300字小説「あの日の見送り」

「見送りにいくよ。何時の便?」君からの返信に、そんな大袈裟なと思わず口をついて出た。今生の別れじゃあるまいし。けれど「羽田16時」と返した。
 ほんの1年ほどの留学のつもりだったが、気づけば人生の半分以上ここにいる。僕が生活をもと居た場所に戻すことはなかった。
 君のいる街は変わってしまったし、世界も変わってしまった。きっと僕も君も変わってしまったことだろう。
 あの日、君のことだから気づいていたのかもしれない。勘のいい人だったから。
 小さなことで見送り、見送られるたびに、あの日の別れを思い出す。

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Twitterで行われている、毎月300字小説企画(@mon300nov)からお題を頂きました。第3回のお題「おくる」。
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