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【短編小説】当たり屋②

事務所のドアを押し開けると、堺が既に待ち構えていた。

「どうやら面白いネタを持ってきたようだな。」

「頼むぜ、堺。今回は俺が当たられたんだ。徹底的にやってくれ。」

堺はにやりと笑い、机に置いた書類を手に取った。「もちろんだ。相手の女は既に警察に連行されている。これから彼女の背後関係も調べて、どれだけの金が巻き上げられるかを見極めよう。」

話が早い。堺は仕事が迅速で確実だ。俺はソファに腰を下ろし、事の次第を細かく説明した。

「なるほどな。ストーカー被害と痴漢冤罪、しかもその動機が恋心とは。まあ、同情の余地はあるが、それとこれとは話が別だ。」

堺は手際よくメモを取り、詳細な戦略を練り上げていく。その姿に俺は心からの信頼を寄せていた。堺に任せておけば間違いない。

「まずは、彼女の過去の行動パターンや、精神状態を徹底的に調査しよう。それから、どれだけの損害賠償を請求できるかを計算する。」

「頼むぞ。俺の人生を狂わされかけたんだ。徹底的に叩きのめしてくれ。」

堺は頷き、すぐさま動き始めた。俺はその様子を見ながら、次に手に入るであろう大金のことを考えた。これでしばらくは安泰だ。

事務所を出ると、外はすっかり夕方になっていた。街の喧騒が少しずつ静まっていく中、俺は一人、勝利の確信を胸に歩き出した。

突然、携帯が鳴った。画面には見覚えのある番号が表示されている。佐野だ。少し迷ったが、結局電話に出た。

「鳴海、無事か?さっきの件、実はまだ終わってないんだ。」

「何だと?」

「彼女、今度は弁護士を立てて反撃に出る気だ。証拠をねつ造して、お前を陥れようとしている。」

一瞬、血の気が引いた。冤罪をかけられただけでなく、今度は証拠までねつ造されるのか。しかし、俺には堺がいる。即座に対策を練らなければならない。

「ありがとう、佐野。情報感謝する。」

電話を切り、再び堺に連絡を取る。「堺、事態はさらに悪化している。相手も弁護士を立ててきた。証拠をねつ造して、俺を追い詰めようとしているらしい。」

堺は冷静だった。「わかった。これからは慎重に動こう。まず、こちらの証拠を固め、相手の出方を見てから対応する。状況的に絶対に勝てる。お前は心配するな。」

俺は一息ついた。堺に任せておけば大丈夫だ。もう一度、勝利の確信を胸に抱き、再び歩き出した。


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