僕たちのフィルダースチョイス 1/17
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田辺が気配を感じて振り向くと、ちょうど彼が巨体をかがめてのれんの下から現れたところだった。
「マガジン、遅いわ」
「おす、おす」
宇賀神鋭介、通称マガジンは、田辺純の言葉は無視して、一堂に挨拶をした。
夜の八時を少し過ぎた店内は、混雑のピークを迎えていた。壁には、あさりの酒蒸し、えのきベーコンのバター焼き、ハムカツ、賀茂なすの揚げびたしなどなど、手書きされたメニューの札が貼ってある。
「ビール? ビール? ハイボール?」
宇賀神は、ほかの面々が飲んでい