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僕たちのフィルダースチョイス

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長編小説。 高校の野球部から20年の付き合いである田辺(ジュン)、宇賀神(マガジン)、権藤(ゴンドーフ)、藤原(クゲ)という男たち四人は、中年になりそれぞれ仕事と家庭を持ち、各々…
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#長編小説

僕たちのフィルダースチョイス 7/17

     12  柴山高校の校庭には南の端に一本だけ飛びぬけて背の高い樹があり、そのイチ…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 6/17

     11  その晩の反省会は、塁も同席した。田辺が家に電話をして、お母さん、つまり…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 5/17

     9  柴山高校の野球部で、田辺たちが二年生のある初冬の日、インフルエンザが流行…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 4/17

     7  田辺純が支部長を務めるモリタ学習塾は、駅から三分。バスロータリーから町の…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 3/17

     6  柴山高校は勝ち進んだ。  兆星高校との一回戦は、前半こそ出塁はしながら攻め…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 2/17

「うちの塾でな、ジブンらに塁くんのための特別授業をやってほしいんや」      3 「は…

前田将多
1年前
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僕たちのフィルダースチョイス 1/17

     1 田辺が気配を感じて振り向くと、ちょうど彼が巨体をかがめてのれんの下から現れたところだった。 「マガジン、遅いわ」 「おす、おす」  宇賀神鋭介、通称マガジンは、田辺純の言葉は無視して、一堂に挨拶をした。  夜の八時を少し過ぎた店内は、混雑のピークを迎えていた。壁には、あさりの酒蒸し、えのきベーコンのバター焼き、ハムカツ、賀茂なすの揚げびたしなどなど、手書きされたメニューの札が貼ってある。 「ビール? ビール? ハイボール?」  宇賀神は、ほかの面々が飲んでい