Charles Stepney 『Step on Step』

9月9日、ついにチャールズ・ステップニーのアルバム『Step on Step』がリリースされました。

本作は、Earth, Wind & FireやMarlena Shaw、Terry Callierといったアーティストのプロデューサーであった彼が、1976年に亡くなるまでの間、シカゴの自宅の地下室で録音した音源を集めたもの。

Step on Step by Charles Stepney

サウンドは、ローファイな密室ファンクといった感じで、リズムマシンのポコポコとしたビートが印象的です。最近のリリースだと、Eddie Chaconの『Pleasure, Joy & Happiness』とか好きな人は好きかもしれません(最近って言っても2年前ですが)。

Pleasure, Joy and Happiness by Eddie Chacon

基本的には全編インストですが、ところどころでステップニーの娘さんたちの話し声が挿入されていたり、「Daddy's Diddies」では本人がメロディーを口ずさむ声が聴こえたりもします。

また、Earth, Wind & Fireの楽曲のデモ音源や、ロータリーコネクションの代表曲「I am the Black Gold of the Sun」のデモ音源「Black Gold」などといった貴重な音源も収録されています。

I Am The Black Gold Of The Sun (Remastered) by Rotary Connection

あと、9月10日に開催されたリスニングイベントも行ってきました！本作のリリースを手がけたレーベルであるIntereational Anthem主宰のScottie McNiece氏から、リリースにまつわる貴重な話を聴けてめちゃめちゃ楽しかったです。広い空間で、良いスピーカーで聴くとやっぱり聴こえ方変わりますね、「Around the House」とか聴いてるときは良すぎてちょっと泣いちゃいました。

そして本作は、先述の通り、同じくシカゴのジャズレーベルInternational Anthemからのリリース。トータスのギタリストであるJeff Parkerや、マカヤ・マクレイヴンなどの作品のリリースで有名なレーベルですね。今年リリースされたロンドンのサックス奏者Alabaster DePlumeのアルバム『Gold』も最高でした……

GOLD by Alabaster DePlume

しかし、International Anthemは、基本的に現行のアーティストの新作のリリースを行っており、本作のような過去の未発表音源のリリースは行ってきませんでした。なので、本作はInternational Anthemにとっては異例のリリースといえます。

McNiece氏によると、同じくInternational AnthemからアルバムをリリースしているベーシストJunius Paulからの紹介で、チャールズステップニーの娘さんたちと話をする機会があったんだそうな。

Ism by Junius Paul

その後、娘さんたちから送られてきたデモ音源を聴いて、その内容の素晴らしさに感動し、例外的にリリースを決めたんだそう。
International AnthemのWebサイトにおいて、McNiece氏は本作を、「父親と再び繋がり、彼の情熱と輝きについての記憶を確認するための、3人の女性による純粋で美しく、深く感情的でパーソナルな取り組み」であると述べています。彼女たちの熱意がリリースにつながったんですね。　　

そして私がこのアルバムに惹かれたのは、「Look B4U Leap」などの先行曲が最高〜〜に良い曲だったからです。その中に、Earth, Wind & Fireの名曲「That's the Way of the World」を見つけたときはめちゃめちゃテンション上がりました。

That's the Way of the World by Earth, Wind & Fire

「暗黒への挑戦」というRPGゲームの副題かのように壮大な邦題が有名な曲ですね。言わずと知れた名曲ですが、この曲は歌詞含め個人的に思い入れのある曲です。19歳のときにこの曲を初めて聴くまで、Earth Wind & Fireは「September」のような陽気な曲しか知らなかったんですが、初めて聴いた時「こんな最高のバラードもあるのか…」と感動したのを覚えています。

「That's the Way of the World」だけでなく、その前後の「On Your Face」と「Imagination」もEarth, Wind & Fireの曲のデモ音源。どちらも、制作途中にチャールズ・ステップニーが亡くなるというアクシデントもあり、彼に捧げられたというアルバム『Spirit』(1976)の収録曲です。

Spirit by Earth, Wind & Fire

特に「Imagination」は私も大好きです。ちなみに、McNiece氏が初めて聴いたチャールズ・ステップニーのデモ音源はこの曲だったそうです。

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Guardianの記事によると、チャールズ・ステップニーは死の直前、「バハマに家を買って、自身のアルバム『Step on Step』の製作に取り組むつもりだ」ということを長女のBiburさんに打ち明けていたそうです。そしてそのことを彼女に伝えたその日に彼は心臓発作で亡くなりました。本作のタイトル『Step on Step』は彼のこの発言に由来するということですね。

また、McNiece氏によると、今回リリースされた未発表音源が録音されたテープが存在することも、同じく彼が亡くなったその日に聞いたそうです。すごい話だ………

まだまだたくさんの未発表音源があるそうなので、今後の更なるリリースに期待ですね。