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目的は赤ん坊時代のサノスを抹殺すること! 掟破りのヒーロー、コズミック・ゴーストライダーが宇宙を救う!?

2018年に『サノス』誌に初登場して以来、瞬く間に人気キャラクターとなったコズミック・ゴーストライダー。先日、彼を主役にしたコミック『コズミック・ゴーストライダー:ベビーサノス・マスト・ダイ』の日本語版が満を持して刊行されました。アメコミライターの傭兵ペンギンさんに、コズミック・ゴーストライダーの魅力を解説してもらいましょう!

文:傭兵ペンギン

211021_コズミック・ゴーストライダー:ベビーサノス・マスト・ダイ

▲銀河を翔ける復讐の精霊、コズミック・ゴーストライダー参上!

先日シーズン1の最終回を迎えたDisney+の新作アニメ『ホワット・イフ...?』はマーベル・シネマティック・ユニバースの「もしも」の無限の可能性を示してくれましたが、今回紹介するのはそんな「もしも」の世界が舞台のコミック『コズミック・ゴーストライダー:ベビーサノス・マスト・ダイ』。コズミック・ゴーストライダーにベビーサノスと気になるワードの出てくるタイトルだと思いますが、まずはそこから簡単に解説しておきましょう。

設定特盛のコズミック・ゴーストライダー

コズミック・ゴーストライダーは宇宙のゴーストライダーである……と言ってしまえば簡単なのですが、実は結構複雑で面白い設定の持ち主。

まず彼はサノスがヒーローたちに完全な勝利を収めてしまった未来における、私刑執行人「パニッシャー」ことフランク・キャッスル。彼はその時間軸で我々がよく知るパニッシャー/フランク・キャッスルとあまり変わらぬ生涯を送ってきた人物で、あらゆる犯罪者を処刑してきましたが、サノスとヒーローの最終対決に加わって死亡し、地獄に送られてしまいます。

フランクはその地獄の支配者であるメフィストと出会い、サノスを倒すためにメフィストと契約し、新たな復讐の精霊「ゴーストライダー」へと生まれ変わります。こうして地上に舞い戻ったのですが、その頃にはすでにサノスが地球を滅ぼしており、復讐する相手もいなくなってしまったゴーストライダー/フランク・キャッスルは数え切れぬほどの時を独りで過ごすこととなり、彼の精神は崩壊することに。

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▲『コズミック・ゴーストライダー』は、冒頭でフランク・キャッスルの壮絶すぎる人生がダイジェストで紹介される(翻訳:吉川 悠)

フランク・キャッスルといえば口数の少ないシリアスなイメージの人物ですが、この段階で彼はだいぶおしゃべりで陽気なキャラクターに変化してしまったのも、かわいそうだけど面白いところ。そしてその後、重傷を負ったギャラクタスと出会い、共にサノスと戦うため(すでに壊滅した)地球と引き換えにギャラクタスにパワー・コズミック(ギャラクタスが持つ無限の宇宙の力)を分け与えられられて彼の使者である「ヘラルド」となり、誕生したのが宇宙の復讐の精霊「コズミック・ゴーストライダー」なのです。

こんな具合で「コズミック・ゴーストライダー」はパニッシャーだし、ゴーストライダーでもあり、さらにシルバーサーファーと同じヘラルドという欲張りすぎる特盛な設定がワクワクするキャラクター。この辺のストーリーは彼の初登場した『サノス・ウィンズ』でしっかり語られるので、気になる人は合わせてチェックしてみてくださいね!

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▲コズミック・ゴーストライダーとサノスの因縁が描かれる『サノス・ウィンズ』では、ライダーはサノスに敗北し、下僕としてコキ使われているが……

ベビーサノスは死なねばならぬ

そしてそんな「コズミック・ゴーストライダー」の初の単独シリーズが収録された『コズミック・ゴーストライダー:ベビーサノス・マスト・ダイ』では、『サノス・ウィンズ』での出来事の後、サノスへの復讐を諦められないフランクが時間を遡り、まだ生まれたばかりの赤子のサノスを殺すことで彼の暴虐を事前に阻止しようと目論みます。

しかし、まだ彼が悪の道を歩んでいないことを知り、「狂えるタイタン人」サノスをまともな大人へと成長させることを決め、宇宙の子連れ狼として活動を始めるのだが……というのが今作のストーリー。そんな始まりからの予想を超えたデカい話になるのが今作の魅力でもありますね。

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▲罪人が今まで他者に与えた苦痛をそのまま味わわせる「ペナンス・ステア」(ゴーストライダーの必殺技)。無垢なベビーサノスには効果がない

サノスはまだ悪ではないけどすでにサノスではあり、ベビーのボディにサノスの顔面が載ってるのはちょっと怖くて可愛いくって、パニッシャー/ゴーストライダー/ヘラルドの元でどんな成長を遂げるのかというのはぜひチェックしてほしいところ。

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▲純粋無垢な赤ちゃんでありながら、人殺しに興味津々なベビーサノス。フランクは彼を教育し、正しい道へ導くことができるのか!?

その後のコズミック・ゴーストライダー

実はコズミック・ゴーストライダーのストーリーはこの『コズミック・ゴーストライダー:ベビーサノス・マスト・ダイ』で一旦綺麗に決着はするのですが、そこで終わりではなく、マーベル・ユニバースのメインの時間軸でのストーリーとも絡むようになっていきます。

コズミック・ゴーストライダーがヒーローの歴史に介入しようとするミニシリーズ『Cosmic Ghost Rider Destroys Marvel History』(2019)と、老フランクが宇宙のパニッシャーとしての処刑活動を再開するミニシリーズ『Revenge of the Cosmic Ghost Rider』(2020)が続き、着実に登場回数が増えてきており、もしかするとこれからもっと大きな展開が用意されているのかもしれません。

生みの親のドニー・ケイツいわく、コズミック・ゴーストライダーはDCコミックスのロボ(バイクに跨る宇宙の賞金稼ぎ。マーベルのウルヴァリンやパニッシャーなど90年代に人気を博したキャラへの風刺で誕生したキャラ) をベースに誕生させたキャラクターなのだとか。筆者としてはデッドプールのような魅力もあると思っていて、新世代のデッドプールとして大人気になる日が来るかも……なんて思っていますが、『ホワット・イフ…?』のようなアニメがありなら、アニメ化なんてこともできるかも!?(そしたら声はジョン・バーンサルにやってもらいたいよね)

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▲言動はぶっきらぼうで乱暴だが、実は誰よりも熱いハートの持ち主であるフランク。なお、その戦闘能力はケタ違いに高く、他のヒーローが束になってかかっても蹴散らしてしまうほど

気鋭のライター、ドニー・ケイツの魅力が凝縮

そしてまたこの『コズミック・ゴーストライダー:ベビーサノス・マスト・ダイ』は、先述の『サノス・ウィンズ』に加え、『シルバーサーファー:ブラック』や『アブソリュート・カーネイジ』などを手掛けたライターのドニー・ケイツによる作品。

ドニー・ケイツはマーベルのインターンとして働いた後、一度マーベルを離れてライターとして活動を開始してクリエイター・オウンド作品をいくつか展開した後、『God Country』(2017)で注目を集め、マーベルで『Doctor Strange』(2017)などを任されたタイミングで専属契約を結び、以降『Venom』(2018)や『Guardians of the Galaxy』(2019)、『Thor』(2020)などを担当し人気を誇る若手の凄腕ライターとなっている人物。

ドニー・ケイツは幼少期にコミックに出会った90年代のメインストリームだったグリム&グリッティ(詳しくはこちらの記事で)を感じさせるやり過ぎくらいにカッコよさ重視の壮大な物語でファンの心を掴むライターで、一見すれば無邪気に派手で楽しい作品が多め。

今回の『コズミック・ゴーストライダー:ベビーサノス・マスト・ダイ』も彼の好みが存分に発揮されていて、筆者のように90年代(アメトイブームの真っ只中)にコミックに初めて触れた世代にはどこか懐かしく、今の世代にはなんだか新しいコミックとなっています。

ただ、そんな壮大な物語にハードなテーマを盛り込むのが得意技であり、今作はコミカルだけど親子がテーマであり、妻子を殺された復讐鬼のパニッシャーでその話を語る重さがあり、フランクを厳しい状況に追い込んでいくのが魅力。

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▲本作の後半では、フランク・キャッスル(パニッシャー)という人物の内面に深く踏み込んでいく

とにかく”今”のマーベルを読む上で是非注目しておいて欲しいライターの一人であることは確実。ぜひ今作でそのスタイルを存分に味わってください!

邦訳アメコミ『コズミック・ゴーストライダー:ベビーサノス・マスト・ダイ』絶賛発売中!

内容紹介
サノスとの戦いに敗れたフランク・キャッスル、またの名をパニッシャーは、ギャラクタスと同盟を結んでコズミック・ゴーストライダーとなった。ギャラクタスと共に再びサノスに戦いを挑んだフランクだったが、敗北してサノスの部下となり、フォールン・ワン(シルバーサーファー)の襲撃を受けて本当の死を遂げた。しかしオーディンの手を借りて蘇った彼は、今度こそ全ての元凶であるサノスを抹殺することを決意する。まだ無力な赤ん坊のサノスを殺害するべく、フランクは過去へと向かった。
コズミック・ゴーストライダーはサノスを倒し、宇宙を救うことができるのか!?

収録作品
『COSMIC GHOST RIDER』#1-5
『THANOS LEGACY』 #1

傭兵ペンギン
ライター/翻訳者。映画、アメコミ、ゲーム関連の執筆、インタビューと翻訳を手掛ける。『ゴリアテ・ガールズ』(ComiXology刊)、『マーベル・エンサイクロペディア』などを翻訳。
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