メルボルン生け花フェスティバルCEO放談(3):まずは挫折でスタート
2019年、8月31日、9月1日に初回のメルボルン生け花フェスティバルが開催されました。
今回は、初回開催の数ヶ月前、参加者募集に取り組んでいた頃にたくさん書いたブログ記事から主なものを拾ってみます。このフェスティバルの方向がだんだんはっきりしていった様子をお伝えできればと思います。一部加筆しています。
生け花振興のために
メルボルン生け花フェスティバルとか、メルボルン生け花月間、というような企画は必要かなと、長い間、思っていました。
メルボルンでは、生け花はまだマイナーな存在です。
「生け花って何?」という方も多い。
あと10倍くらいは生け花学習者が増えて当然だと思います。
メルボルンの人口は東京の半分くらいでしょう。なのに生け花教師として教室を運営している方はおそらく30人に満たないでしょう。しかもそれで生計を立てている方となると、おそらく皆無。
もっとピーアールしなければいけない。
その目的のためには、「メルボルン生け花フェスティバル」というのは
効果があるのではないか、と。
そこで毎年開催してきた生け花展について「もうグループ展覧会なんて呼ばせない、生け花フェスティバルとしよう!」と宣言してみました。
私の生徒には笑われたものです。
「フェスティバルと言ったら、普通は・・・(笑)」
確かに。
現状とはかけ離れています。
厳しい現実、そして挫折
いろいろな方にご協力をお願いしたのですが、なかなか成果が上がりません。私の力不足、さらに、先立つ資本がない。
実は、はじめはスポンサーを探そう、日本から著名な華道家を呼んでやろう、などという方向で動いていたのです。力のない者がいきなりホームランを狙うようなものでしょうか。
それを諦めました。挫折です。それが転機になりました。
まずは工夫
お金をあまりかけることなく、もっとあれこれ工夫できないか。
他に頼るのではなく、自力で何ができるか考えてみようと。
結局、目的は何なのか、というブレインストーミングも役立ちました。
その結果、この企画は、そこそこ「フェスティバル」らしくなってきました。
・まずは、会場を従来の3倍くらいの規模に拡大(300人収容。会場費用はあまり変わらない)
・展覧会だけでなく、生け花への理解をより深めてもらうために生け花の様々な側面を見せる、体験してもらう活動を加える(デモ、トーク、ワークショップ、さらにパフォーマンス:いずれも私たちが従来やってきた活動をほんの少し拡大するだけ)
・外部からも出展者を迎える(出展者が少なくてはフェスティバルとは言い難いでしょう。私たちは小さなグループかもしれませんが、世界中から出展者を招けばいいのです!幸い日本他諸外国からも出展者がありました)。
生け花パフォーマンスへのこだわり
これらのプログラムの中でパフォーマンスだけは、少し特異なもの。
私がコラボの相手に選んだのは国際的なミュージシャン。その知名度で広告を助けていただこうというわけです。「メルボルン生け花フェスティバル」を一般の方々に知っていただくにはこれ以上の方法はなかなかないように思えました。
ひとつくらい特別な目玉商品がなくては、目立ちません。このフェスティバルはPR活動なのです。ただやればいいというものではありません。
ただ、催行するには必要経費が他のプログラムと桁違いです。
しかし、私の生徒やサポーターの集客力を考えると、かなりチケットが売れるのではないか、利益は出ないとしても、最悪の場合でも私の赤字はさほど大きなものにはならないだろうと。将来への広告費用として考えたら悪くはないでしょう。
もちろん、このリスクを伴うプログラムは私個人の経費。フェスティバル全体の会計とは別としました。自分のためだけにこんなリスクをとるのはどうかと思いますが、生け花の将来のためなら、と正当化。無名華道家ですから仕方ないですね。
このパフォーマンスについては書きたいことがあれこれありますので、また別の機会に。
https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/04/blog-post.html
https://ikebana-shoso.blogspot.com/2019/03/blog-post_14.html
ともかく、こうして「メルボルン生け花フェスティバル」第1回目は誕生に向けて動き出しました。成功か否かの鍵は、おそらく私の生徒たち、協賛メンバーがどこまで、熱い思いを持ち続けられるか、私がそこを大切にできるか、でしょう。
生徒たちからの支援
先日(執筆当時)、クラスで生徒に協力をお願いしました。
これだけの国際的な生け花文化祭に一人$40で出展できるんだよ!と。
$40と言ったら、4000円弱でしょうか。
パスタ一皿くらいの値段でしょう。
日本だったら10倍はするよ。
これはすごいことなんだけど、実は私たちの会計は火の車なんだ、と。
保険、会場費用、デモンストレーターへの謝礼、それに海外からの出展者にお礼もしたいのに。
そこで、お願いがあります。
寄付じゃないよ。ワークショップをPRしてほしい。
友達、知り合いに参加を呼びかけてほしい。
実はワークショップからの収益はとても助かるんだよ、と。
皆、真剣に私の話に耳を傾けてくれます。
帰り際に皆チラシを手にして帰ってくれました。
たぶん大丈夫かなと思ったものです。
すると、次の週には、
外国からの出展者のためのお土産は私の会社が提供しますから、と言ってくれる方、
今度著名な億万長者に会うので、スポンサーをお願いしてみますね、
さらに、匿名でお願いね、と$1000(10万円くらいでしょうか)寄付してくれる生徒が出てきました。
なんとも心強い生徒達です。
この団結力があれば、きっとこのイベントはうまくいくだろうな、と思います。
このイベントをいいものにしたいという生徒達の気持ちが出展者、来訪者の方々に伝わるならば、きっとすばらしいものになるでしょう。
プログラム決定
以下が最新のプログラムです(執筆当時)。随分、生け花フェスティバルらしくなっているように思います。少ない予算でここまで出来れば将来のためにきっと役立つことでしょう。もしかすると別の地域の方が、参考にしたいから見にいってみようか、などということに・・・。それはまだでしょうか。
理解が得られないという困難
メルボルンで生け花を学習したいという人がもっと出てくるようにしたい、ということで始まった企画です。そのような目標は個人ではなかなか達成できないものです。小さいパイを仲間内で取り合うのではなく、パイそのものを一挙に大きくしようという試み。
しかし、生け花の認知度を上げたいという、私たちの趣旨は、なかなか分かってもらえませんでした。
・参加希望の方はどなたでもどうぞ、というオープンな方針。出展だけでなく、やりたい企画があれば受け付けますよ、と。プログラムに組み込めばいいのです。
・特定の個人や団体のPRだけを目指しているのではないということ。
これらについては、続けていければ少しづつ理解が得られ、協賛者も成果も出てくるかなと思っていました。小さな世界ですし。しかし、そうではないのですね。何か新しいことをやろうとすれば、どこでも同じようなものなのでしょうが。
誰それが出展してくれないとか、批判されたとか、こちらの開催日に対抗イベントを企画されたとか、そんなことはたいしたことではないでしょう。卑劣な営業妨害をされることさえあったのですから。生け花をもっと多くの方々に紹介したいだけなのに、嫌がらせを受けるなんて、と運営スタッフ。まあ、そんなこともありましたね。
次回は、第1回のフェスティバル開催にあたって、次々と起こった奇跡(?)のような幸運な出来事についてお話ししましょう。自分は本当についているんだなあと、確信できた体験でした。
2024年度メルボルン生け花フェスティバルの詳細は以下からどうぞ。「華展参加の旅」は参加者募集を開始しました。
見出し画像:生け花デモンステレーション、メルボルン生け花フェスティバル(2019年)
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