体裁を気にしていては被害は免れない

朝から補虫網片手に庭を飛び回る紋白蝶を追いかけていた。虫取り名人であった子供時代が嘘のように紋白蝶に翻弄されまんまと逃げられた。

もう何度目になるだろうか?一匹も捕らえられないまま冬を迎えそうだ。

自家製白菜の漬物を仕込みたくて苗を10本ほど植えていた。日に日に成長していく白菜の苗を見ながら収穫の日を楽しみにしていたのだが、その日はもうおとずれない。

小学生の頃につけていた観察日記いらい紋白蝶は春しか産卵しないと思い込んでいた。

しかし、そうではなかった。虫よけ網をかけないままにしていた白菜はやがて葉を食い荒らされるようになり、青虫パラダイスと化していった。

時すでに遅し。

葉裏をのぞいて見ると数えきれない無数の卵が産みつけられていた。そんな葉をむしっていくと残せる葉は一枚もなく廃棄するほかなかった。

我が家の庭先にはもう白菜はない。それなのに紋白蝶は毎日やってくる。

観察日記をつけていた頃からすれば視力はおちた。反射神経も鈍った。体重が増え俊敏さも失った。だが、それが理由で補虫できなったのかと言うとそうではない。

他人目が気になって仕方ない。

いい歳をしたおっさんが紋白蝶相手に庭先で補虫網を振り回しているのである。

行きかう人のどれだけが紋白蝶は害虫だと理解されているだろうか?

いや、違うんだ、これは、そうじゃない。この紋白蝶は駆除しないと野菜に悪影響を及ぼすんだ。害虫なんです。

いったい誰の心に届くというのか?

心の叫びをあげながらわたしはまるで白旗でも振っているかのようにやみくもになって補虫網を振り続けた。

ご褒美はもうないのに...

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