもって様々な社会的枠組みに規定されるものではない。

"Connecting the dots" という言葉が示すものは、現実世界における人生を取りまとめる機能そのものである。何の意図もなく、それまでの人生と全く関連のない事柄であったとしても、自分の信念と溢れ出る情熱に従った行動は、必ずどこかで結びついて、人生をより楽しく、無限の可能性と幸福に満ちたものにすることだろう。

その行動の基底をなす考え方は、社会の常識とは相容れない。スティーブ・ジョブズはスピーチの後半で、他人の人生を生きることで時間を無駄にするなとも述べている。他者の意見に左右されるのではなく、自分の内なる声に耳を傾けろと。その文章を以下に引用する。非常に心地よく、勇気が湧き出る言葉だ。

Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary. 

2021年10月11日

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